知的生命体とのニアミス
「...Viesi sogel tos ra, tet usurodu mapi.」
『言語解析スタート』
『解析完了』
「...りょう解、でも先越されたってのはありえなくないですか?」
「そりゃ、上の階は荒らされてなかったからありえないとは思うが、念の為だ。」
「でも~、魔物も罠もないって楽ですね~♪」
「バカヤロー、なにもないってことが油断させるための、罠かもしれねーだろ。」
状況を把握する。今までなかった知的生物による会話を検知したため、自動操縦が解除されたようだ。声の違いと足音から5体いるようで、角を曲がった先の通路をお隣さんの立っている部屋へ向かって進んでいるようだ。
自動操縦中もエリーがきっちり掃除をしていたようで、洞窟内とは思えないほど清潔に保たれている。どのぐらいの時間が経過したのか確認すると、自動操縦に切り替えてから1262年経過していた。ステータスは特に変化しておらず、スキルがすべて1から10になっているだけだ。
体術スキルが上がったおかげで、ゴーレムボディの動きがなめらかで、以前あった岩をこするような音もしない。知的な生物なので対話が可能だと思うが、ゴーレムに対する反応がわからないため、こっそりと追跡をすることに決めた。
「何も起きないままボス部屋まで着いちゃいましたね。このまま、ボスもいなかったりして。」
「さすがに、そこまで簡単なダンジョンは存在しないでしょ。でも、体力が温存できたからこのまま休憩無しで入っちゃいましょうか。」
「そうだな、今日はここまで歩く以外何もしてないからこのまま入るか。準備はいいな。」
足音を立てないようにゆっくり歩いていたので、イーライが追いつく前に彼らは扉を開けて入ってしまった。
清掃のルーティーンには部屋の中も含まれているので、客が入っても失礼にはならない程度にはきれいにしてあるだろうが、お隣さんはこの1262年間動いていないので、早く戻らないともてなしができない。
そう考え、扉に手をかけるが、動かない。今まで扉が開かなくなることは一度もなかったし、鍵穴もないので鍵がかかる構造だと思っていなかったが、どうやら異なる仕掛けがあるらしい。
解析を行おうとすると、中から叫び声が聞こえてきた。楽しそうな声ではないので、何か不測事態が起きているらしい。
『解析完了。管理者権限にてロックを解除しますか?』
中の叫び声から判断すると、緊急性を要する事態が起きている可能性が高いので、どこにいるのか分からない上司(?)の判断を待つことなくロックを解除し、中に進む。