表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女のコトワリ  作者: 秀月
聖女と働かざる者
17/63

3-8

 人気の無い午後の図書室。


 溺れかけた人のように、紬喜は縋るものを求めた。


 前回ここに来た時、ジジが案内したのは古代文字の書籍を納めたエリアだった。運良くそこにお目当てのものがあれば良いな、と目星も付けられずに背表紙を眺めて歩く。運が良いのか、ジジが慧眼だったのか。そこには召喚に関する書籍が多く、中でも契約のかせというものについて書かれた書物に痛みが多い。


 よく読まれるのだ。


 手にとって左腕に乗せ、右手でページを開く。本は図説のように大きく重い。腕がしびれる前に読まなければ。見慣れない古代文字を解読し、時間を見ては部屋へと戻る。それを数日くり返し、紬喜は遂に欲しかった情報を手に入れた。


 しかし落胆は加速した。


 契約の枷…………召喚されたものに課せられるもの。召喚士の命令に服従させるもの。本には召喚されしもの、と書かれていたのだ。そんなものが、もしかしたら魔獣だけでなく、私にも課せられているのかもしれない。


 体が急速に冷えていく。


 だから誰も、魔獣に関する知識を付けさせたく無かったのだ。いづれ、召喚の枷に辿り着くから。召喚されて枷の付いた魔獣を、召喚魔獣と呼ぶ。枷が外れたのか、人の手に負えない元召喚魔獣を、魔獣と呼称する。どちらも同じ魔獣だった。私のように、異世界から呼ばれて使役される生き物。


 私は私のも。理不尽に召喚されても、召喚した奴のものになんてならない――――


 紬喜は翌日から行動を開始した。すなわち、自分の召喚の枷を手に入れる為だ。それを他人に握られているから、不安や不満が増える訳で、自身の人権を確保するためにも探さねばならない。


 実際、どんな形状をしているのかすら分からない枷だが、紬喜には確かな当てがあった。


 おそらく、ブラックサンタ…………召喚士長が隠し持っているに違いない。


 そして聞いてしまった会話に、紬喜は焦って逃げ出した。


『――――あのような化け物を』


 私にはきっと、そう言われるだけの何かがある。


 図書室で得た知識は、他にもあった。野放しの魔獣は人を襲う。きっと、元の世界に帰りたいのだ。でも彼らは、言葉を持たなかった。魔獣を見た人々は、危険を感じて攻撃してしまう。人にとっては当然の事だろう。私だって、森で熊に会ったら逃げるだろうし、猟銃があったら手にしたと思う。それが使えるかではなく、身を守るために武器を取る。


 実際、この世界の平民達は魔獣と戦った。普通の武器では殆ど傷を付けられない為、余り魔力を有していない一般人にはひとたまりも無く、幾つかの村や町が滅んだ、という記録が記されていた。


 交通、伝達、生活。魔力ありきで回っている。


 なのに魔力は生まれつきで保有量が決まっていて、そこから生まれる不平等は身分に始まり、様々な格差を生んでアストレブンという国を成す。


 たくさん勉強すれば、人望があれば、国の頂点を目指せるなんて事は無い。


 だから一般人達は勉強をしないし、国を変える努力もしないらしい。クリスは、この国に学校というものが無いと言っていた。学ぶメリットが無いからだ。


 生まれた時から慣らされている、魔力と身分の不公平。その根底を変える難しさは、紬喜にも分かる。だが、努力してくれれば聖女は呼ばれずに済んだかもしれない。魔獣だって、呼ばれずに済んだかもしれない。


 私達はきっと、共存なんて出来ない。


 枷を付けている時点で、この世界の人々は召喚されたものを見下している。どちらも元々、この世界には不要だったのだ。なのに何故、呼び寄せてしまったのか。


 私は知っている。


 王位の為に、第二王子が召喚を行った事を。そして聖女として私が祈れば、彼は名声を高めた。


 たかが、一国の王になる為に。


 私が召喚された理由は、そんなどうでもいい理由だったのだ。聖女を失って、悔しがって居れば上々。


 でも。


 そう何処かで思う自分が居ることを、紬喜は知っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ