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09 はじめてのお買い物

 黒いエレメントに手を翳し、《エレメント分解》と念じてみる。

 手のひらが熱くなり、黒いエレメントの周りに力が集中するのがわかった。


 握りつぶすようなイメージで、手をにぎる。

 黒いエレメントが砂のようになり、さらさらと空気に溶けて消えた。


『おめでとうございます! 《偽りの冠レプリカ・クラウン》を《エレメント分解》したため、神様ポイント1000万を手に入れました!』


 >>獲得神様ポイント1000万

 >>分解したエレメント 《偽りの冠》

 >>エレメント図鑑に、新たなエレメントが登録されました!


 ファンファーレが俺の頭の中で鳴り響き、目の前に現れたウィンドウに情報が表示された。

 エレメント図鑑のページが開かれ、《偽りの冠》の項目が表示される。

 そこには『怨念』という欄があった。


『元々は、金で全てを解決できると思っていた者の執念からできたエレメント。神になりたいと願った神子が、魂を食わせ、己と同化させることで黒化した。ジータの《エレメント分解》により消滅』

 

 機械音声ナビが読み上げてくれる。

 神様ポイントの基準は知らないが、1000万はかなり大きな数字だ。

 これでキラを一気に成長させることができる。


『借金をしていた神様ポイントを支払いましたので、残りは120万となります。神様アイテム購入ボタンが増えました。ご活用ください』

 喜んだのもつかの間、目の前で神様ポイントが大幅に削られた。


 どうやらキラは、俺の魂を留めておくのに必要な『死神の部屋』を買うために、借金をしていたらしい。

 ウィンドウに、そのときの借用書が表示されていた。

 死神の部屋……恐ろしく高いものだったようだ。



 さてと、目的は果たしたしどうしようか。

 面倒事にならないうちに立ち去りたいところだ。


 というか……あんな弱い奴に俺はやられたのか。

 自分が情けなくなってくるな。


 目の前に『神様アイテム購入画面』が開いていて、それをなんとなく眺める。

 背中ではキラが、手足をばたばたさせていた。


 ん……?

 購入画面に、神様の世界へのチケットってやつがあるな?



 ★神様の世界へのチケット

  効果:神様の世界へ行けるようになる

  詳細:何度でも使用可能。

     使える場所が限られている。

     多くの神殿内で使用可。

     使うときは別売りの神スマホが必要。

  値段:100万神様ポイント



 お値段がかなりするが、気になった。

 そもそも、キラの育て方も、エレメントの集め方もよくわかっていない。

 一度神様の国へ行って、聞いてくるのもありかもしれない。


 悩んだのは少しの間だ。

 購入ボタンを押せば、神様ポイントが減って、俺の前にプラスチックのカードのようなものが現れた。


 丁度神殿にいることだし、使ってみよう。

 そう思ったが、使い方がよくわからない。

 詳細を見れば、別売りの『神スマホ』が必要だとかかれていた。



  ★神スマホ

  効果:ウィンドウを開かず操作できる。

  詳細:神の守護者とバレたくない。

     そういう声から生まれた商品。

     眷属・神子の身分証と同じデザイン。

     カードを読み込むことで、機能追加可能。

  値段:12万神様ポイント


 

 これもまた高いな。

 けれど、チケットを使うには必要なものだ。

 これも購入すれば、残金は8万神様ポイントになった。


 神スマホは、俺が知っているスマホと似た見た目をしていたが、カードを滑らせる溝のようなものがついていた。


 ここの溝にカードを滑らせて、神様の国へのチケットを読み込ませればいいのか?

 試しに、シュッとカードを通す。


『チケットを確認しました。神様の国へ行きますか』

 選択肢が画面にでてくる。

 少しドキドキとしながら、はいとボタンを押せば、俺の体がふわりと浮いた。


「おっ、おっ!?」

 バランスがとれなくて戸惑っていたら、あたりの景色がぐにゃりと歪む。


 エレベーターが登っていくときのような、妙な浮遊感。

 かと思えば、唐突に地面へと放りだされる。


「ったいな……! 一応赤ちゃんもいるんだぞ!」

 尻もちをつきながら、誰にいうわけでもなく叫ぶ。


『神殿機能に異常があったため、正しい位置に転送できませんでした』

 機械音声がスマホから聞こえて、あたりを見渡す。


 目の前には、森が広がっていた。



 ◆◇◆


 

「これ食べられるかな……」

 木に実がなっていた。

 林檎くらいの大きさで、赤と黄色の縞模様。

 目がちかちかするほどの、毒々しい色だ。


 お腹が空いたのか、キラが泣きじゃくってるんだよな。

 状態を調べてみるか。


 キラにステータス鑑定を使おうとしたが、うまくいかない。

 背中から下ろして、キラを正面から見つめると画面が出てきた。


 ★キラ

  状態:お腹が空いているようだ。


 ステータスを見るには、対象がちゃんと視界にいないとダメみたいだな。

 あと、ステータス画面は念じるだけで見ることができるようだ。

 

 そういえば、ステータス鑑定はものにも使えると書いてあったな。

 この実が食べても平気なら与えてみるか。

 さっそく、実に使ってみよう。


 ★キアカの実

  詳細:毒々しい見た目。食用可。

     熱を通すと甘くなる。

     だが、そのままだと味があまりしない。

  状態:食べ頃。


 食べても大丈夫みたいだな。

 炎の魔法なら初級が使えるし、それで火を起こすか。

 ちょうど、よく燃えそうな雑誌もあることだし。



◆◇◆


 少年マンガ雑誌を出し、無理やりちぎって枯れ枝の上に積み上げ、そこにキアカの実を置く。

 これで準備はOKだ。


「《リプカ》!」

 その瞬間、目の前に火柱が上がった。

 木々を五本ほど巻き込み、天高く炎が渦を巻く。

 物凄い熱気が起こり、止んだかと思えば……その後には消し炭しか残っていなかった。



「さすが少年マンガ雑誌は、よく燃えるな……」

 予想外すぎて、思わず呟く。


 いやわかってる。そういう問題じゃないってことくらい。

 これ……俺がやったんだよな?

 リプカは生活魔法として使われる炎属性の魔法。

 ランプに点したりする程度の、小さな炎が出る魔法だ。


 たぶん『魔神の加護』のせいだよな。

 レベル低くてこれなら、鍛えたらどうなるんだ。

 末恐ろしいな。


「おい、お前もしかして……俺にとんでもない加護をつけたんじゃないか?」

 震える声でキラに尋ねる。


「だぁっ!」

 そんなことよりご飯よこせというように、キラはバシバシと後頭部を叩いてくるだけだ。


 もう1度キアカの実を採取し、先ほどと同じように配置する。

 今度は威力を加減して……と。

 ほんのちょっと、少しだけ魔力を加えるイメージでいこう。


「《リプカ》」

 なんとなく小声になったが、威力はやっぱりでかかった。

 火柱(2度目)が盛大に上がる。

 調節は思ったより難しそうだ。


 今の俺は、安全弁がない火炎放射器といったところだな。

 魔力をそのままつぎ込んじゃってる感じがする。

 わかってはいるんだが、この加減が難しい。


 練習して魔法のレベルをあげれば、コツがわかって威力を抑えられるかもな。

 レベル上げて、魔法の威力を落とすって、何だか矛盾してるような気もするが。

 このあたりは要検討だなと思った。

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