表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

13 デッドオアアライブ

本日は早起きできたのでこの時間に投稿しました。

「今更で恐縮なのですが、助けてくれてありがとうございます。私はサティア・カークス・レディバードと申します」

 深々とサティアが頭を下げてくる。


「俺はジータだ。ところで、森から抜ける道を知ってるか? 近くの街まで案内してくれると嬉しいんだが」

「勿論ですよ! 方角はばっちり覚えていますのでおまかせください!」

 薄い胸を張って、サティアが請け負う。


「それにしても、神の守護者の話しは聞いたことがあるのですが、実際に見るのは初めてです。というか、どういった事情でこの森に? やっぱりジータさんも、《煉獄れんごくの狼》の話を聞いて討伐にきたのですか?」


「いや、俺の場合は……」

 少し悩んだが、サティアに今までのいきさつを説明する。


 悪い子には見えなかったし、神様の国へきたものの、これからどうすればいいのかアドバイスがほしかった。

 幼児化した神様や、神の守護者について詳しく知りたいと相談すれば、サティアが力になってくれるという。

 

「助けてもらった恩もありますし、お任せください! まずは街へ行った後、私の知り合いの神様を訪ねましょう。彼女なら力になってくれると思います!」


 相談して正解だったな。

 そう思ったとき、盛大に腹の音が鳴り響いた。


「……っ!!」

 サティアの顔がみるみる真っ赤になり、涙目でこっちを見た。

 そういえば……お腹が空いてるんだったな。

 ウィンドウ画面を操作して、キアカの実を出してやる。


「食べるか?」

「あ……ありがたくいただきます……」

 キアカの実を振る舞えば、サティアはぺろりと平らげてしまった。

 ごちそうさまでしたと言いながら、まだ物足りなさそうな顔だ。


「……もっと食べるか?」

「いいんですか? ジータさん……いい人ですっ!」

 ゲームなら好感度が上がった音が聞こえてきそうなほど、嬉しそうにサティアが食いついてくる。


 結局、サティアはストックしていたキアカの実を、10個全部食べてしまった。

 細いのにとんでもない食欲だった。



 ◆◇◆


「ごちそうさまなのです。ジータさん」

「どういたしまして。味がないのによくあんなに食べられるな」

「病院食と思えば余裕なのです。さて、お腹もいっぱいになったことですし、行きましょうか!」

 サティアは立ち上がって、おもむろにスカートをめくった。


「ちょ……いきなりなんでスカートをめくってるんだ!」

「太もものほうに、エレメントを付けているのです。発動するときは、こうやって触れないといけないのですよ」


 スカートからのぞく細い足の太ももを、サティアがなぞってみせる。

 その太ももには、首に巻くチョーカーのようなリングがあった。

 サイコロ大の透明な球に入った、青いエレメントがあった。


「それに、私は走り回るので、短いスパッツをはいています。だから……見られても大丈夫です!」

 それでも恥ずかしいのか、真っ赤になりながらサティアは言う。


 黒くてつやつやした短いスパッツ。

 たしかにこれなら見えても大丈夫だろうが、丈が短すぎて黒いパンツにも見えるな。

 そんなしようも無いことを考えていたら、俺の前でサティアがエレメントに触れる。


「エレメント発動っ!」

 その声に反応するように、サティアのエレメントが青い輝きを放つ。

 サティアの体全体が青白い光に覆われて、その表情が弱々しいものから、強気なものへと変わっていく。


「さぁ、掴まってください! 今から森を駆け抜けます!」

 体勢を低くし、サティアが親指を立てて背中に乗れというような動作をしてくる。


「……おぶされってことか?」

「そうです!」


 自分より年下の女の子に背負われるのは、かなり抵抗がある。

 跳躍スキルを使うとか言ってたが、俺を背負って跳ぶのはムリがあるんじゃないだろうか。


「俺、かなり重いぞ?」

「余裕なのですよ。私、かなりの怪力なんです。スキルを使わない状態でも、この杖を軽く振り回せるくらいなんですよ!」

 手持ちの杖を、サティアはぶんぶんと振りまわしてみせた。


「私のエレメントスキル《空の賛美歌(エアリア)》は、跳躍の力を跳ね上げるスキルです。連続発動時間は15分で、飛び跳ねることしかできませんが、移動の際にはかなり役に立つのです!」


 この先は道が険しく、強い魔物も出てくるらしい。

 歩けば4時間ほどかかるということだ。

 しかし、このスキルを使って途中まで行けば、敵に遭遇することなく、1時間ほどで森を抜けられるのだという。


「まぁ、楽なほうがいいよな……それにもうすぐ夜だし、宿屋で寝たい」

 今日は色々ありすぎた。

 できることなら、ゆっくりと疲れをとりたい。


 俺のアイテム袋へサティアの杖をしまい、キラをおんぶ紐でくくりつける。

 覚悟を決めたところで、マロが俺の足下に顔をすり寄せてきた。


「わぅ! わぅ!」

 他のファルガル達は立ち去ってしまったのに、こいつだけは去らなかった。

 その様子は、俺も連れていけと主張するかのようだ。


 大分懐かれてしまったみたいだな。

 サティアが食事をしている最中、撫でろと催促してくるので、ずっともふもふしていた。

 つぶらな瞳で見つめられてしまえば、あらがうことができない。


「……マロもつれていきたいんだが」

「ジータさん、捨てられた動物とか見捨てられない人ですか……? まぁいいのです」

 仕方ないですねと、マロをサティアが抱きかかえる。

 俺はそのサティアに……おんぶされて、準備は完了だ。


「なぁ、やっぱりこれ……超恥ずかしい。普通に歩いて行こう」

「却下です。振り落とされないよう、しっかりと掴まっててください……ねっ!」


 最後の「ねっ!」と同時に、サティアが地面を蹴る。

 その小さな足に押された地面が抉れたかと思えば、頬の肉が後ろへひかれるほどの重力が俺を襲う。


「……っ!!」

 耳にうるさい風の音。

 夕焼けの綺麗な空が目に入った。

 下をみれば、森が広がっている。

 そして……落ちていく。


「ちょっと待て、待てっ! これ、地面にぶつかるだろっ!! 木にささるっ!!」

「そんなヘマしませんよ! 喋ってると舌噛みますよ!」

 叫ぶ俺に、サティアが自信満々に答える。

 緑の森へと俺達は沈んでいき、地面と接触する瞬間、目を閉じる。


 下に押しつけられるような衝撃の後、すぐに上へと引っ張られるような感覚がやってくる。

 恥ずかしいとかもう関係なかった。


 デッドオアアライブだ。

 振り落とされたら――死んでしまう。


 全身でサティアにしがみつく。

 跳ねては落下の繰り返しが、幾度となく続き。

 叫んで喉が枯れ、疲れ果てた頃に……ようやく街へとたどり着いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ