さて、いきなりなんだけど大事な話です~
朝7時を回ったくらいの時間。
みんなが起きてきたところでリビングに集まってもらった。
お姉ちゃんは、さくらさんを見た瞬間に驚いて固まっていた。
そりゃいきなり家にいたら驚くよね。
逆にいろはちゃんは、お母さんが突然目の前にいるのに無反応。
私の腕の中でおとなしくしている。
「さて、いきなりなんだけど大事な話です~」
「本当かよ……」
さくらさんの口調のせいか、ユウキがツッコんだ。
いや、さくらさんはこういう人なんだよ。
「実は、ハノちゃんたちの住むあの世界なんだけど」
「はい」
「ついに滅びが始まってしまったの」
そこでさくらさんの表情から笑みが消えた。
異世界の滅びは過去何度も繰り返されてきたことだ。
いろはちゃんやお姉ちゃんはその世界の生き残り。
今回の世界の出身者は、ハノちゃんやマロンちゃんか。
モカさんも、マロンちゃんのお姉さんだから一緒のはずなんだけど。
あの人は謎が多すぎる。
もしかしたら、さらに別の世界の人って可能性すらある。
「私は滅びが始まることはある程度わかっていました」
「え、そうなの?」
ハノちゃんの言葉に少し驚いてしまった。
自分たちの世界が滅んでいくのに、よく落ち着いていられるなぁ。
「私はこれでも巫女ですから、わかっちゃうんですよ」
ハノちゃんはそういうけど、何か違う気がする。
まるであの世界がどうなっても関係ないみたいな。
いや、もしかしたら助かる方法を知ってるのかも。
「あとね、今回は今までとは違うことが起きてるの」
「今までと違うこと?」
「うん、この世界まで攻め込まれ始めてるってこと」
この世界に攻めてきてる?
もしかして、夜に海で襲われたのとか?
あと遊園地のゲームの時も、私は実際にけがをしている。
どれもモカさんが助けてくれたけど。
「あれを倒せばいいんですか?」
「そうね、でもそれだけじゃ永遠に終わらない」
永遠に終わらないってことは、敵は無限に再生でもするのか。
そういえばモカさんが戦った敵も、倒したというより霧散した感じだった。
「私たちが何とかしないといけないのは、異世界にある結界のむこう側だよ」
「楽園を作るときに取り除いたっていう存在のことですか」
私が聞くと、さくらさんは静かに頷いた。
「でも、あれを完全に消すことはできないんだよ」
「じゃあどうすれば?」
「弱くなった結界を張り直すことかな」
結界を張り直す……。
確かに、倒せないのなら入ってこれないようにすればいい。
でもそれだと、また同じことを繰り返すことになりそうだけど……。
「敵が入ってこなかったら滅びは止まるんですか?」
「うん、今回は今までとは違って魔力放出は終わってるの」
あ、もしかしてそれは……。
「私の記憶がなくなった時の……ですか?」
「うん、そうだよ」
さくらさんは私の前まで来て、頭をなでてくれた。
「あなたは今まで誰もできなかったことをやってのけたのよ」
「違います、私はできなかったんですよ」
私はあの時、魔力を受け止めきれなかった。
「あの世界が存続しているのは、いろはちゃんとお姉ちゃんのおかげですよ」
「……そうだね、3人が頑張ってくれたおかげだね」
そこでさくらさんは手を止め、みんなの方を見る。
「あとは世界を元に戻すだけだよ」
みんながそれに頷く。
でも私はそうは思えなかった。
だって魔力放出はかなりの頻度で起きている。
世界を元に戻せても、また壊されてしまうんじゃないだろうか。
心の中がもやもやする。
その時、外で雷のような大きな音がした。
あれ? そんなに天気悪かったかな……。
いろはちゃんを連れて窓の外を見る。
そして我が目を疑った。
空が割れて、そこからブルームーンストーンと思われるものが降ってきていた。
「さくらさん!」
慌ててさくらさんを呼ぼうと振り返る。
しかしそこにも異変が起きていた。
数人を残して、みんな時が止まったように動かない。
そして世界から色がどんどん失われてセピア色に変化していく。
「かなでさん……」
いろはちゃんが私の腕にしがみついて不安そうな声を漏らす。
よかった、いろはちゃんは無事だったんだね。
他に無事だったのは、ハノちゃんとお姉ちゃんとさくらさんだ。
いったい何が起きたんだろう……。




