よく似合ってますよ、さぁその手をどけて……
結局さくらさんはお風呂に入ることにした。
着替えはいま着てるものを洗濯しておいて、乾くまでバスタオルをローブとして使おう。
こういう時に大活躍するこのバスタオル。
初めてハノちゃんと会った日のことを思い出すなぁ。
バスローブ姿で異世界行くとか、本当に変態ですよね。
でもちゃんと服に見えるから、相手からは変に思われないはずだよ。
「では、ごゆっくり~」
「ありがとう~」
さくらさんを露天風呂まで案内してからリビングに戻る。
入浴が終わるまでここで待っていよう。
テーブルに頬杖をついてボーっとする。
そういえば頬杖ってあまりよくないって聞いたことが……。
まぁ、いっか……。
ぽわ~。
ぽわわ~。
眠くなってきた~。
さっきまで全然そんなことなかったのに……。
ぽわ~。
……。
「かなでちゃ~ん……」
誰かが私の体を揺すっている。
あれ? 寝ちゃってた……?
「かなでちゃ~ん……」
かなり控えめに揺すられているので、再び眠りに落ちそうになる。
だめだめ、起きないと……。
「さくらさん……、おはようございま……」
少しずつ意識を覚醒させながら、私の目がさくらさんの姿をとらえる。
「キャアアアアア!!」
その瞬間に悲鳴をあげてしまった。
「え? 何々? かなでちゃん、どうしたの?」
「どうしたの? じゃないですよ、なんて格好してるんですか!」
もう、一気に目が覚めてしまったよ。
さくらさんはバスローブを身にまとってはいるものの、なぜか胸を手で隠していた。
下はぎりぎり見えないけど、なぜ胸だけジャパンネット銀行を露出してるんだ?
まさか誘惑されてるのか、私は……。
「さくらさんがそんな破廉恥な人だったなんて……」
「いやいや、これ用意したのってかなでちゃんだからね」
「そうですけど、まさかそんな風に着崩すなんて思ってなかったです」
「タオルが小さくて収まらないのぉ!」
は?
「……あ、ソウデスカ」
私~、それぶかぶかなんですけどぉ~?
「もう、これ着た時、かなでちゃんの趣味かと思っちゃったよ」
「よく似合ってますよ、さぁその手をどけて……」
「助けて、いろはちゃ~ん!」
「ぎゃ~! それはダメ~!!」
私は今着ているパーカーを脱いでさくらさんに渡した。
そして急いで、洗濯したばかりの服を魔法で乾燥させた。
初めてのことで怖かったけどなんとかなるもんだ。
これで乾燥機いらずだね。
さくらさんの服を抱えて、急いで戻った。
「かなでちゃん、この服もやっぱり小さいよう~」
「きゃ~! それ着るために渡したんじゃないから~」
「あれ、そうだったの?」
「も~、のびちゃうでしょ~、私の服は少ないんだから~」
「えへへ、ごめんごめん」
かわいいから許す。
着替えを済ませたさくらさんは、一緒に寝ようと誘ってきた。
さっきは眠くないって言ってたから、きっと私のためだろうな。
私もすでに眠くはないけど、添い寝してもらえるのはうれしいので甘えることにした。
しかし、さくらさんと自室にむかっている途中で気づいてしまった。
今の私の部屋の中の状況はとてもまずいのではなかろうか。
部屋の前まできて、いったん立ち止まる。
「ココガワタシノヘヤデスヨ」
「どうしたのかなでちゃん、様子が変だけど~?」
「ナンデモナイデスヨ」
ええ~い!
もうどうにでもなるがいい!
私はドアを開け、さくらさんを部屋に入れた。
「わぁ……」
明かりをつけてないのではっきりとは見えてないはず。
でも確かにわかってしまう。
女の子が3人寝ていることくらいは。
「かなでちゃんのお部屋は女の子がいっぱいだね~」
「はい……」
でも無理矢理ではありません。
彼女たちは自分の意志でここにいるのです。
「ハーレムだね~」
「ソウデスネ~、ハハハ……」
「私も仲間に入れてね~」
さくらさんは遠慮なく私の布団に入っていく。
「かなでちゃん、おいで~」
「……」
私も遠慮なく布団にむかい、さくらさんの隣に寝転んだ。
「別にさわってもいいんだよ~」
「なっ、さわりません……」
ことあるごとにさわりまくってたら、私ただの変態じゃないか。
誘惑に負けるわけにはいかない。
しかし!
目の前にどアップで揺れる胸。
しかもお風呂上がりで火照っていて、いいにおいまでする。
「さわら……」
えへ、やらかい~……。
これは極上ですなぁ~。
たまりませんなぁ……。
「かなでちゃんはこんなことばかりしてるの?」
「失敬な、私だってそんないい加減な女の子じゃありませんよ!」
確かに最近はこういう機会も非常に多いですが。
この大和撫子な私が、そんなハレンチなことばかりするわけがない。
「さくらさんはお母さんみたいなものだから」
「かなでちゃん……」
「甘えてもいい?」
ちょっとあざとく上目遣いをしてみる。
初めてするのでうまくできたかはわからないけど。
でもしっかりと効果はあったようだ。
「かなでちゃ~ん!」
「キャ~!」
おそわれてしまった。
前にはさくらさん、うしろにはいろはちゃん。
親子にはさまれ、その隣には姉と嫁がいる。
なんだこの状況は……。
これをハーレムと呼ぶのだろうか。
いや、修羅場のような気もする。
今は考えるのはよそう。
ああ、幸せ……。




