その……、はいてないですけど……
いろはちゃんが眠ってしまったので今夜はお開きとなった。
……はずなのに、みんな私の部屋に残っていた。
もしかして私の部屋で寝るつもりなのかな。
布団はひとつしかないんだけど。
他の子たちはこの集まりのこと知らないからなぁ。
ユウキとか、また変な誤解してきそうだ。
いや、まぁいいか。
よく考えたら、姉と妹と嫁じゃないか。
別に一緒に寝ててもいいじゃないか。
何しててもいいじゃないか。
「ふふふ……」
「え? な、何……?」
おっといけない。
私が急に笑いだしたから、お姉ちゃんに気味悪がられた。
「お姉ちゃん、何色のパンツはいてるの?」
「え? ピンクだけど……」
普通に返された。
もう裸見てるし、この程度ではダメか。
「ハノちゃん、何色のパンツはいてるの?」
私は標的をハノちゃんに変更する。
ハノちゃんなら可愛い反応をしてくれるに違いない。
「その……、はいてないですけど……」
「おお……」
私の部屋なのに、まるで自分の家のように下着をつけないとは……。
こっちの世界でそんなこと……。
これは危険だよ、しっかり教育しないと!
「ハノちゃん! 今夜は無事でいられると思わないでね!」
「へ?」
「あなた何するつもりなの……」
驚くハノちゃんと呆れるお姉ちゃん。
そして私の布団で眠るいろはちゃん。
平和だわ。
その後、ハノちゃんのために用意していた布団を私の部屋まで運んできた。
私の布団と並べて敷く。
2つの布団で4人が寝る。
かなり狭い。
なので私の手があれこれ悪さをしてもただの偶然さ。
「きゃっ! かなで、どこ触ってるの!」
「ごめんなさいお姉ちゃん、わざとじゃないから」
「今一直線だったけど!?」
バレたか。
「おやすみなさい」
「ええ!?」
私は部屋の明かりを消した。
「……」
朝、目を覚ました。
時間を見る。
あれ? まだ夜中だ。
こんな時間に目を覚ますの初めてかも。
全然眠気もない。
みんな当然のことだけどまだ寝ている。
なぜかわからないけど、急に散歩に出かけたくなった。
みんなを起こさないように注意しながら外に出る。
「さむい……」
まだまだこの時間は冷えるんだね。
ふらふら何も考えずに散歩する。
でもまるで何かに誘われるように歩いた。
この時期はあまり行かない方向に迷わずむかっていく。
この先には、夏になると泳ぐことのできる浜辺がある。
その砂浜の近くまで来た時、そこに人影を見つけた。
誰だろう、こんな時間なのに。
まぁ、私もだが……。
特に警戒もせず、その人のところに近づいていく。
その人は私に気付いたようで、少しこちらを見て、それから微笑んだ。
「こんばんは、かなでちゃん、お散歩かな?」
「へ?」
その人はなんと、神田さくらさんだった。
「私の事覚えてる?」
「すいません、あんまりです」
最近まで全然知らなかったことだけど、私はこの人に生み出されたんだ。
いろはちゃんのお母さんとしか思ってなかった人だったのに。
私もこの人と過ごしていたはずなんだよね。
その割には記憶がほとんどない。
戻った記憶の中でも『たまに会ってた人』くらいの感覚だ。
私の中ではやっぱりいろはちゃんのお母さんだ。
「あの、さくらさんはどうしてここに?」
「月をね、見に来たんだよ」
「月?」
わざわざここで?
「いろはちゃんには会わないんですか?」
「今日はかなでちゃんに会いに来たから」
「月を見に来たんじゃないんですか?」
「そうだね~」
よくわからない人だな……。
おっぱい大きい人だな……。
「かなでちゃん、ごめんね」
「え? なんですかいきなり……」
なんで突然謝られてるんだ私。
もしかして私を作ったことだろうか。
そんなこと気にしなくてもいいのに。
いろいろあるけど、今の幸せは私を生み出してくれたおかげなんだから。
そう思って笑顔を準備をしていたのだが。
「かなでちゃんのおっぱいが小さいの、私の趣味なんだ……」
「なんだって~!?」
衝撃の事実を突きつけられてしまった……。




