やはり私こそがかなでさんのお嫁さんということですね
さて、長い説明が続いたけど、結局のところ私は何をしたらいいんだろうか。
お姉ちゃんは魔力が足りなくなるからこっちにずっといられないわけで。
さっき倒れたのも魔力切れということか。
半日ぐらいであれだもんね。
それは会いにこれなかったわけだ。
でも私を呼んだのはお姉ちゃんだった。
つまり私は魔力に耐えきれるだけの器になったということか?
私があの石の魔力を制御できて、お姉ちゃんにも供給できるようになったら。
その時はこの家で一緒に暮らせたりするのだろうか。
「ねえ、お姉ちゃん、私は何をしたらいいのかな……」
あきらめないとは言ったけど、できることがわからない。
「かなではね、私のことを好きでいてくれればいいんだよ」
「え?」
「お姉ちゃんが全部なんとかしてみせるからね~!!」
そう叫びながら飛びついてきて、私に頬ずりを始める。
シャンプーのいい香りがして、ちょっぴりクラクラする。
「やぁ!!」
パシーン!!
ハノちゃんのハリセンで2人まとめて叩かれる。
「いやん」
「真面目にやってくださいね」
ハノちゃんが笑顔を浮かべながら言った。
ほんの少しだけ怖かった。
「ハノちゃんにもやってあげる~!」
お姉ちゃんは全く気にしていないのか、ハノちゃんにむかっていく。
そしてハリセンで返り討ちにあった。
「ハノちゃんには私がするよ」
「ふえ? ふぇえええ!?」
私が手を伸ばしていくと、ハノちゃんの顔が真っ赤になっていく。
「えいっ!」
今度はいろはちゃんにハリセンで叩かれた。
なんで持ってるんですか?
「まったく、姉妹揃って変態なんですから……」
「えへへ、すみません」
……あれ?
ちょっと待ってよ?
「そういえば、私とお姉ちゃんって姉妹じゃないよね?」
「え?」
私の言葉に、お姉ちゃんの顔が引きつった。
「ど、どういうこと、かなで?」
「私ってお姉ちゃんを元に生まれたんだよね?」
「うん、まぁそうなるね」
「だったらお姉ちゃんじゃなくてお母さんじゃない?」
「……」
2人して黙り込む。
そのまま少しの時間が経ち、お姉ちゃんの口が開く。
「細かいこと気にしちゃダメよ、かなで」
「そうだよね~、お姉ちゃんはお姉ちゃんがいい~」
「私もかなでは妹がいいわ」
「お姉ちゃんがお母さんだったら結婚できないもんね~」
「ね~」
「いやいや、姉妹でもできませんから!」
むかいあって手をつなぐ私たちの間に、いろはちゃんが割って入る。
「でも私たちって3人とも、さくらさんの娘みたいなものですよね」
「さくらさんはそのつもりでいるわよ」
「つまり、いろはちゃんもいれて3姉妹なんだね」
これを聞いたいろはちゃんは「え」っと私の方を見る。
血のつながりとかは一切ないけどね。
でもいろはちゃんは私たちの妹ということになるよね。
……妹でいいのかな?
なんて考えていたら、急にいろはちゃんが私の腕に抱きついてきた。
「私はそういうの気にしないです」
「い、いろはちゃん?」
「私、かなでさんとずっと一緒にいるの……、うふふふ」
「いろはちゃ~ん、大丈夫……?」
ダメだ、遠い目をしてずっと「ふふふ」ってつぶやいてる。
さらにそこにハノちゃんまで加わってくる。
「ということは、やはり私こそがかなでさんのお嫁さんということですね」
満面の笑顔を浮かべるハノちゃん。
なんで今言っちゃうかな~。
二人きりの時に言って欲しかったなぁ……。
だってほら、私の腕がどんどん締め上げられていってるんだよ。
「い、いろはちゃん……、なんだか頭が冷たくなってきたよ……」
「すやすや」
「寝てる~!?」
そうか、もう夜も遅いし、さっき魔力いっぱい使ったもんね。
ゆっくりおやすみ。
でもなんでこんなに力強いの?
た、助けて~!
「ずっと一緒……、お姉ちゃん……」
いろはちゃんの寝言が聞こえた。
聞きました?
お姉ちゃんだって!
嬉しくて顔がにやけてしまう。
「おやすみ、いろはちゃん、私もなんだか眠くなってきたよ……」
「かなで~! あなたのはちょっと違うわよ~!!」
お姉ちゃんが慌てていろはちゃんを引き剥がしにかかる。
それでもいろはちゃんの力が強すぎて、腕が解けない。
ハノちゃんもまじえてようやく私の腕は解放された。




