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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
新しい世界へ
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でも私はあきらめない

お姉ちゃんの大切な話を聞くため、お風呂場から私の部屋に移動した。

私とお姉ちゃんの他、いろはちゃんとハノちゃんがいる。

とりあえずこのメンバーだけは、状況を知っておくべきだということらしい。


「で、お姉ちゃん、さっきのは何だったの?」

「えっと、それはね……」

「それは?」


みんなの視線が集まる中、お姉ちゃんの口が開く。


「かなでがかわいすぎてのぼせちゃった、テヘッ!」


お姉ちゃんがそう言った瞬間に、ハノちゃんがハリセンでその頭をはたいた。


「真面目に話してください」

「はい、すみませんでした」


ハノちゃん、容赦ないなぁ。

そのハリセンどうしたの?


「実はね……」


お姉ちゃんは観念したのか、真面目に語り始める。

その話の内容はこうだった。


お姉ちゃんは元々別の世界で生きていた。

でもその世界が滅びの時を迎えてしまう。

その時にたまたま旅をしていたさくらさんたちが、こちらの世界で保護したらしい。


しかしお姉ちゃんの体は、その世界ではあふれていた魔力を必要とするものだった。

この世界でほとんど存在してない魔力では足りなかった。

そこで別の異世界を探していくことになった。


ようやく見つけた別の世界も滅びの寸前で、その時いろはちゃんが保護された。

この時、偶然にもいろはちゃんの魔力がお姉ちゃんに流れ込む現象が見られたらしい。


そしていろはちゃんの魔力は自力でも生成することができるものだった。

というより、本来生きるのに必要な分は自分で生成できるはずなのだ。

それがお姉ちゃんのいた世界の人たちはできなかった。


この一連の発見から、さくらさんは何かを閃いたらしい。

それまでの旅の目的である楽園探しを中断。

自ら楽園を作り出す研究に変更した。


さくらさんの旅は元々ブルームーンストーンの発見から始まっている。

その石の持つ大量の魔力を吸い出して利用できるならば、それも可能と思ったらしい。


それからしばらくして、さくらさんは本当に世界を作ることに成功した。

ハノちゃんたちの暮らす、あの世界だ。


そして魔力を安定供給するために私が生み出された。

お姉ちゃんの生体情報と魔力をベースにしているみたいだ。


魔力には属性があると分かり、私を通して変換しているらしい。

そうしないと望まないものまで生み出されてしまうとのことだ。

たとえば災害とかがそうらしい。


楽園であるために必要のないものは排除する。

そのためのフィルターが私だった。


楽園は順調に発展をしていった。

しかしそこで問題が発生した。

それは幾つもの世界が滅びを迎えていた原因と同じだった。


ブルームーンストーンは魔力をどんどん内部に溜めている。

それを不定期で大量に放出するらしい。

ダムの放流と似たようなものだ。


この時は私と繋がっていたため、その魔力が一気に流れ込んできた。

まだ幼かった私は、その魔力をおさえきれずあふれさせてしまう。


世界が滅びる寸前で、お姉ちゃんといろはちゃんが魔力の受け皿となった。

そのおかげでかなりの損傷を受けながらも、なんとか存続させることができたらしい。


ただ私は、この時に記憶をほとんど失ってしまう。

私の記憶が曖昧なのはこのためだと。


そして楽園に見えるあの世界も、結界で守られているだけみたいだ。

結界の外は、楽園を作る時に取り除いたもので溢れている。

つまりは地獄のようなものなんだろう。


お姉ちゃんがむこうの世界から戻ってこなかったのは、魔力の受け皿をしてくれているからか。

あとは生きるのに必要な魔力の補充……。


私が成長してすべての魔力を受けきれるようになったら。

それからお姉ちゃんにも魔力を分けられるようになったら。

みんなで、またここで暮らすことができるのかな。


なんだかずいぶんと大きな話になってしまったな。

私はただここで普通に生活したかっただけだったのにな。


世界とか楽園とか受け皿とか。

身近な人間たちのほとんどがこの件に関わっている。

私たちが、世の中から隔離されているに近い生活を送っていたのはこういうことか。


でも私はあきらめない。

世の普通とは違うかもしれない。

それでも幸せに生きることは諦めたくないから。


私にできることは何だってしよう。

話を聞く限り、私にはそれだけの力がある。


普通の人間だったらできなかったことができるかもしれない。

それなら、私だからこそできる方法で幸せを手にしてみせる。


絶対にあきらめたくないから。

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