今度ふたりだけで遊びに来ようね
やっとお姉ちゃんとこっちの世界で再会できた。
でももう遅い時間なので夕食をとるためレストランに入る。
このままナイトパレードを見れるようにテラス席に座ることにした。
そして注文したものが届いた人から食事を始めていく。
「ごめんね、もうちょっと早く来れたら良かったんだけど……」
「ううん、来てくれただけでも嬉しいよ」
私はお姉ちゃんの隣にぴったりとくっついて座っていた。
全員いると私たちは結構な人数なので2席とっている。
といってもおしゃべりに困るほど離れてはいないけど。
私と同じ席にいろはちゃんとユウキ。
それからマロンちゃんとハノちゃんも。
隣の席にモカさんとミントさん。
あとチョコたち3人とセツナさん。
セツナさん、さり気なく付いてきてるな……。
「この人がかなでのお姉さんか」
「あれ? ユウキってお姉ちゃんと会ったことなかったっけ?」
「あると思うけど、覚えてないな」
そうか、その時期の私の記憶ってかなり曖昧だからなぁ。
結構いじられたりしてるみたいだし。
いろはちゃんのことでごちゃごちゃしてたときだもんね。
「いろはちゃんも会ったことないよね?」
「そうですね、同じ施設にいたのは知ってますけど」
こんな話をしていたら、セツナさんがすごく微妙な表情をしていた。
「なんか隠してたはずなのに、ほとんど知られちゃってるんだけど……」
「いや~、この子たち優秀だし、それに強いよ、私たちの想像以上にさ」
セツナさんとミントさんが保護者的なお話を始めている。
私たちのために裏で頑張ってくれてたんだよね。
それを勝手に自分たちで見つけちゃったんだ。
確かにそれで傷ついたこともある。
でも考えてみたら、自分が何者であっても自分が変わるわけではない。
みんながいままで通りに接してくれるなら、私の幸せは変わらない。
いろいろあったからこそ、そう思えるようになったんだ。
変われたということか、それとも強くなれたのか。
私は逃げただけような気がしている。
「おお~、ついにハンバーグを食す時がきたぞ」
「よかったね、チョコ」
「ああ」
チョコの注文したハンバーグが届く。
それを前にして少し興奮気味だ。
「う~ん! うまい!」
一口食べて幸せそうな顔をする。
別に食べようと思えばいつでも食べられるものでこんなにも幸せになれるなんて。
やっぱり幸せって幸せだと思わないと手に入らないんだよね。
幸せだと思うから幸せなんだよね。
「マスター、一口あげる~」
「いいの?」
「マスターにも同じ気持ちになって欲しいからな~」
そう言ってチョコが一口食べさせてくれる。
フォークで私の口まで運ばれてくる。
それは今までで一番おいしいハンバーグだった。
その後、みんなゆっくりと食事を済ませていった。
今はお茶やコーヒーなどを飲みながらおしゃべりをしている。
そうしているうちにナイトパレードが始まった。
前来たときは間近で見てたんだよね。
でもここからのんびり眺めるのもいいもんだね。
「私、こういうの初めてだよ」
「そうなの?」
「うん、というか遊園地自体が初めて」
私はそう言うお姉ちゃんの横顔を見る。
まるでこどもみたいな表情をしていた。
せっかく初めて遊園地に来たのに何も遊べなかったんだよね。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なぁに?」
「今度ふたりだけで遊びに来ようね」
お姉ちゃんはちょっと驚いたような顔をして私のことを見る。
それからやさしい笑顔になった。
「うん、そうだね」
その笑顔がちょうど打ち上がった花火に照らされる。
私は胸の鼓動が早くなるのを感じた。
やっぱり私はお姉ちゃんのことが大好きなのだ。




