逝ね!!
巨大な敵モンスターに突っ込んでいくユウキ。
相手は叩きつけるように大きな拳を振り下ろす。
それを素早く横にかわして剣で攻撃する。
さすがの巨大モンスターで、LPがわずかにしか減らない。
ユウキはさらに連続で攻撃をいれる。
かなりの早さでLPを削っていく。
相手は特に攻撃に対してのモーションがない。
痛がる様子もなく、再び拳を振り下ろしてくる。
今度はそれを後ろに回避する。
その隙きにセツナさんが雷魔法を相手にぶつける。
ここまでで6本あったLPのバーも3本に減った。
敵の攻撃が単純なので楽に倒せるなぁ。
私とセツナさんの魔法、それからいろはちゃんの矢。
これらを一発ずつぶつけてからユウキの連続攻撃でLPは0になった。
敵モンスターは霧になって消滅。
また魔法陣が現れ、次の敵が出現した。
今度は巨大な蜘蛛型モンスターだ。
「ちょっとボク疲れちゃったなぁ……」
「どこへ行くの、ユウキ?」
相手を見て逃げようとするユウキを捕まえる。
「ちょっとグロいだけじゃない、映像だから大丈夫だよ」
「そう言いながらお前も一緒についてきてるじゃないか!」
「だって~、あれは無理~!」
お互いの気持ちが同じであることを確認し、一気に端っこまで走る。
よしっ、この位置から魔法で……。
と思ってたら、いろはちゃんが弓を構える。
そしてその周りに魔法陣がいくつも現れる。
それが一つずつ輝き始め、やがてすべてが強力な光を放つ。
「逝ね!!」
光の矢が蜘蛛を撃ち抜き、7本あったLPゲージは一気に0に。
お姉ちゃん、いろはちゃんが怖いよ~。
蜘蛛が消滅し、次のモンスターが現れた。
今度はかっこいいドラゴンだ。
真っ赤な色はそのまま炎属性の色だろう。
辺りに火が撒き散らされる。
ただの映像のはずなのに実際に熱を感じる。
多分気のせいだろうけど……。
「うぉ~! かなで! ドラゴンだ!」
このドラゴンを見て、ユウキが大興奮。
いきなり元気になって敵に突っ込んでいく。
LPのゲージは10本もある。
それでも、お元気なユウキさんがどんどん削っていく。
あっという間に半分以下になっていた。
「うぉおおおおお!!」
もはや私たちにできることはない。
ただ暴走するユウキを見ていることしかできなかった。
そしてついにLPは0になった。
可哀想なドラゴンさん……。
一度も火を吐くこともなく散っていった。
ユウキは満足そうな表情で仰向けに寝っ転がった。
「はぁ~、楽しかった~!」
「いや、あと1体いるからね」
「もう十分だよ~」
楽しめてるみたいでよかったよ。
「私、育て方間違えてたかな……」
気にしなくてもいいと思いますよ、セツナさん。
そもそもほとんど放置じゃないですか……。
「あと1体は私たちでやるしかないね」
魔法陣とともに最後の相手が姿を現す。
それは6枚の翼を持つ大きな天使だった。
見ているだけで頭が真っ白になった。
なんだか全身が痺れるような感覚までした。
なんなんだこの威圧感は……。
まるで本物を前にしてるみたいだ。
これと戦うのか。
まぁ映像だし、別に絶対に勝たないといけないわけでもないし。
とにかくやるか。
そう覚悟を決めて、杖を構えた時だった。
急にその相手の映像がぶれ始める。
「あれ? 何?」
そして辺りが真っ暗になった。
「きゃっ」
「いろはちゃん!? 大丈夫?」
「あ、はい、びっくりしただけです……」
お互いの位置もわからず、そばにもいけない。
そうだ、光の槍を降らせれば明かりになるかも。
私はポケットにしまってたカードを取り出し、杖にかざす。
光の玉が現れ、槍を分散して降らせる。
月明かり程度だけど、これでなんとか全員の姿を確認できた。
そして敵モンスターがいた場所に目をむける。
そこには先程の6翼の天使が姿を変えたと思われるモンスターがいた。
翼は真っ黒に染まり、黒い霧のようなものをまとっている。
堕天したって設定なのだろうか。
かなり演出に力を入れてるんだなぁ。
とりあえず早く終わらせよう。
なんだかさっきから体の調子が悪い。
私はさっきとは違うカードを取り出す。
一本の大きな光の槍を飛ばす魔法みたいだ。
光り輝く魔法陣が魔力を溜め始める。
そこをめがけて、敵モンスターが霧で作った黒い剣を飛ばしてくる。
私は反射的にそれをかわす。
しかし避けきれなかったみたいで、腕から血が少し流れる。
……え?
これ、ゲームじゃない……?
「かなでちゃん! 逃げてぇ!!」
セツナさんの叫び声。
前を見ると、私にむかってもう一本剣が飛んできていた。
しかし、体勢を崩していた私はそこから動くことができなかった。




