中二病全開空想遊びで何度もやってるはず……
チョコとバニラの体を洗ってあげて、3人でお湯につかる。
両サイドから美少女にはさまれ幸せな気分。
この状態でふたりの話を聞く。
「この場所はちょうど魔法の世界と重なる位置にあるんだ。
だから少しではあるが魔力が流れてきている」
「その魔力を使って門を開けばふたつの世界を行き来できるんですよ」
すごい話だなぁ。まるっきりラノベとかでありそうな話だよ。
しかも実際この場に魔力が流れているって、全然わからないね。
「じゃあ私もやり方がわかれば魔法を使えるの?」
「この世界の者には普通は無理だな。魔力を体に流せないからな」
「体内の魔力を術式とかで魔法に変換するんですよ」
なるほど。
「まぁマスターは使えるがな」
「え?」
使えるの? 私が?
「なんかお姉ちゃんは普通に魔力を取り込んだり、
貯めたりできるみたいなんですよね」
「私、大丈夫なの?」
なんかふたりの話を聞いてたら、
自分がおかしいみたいで怖くなってきたよ。
なんで魔法を私が使えるのか……。
でもそんなことより、アニメ好きの私としては、
試してみたい気持ちのほうが強かった。
「ちょっとやってみたい!」
「う~ん、まぁちょっとくらいなら大丈夫か」
チョコが少し悩んでから了承してくれる。
「だが、本当はよくないぞ。この世界に存在しないものを使うのは」
「それは覚えておいてくださいね」
「うんわかった」
そして私は魔法の使い方を教わることにした。
とりあえずこのお風呂のお湯を少しだけ空中に浮かせることに挑戦。
「まぁ大事なのはイメージだよ、イメージ」
チョコが両手を腰に当て、指導してくれる。
体が小さいので態度が大きくても可愛く見える。
というか、マスターって呼んでるけど絶対思ってないよね。
「イメージ……」
「お湯の玉を作って宙に浮かべるイメージ映像ですよ」
「そしてその術式を頭の中で組む」
「術式!?」
術式なんて知らないよ……。
と、思っていたら、頭の中に何かがうかんできた。
「あはは、意地悪だったなマスター。ホントは……」
「できたー!!」
「へ?」
私は見事にお湯の玉を作り、宙に浮かせて見せた。
ふたりの方を振り向くとぽかんとした表情をしていた。
「……お姉ちゃん、術式は?」
「えーと、なんかそれっぽいのが頭の中に浮かんできた」
なんで言うとおりにしたのに驚かれているんだろう。
「マスター、ホントは術式を組めるやつ、今はほとんどいないんだ」
「最近は術式を組んであるカードを使うのが主流なんですよ」
「カード……」
そういえば昼間に怪しげな優しいお姉さんにカードをもらったなぁ。
「ほかにもこっちの世界からきたやつが
術式をデータ化してデバイスに入れる実験してたな」
「え、行ったことある人いるの?」
「はい。何人かいますよ」
そっか。こんなところに非日常が転がっていたんだね。
「逆にこっちにしれっと住んでるやつもいるだろう?
私達やマロンとかな」
やっぱりマロンちゃんもそうなんだ。
そういえばどこからきたとか言わなかったもんね。
「それにしてもお姉ちゃん、すごいですね!
普通に魔法使っちゃいましたね」
「むしろ、おかしいが……う~ん、魔力が多いのは気づいてたが……」
怖いからおかしいとか言わないで!
「今までこういうこと、ならなかったか?」
「うん……、心当たりはないけど……」
「なにかきっかけがあったんですかね?」
そっか、イメージしただけなら中二病全開空想遊びで何度もやってるはず……。
なのに今回は魔法が発動したなんておかしい。
「ま、いっか」
チョコが考えるのを放棄した。
「えぇ~、あきらめないで~」
チョコに飛びつく私。
「ひゃあ、やめろマスター!」
「おや、攻められるのは苦手ですか? ふふふ」
「ちょっと、ふたりでじゃれないでくださいよ~」
露天風呂で3人ではしゃぎまわる。
今日はいろいろあったな。
これからきっといろんなことが変わっていくんだろう。
何かわからないけど大きなことに関わってしまっているんだと思う。
だから、変わることが避けられないのなら、
その変化がせめて幸せなことであるように祈りながら、
私はただ今を精一杯後悔しないように生きようと思う。