マジっすか……
私は今、お花に囲まれたカフェにいる。
さっきまでまさかのVRアトラクションでぐったりしていた私。
それを見たハノちゃんがこのカフェを見つけて連れてきてくれた。
もともと来てみたかったらしく、マップアプリでチェックしていたみたいだ。
ハノちゃんといろはちゃん、あとバニラがお花畑で楽しそうにおしゃべりしている。
他のみんなはさっきのVRの精神的ダメージでぐったりしている。
私もココアを飲みながら、心の傷を癒やしていた。
「私も混ざりたいぞ……」
隣でチョコレートドリンク片手に、死んだ目をしているチョコ。
「ねぇチョコ、それ一口もらってもいい?」
「ああ……」
チョコの飲みかけのストローを使って一口いただく。
あ、ココアより甘いな。
「ありがとう」
「ああ……」
お礼を言ってドリンクを返すと、チョコも続きを飲み始める。
「間接キスだね……」
「ぶっ!」
冗談で言ってみたらチョコが吹き出してしまった。
「マスター、本当はもう元気だろう!」
「あ、バレた? いや~あれ見てたらね~」
そう言って視線をお花畑にむける。
「お花の妖精さんたちだよ~」
「いやいや、妖精はバニラだけさ」
「そう?」
「ハノは巫女で、いろはは天使、そしてバニラが妖精って感じだろう」
私にはみんな妖精に見えるけどね~。
それもどうかとは思うけど。
「チョコっていろはちゃんの正体知ってたの?」
「あ……」
「しまった」といった感じでチョコが固まる。
別に私には隠さなくてもいいのにね。
「本当に天使なんだね、いろはちゃんは」
「そこまで本人は気にしてないみたいだけどな」
「まぁ、他に巫女も妖精も魔法使いもいるしね」
おかしなことに普通の人間がほとんどいないね。
そういう島ってことなんだろう、あの場所は。
「まぁ、そういうことだから、マスターもあんまり悩まなくていいんじゃないか?」
「え?」
いきなり私の話になり、驚いてチョコの方に顔をむける。
するとチョコがやさしい笑顔でこちらを見ていた。
「マスターが何者であっても、このみんなとなら幸せに生きていけるさ」
「うん、そうだね……」
私もチョコに笑顔を返す。
まさかチョコがこんな表情を見せるとはね。
よし、元気出てきたぞ!
「あ、そういえば結局私って何者なの?」
「うん?」
「魔法で生み出されたみたいなんだけど、なんて呼ぶのかなって」
あの大きな宝石から得た知識は結局のところ大事なところがわからないままだ。
部分的に情報が壊れていたりして理解できない所も多い。
私の出生についてはわかったけど、でもどうしたらいいのかとかはわからない。
そんな私のことをチョコはこう言った。
「マスターはあえて言うなら、あの世界の神様だな」
「マジっすか……」
「マジっすよ」
おいおい、いきなり神様になっちゃったよ。
どこへ行ってしまったんだ、私の普通は。
「でもマスターはマスターらしく生きていけばいいと思うぞ」
「いいのかな……」
「私は今のやさしいマスターが好きだぞ!」
そう言ってチョコは私の頬にキスをしてくれた。
「え?」
「ニヒヒ~」
かわいすぎる!
なんだかいつもより恥ずかしく感じる。
顔がものすごく赤くなっている気がするよ。
それを隠そうと思い、顔をそらす。
すると私の膝の上にチョコが寝っ転がってきた。
「眠い~」
「え~……」
なんだか猫みたいだ。
頭をなでるとやっぱりモフモフで気持ちいい。
「おやすみ~」
「あ、本当に寝ちゃった」
膝の上のチョコをなでながら、お花畑のハノちゃんたちを眺める。
のんびりっていいなぁ。
遊園地でこんなにまったりできるなんてね。
しかしなんだろう。
背中の方から冷たい視線を感じるなぁ。
これはユウキかな?
さっきのキスですか? ですよね?
「ユウキもキスしてくれていいんだよ~」
「お前は何を言ってるんだ……」
ふふふ、照れ屋さんだね~。




