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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
平和な日々と楽しい休日
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いや、目が死んでますよ!?

VRでの落下体験アトラクションのコーナーへやってきた私たち。

そこは思ってたより小じんまりとした室内だった。

なんだか家電の新製品体験コーナーみたいな感じ。


それに他のお客さんが誰もいない。

なぜ? 不人気なのかな?

貸切状態で私はいいけど。


このアトラクションはHMDのような装置で体験する。

それが三つしかないので交代で遊ぶことになる。

まずはマロンちゃんとユウキとステラから始めることになった。


ステラが少し不安そうにして固まっていると、ユウキが安心させるように声をかけた。


「大丈夫大丈夫、VRだからケガとかしないしさ」

「そうですね、理解はしているのですが……」

「どうせならリアルでは絶対に体験できないレベルがいいな」


そう言ってニヤッと笑うユウキ。

三人が装置を頭にはめて準備完了。

その後機械から、アニメみたいな音声が聞こえてくる。


『3・2・1・スタート!』

「って、いきなりかよ!? ヴァァァァアアアアアアア!!」


ユウキのすさまじい叫びが、せまい室内に響き渡る。

しばらくして『ありがとうございました~!』と終了を告げる音声が聞こえてくる。

マロンちゃんが装置を頭から外すと、震えながら何かつぶやいている。


「これは……怖すぎるよ……」

「だ、大丈夫?」


そんなに怖いものなのか……。

私、やめとこうかな……。


後の二人は終わってもまったく動く様子がない。


「ユウキ? 大丈夫?」


私が頭から装置を外してあげる。

すると同時に口から白いモヤのようなものが天にむかって飛んでいった。

それを見てバニラが焦るように叫ぶ。


「ああ! ユウキさんの魂が!」

「嘘でしょ、戻ってきて~!」

「あ、戻ってきた」


セーフ!

危ないところだったよ。


となると心配なのが、同じように動かないステラだ。


「バニラ、ステラの魂、見守っててね」

「はい、わかりました!」


慎重に装置を外すと、ステラからは白いモヤは出てこなかった。


「これは大丈夫かな」

「いや、目が死んでますよ!?」


あらホントだ。


「お~い、大丈夫か~い」

「……魔法が」


「うん?」

「魔法が使えないって怖いです……」


あ~、やっぱりそうか。

魔法が使えるとついそれに頼っちゃうんだよね。


「次は誰行く?」

「私、行っちゃおうかな~」


私が聞くと、ミントさんが前に出てきた。


「私もやってみたいぞ!」

「じゃあ私も」


あとはチョコとバニラが手をあげた。

2回目のメンバーが決まり、ゲームをスタートする。


「キャアアアアアアアアアアアアアア!」


今回はミントさんの悲鳴が響く。

きれいな声だなぁ……。

ゲーム終了と同時に三人とも自分で装置を外す。


「これ思ってたより結構怖いわ……」


ミントさんが少し疲れたような表情をしている。


「キャハハハ!」


そしてチョコは突然笑いだした。


「チョコが壊れた~!」


バニラがチョコを正気に戻そうと、叩いたりゆすったりしている。

バニラは平気そうだね、こういうの弱いと思ってたのに。


そして次は私とハノちゃんといろはちゃん。

私たちの中で特に絶叫系がダメっぽいメンバーだった。


ちょっと緊張しながら装置を頭にはめる。

意外と軽いんだね。

あとさっきまでこれを付けてたバニラの甘い香りがする。


緊張を忘れ、すっかり油断してしまった。

音声とともに、真っ暗な画面にカウントダウンが始まる。

そして急に落下画面に切り替わる。


ぎょえええええええ!!

もはや声にもならなかった。

みんなが怖がる理由がよくわかった。


私は勝手に、海にむかって空から落ちるだけだと思いこんでいた。

しかしこれは建物から街の中にむかって落ちていっている。

あと目をめがけていろんな障害物が飛んでくる。


これがかなり怖い。

映像とわかってても怖いものは怖い。


分厚い本とか木の枝とか包丁を持った女の子とか飛んでくる。

怖い、怖いよ。


そして最後は地面すれすれのところまで落ちて終了。

なんとか意識を飛ばさずに生き残ったよ。


私は装置を外して、隣の二人を見る。


「ハノちゃん大丈夫?」

「はい、きれいな景色でしたね!」

「余裕!?」


ハノちゃんは意外にもニコニコと笑顔でいる。


「きれいな海でしたね~」

「はい~」


いろはちゃんとハノちゃんが顔を合わせて笑っている。


「あれ? 二人は海の映像だったの?」

「はい、そうですけど?」


私が尋ねるといろはちゃんが首をかしげる。


「包丁を持った女の子とか飛んでこなかった?」

「なんですかそれ」


ハノちゃんがおかしそうに笑う。

あれ、なんで?

でも変な映像だったのは私だけではなかったみたいだ。


「私は下からひたすら槍を投げられました」

「ステラのひどいね!?」


私のよりひどい、そりゃ目が死ぬよね。


「ボクはずっと火の玉が飛んできて、最後はドラゴンの口の中だったよ……」

「それ、もはや落下体験関係ないよね……」

「しかもめちゃくちゃリアルなんだよ……」


ユウキが遠い目をしてつぶやいている。

その時スマートフォンを見ていたいろはちゃんが何かを見つける。


「あ、これステージ選択できるみたいです」

「え?」

「選択しないとランダムになるみたいです」


なん……だと。


「ちょっと待って、それなら私もう一回やりたいよ」

「ボクもだよ」

「では操作方法を確認しますね」


というか最初に選択画面出してほしいよね……。


「あ、これですね」

「ありがとう、いろはちゃん」


私とユウキでステージを確認する。

海、ドラゴン、槍、弓矢、女の子……など。


「……」

「ろくなステージないな!」


ただ怖がらせようとしてないか、このアトラクション。


「ボクはおとなしく海にするよ」

「私は女の子で」

「お前、それはやめたほうが……」


止めてくれるな、ユウキよ。

どんなのか楽しみだね~。


「ゲームスタート!」

「ボクは知らないよ……」


ワクワクしながらカウントダウンを待つ。

そして。


「ぎゃー!!」


それは包丁をもった女の子のステージだった……。

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