かなでちゃんは一体何人嫁と妹がいるのかな?
のんびりと朝食をとった後、みんなでお出かけ準備を済ませて家を出た。
ちょっとゆっくりしすぎてしまったので、本土へは海上レールを使った。
ハノちゃんはびっくりするかなぁと思ってたら、むこうでも似たようなものがあるらしい。
やっぱり魔法があると便利だね。
そういえばマロンちゃんも初めて乗った時に驚いてなかったな。
あのときは外国人だと思ってたんだけど。
遊園地のゲート前まで遅れることなく到着。
ミントさんはどこかな?
辺りを見回しても、人が多すぎて見つからない。
まだ来てないのかなぁ?
その時、後ろから急に誰かが抱きついてきて目隠しされる。
なんだ? バニラか?
いや、こんなに背は高くないな。
何よりこの背中に当たるやわらかいもの。
間違いない、お胸でございますね。
しかし、我が家にこんな大きなお胸の方はいません。
「だーれだ?」
あ、これ一度やられてみたかったんだよね~!
声からして間違いなくミントさんなんだけど。
「え~? わかんな~い」
わざとマンガで見たように焦らしてみる。
ついでに頭をお胸の谷間にグイグイと沈めていく。
そうやって調子に乗っていたら、目隠しをしていた手でデコピンされた。
「痛い~……」
「かなでちゃんは相変わらずだね~」
「えへへ」
開放されて、ミントさんの方に振りむきあいさつをする。
「おはようございます」
「おはよう、今日はよろしくね!」
ミントさんは元気よく敬礼する。
私も敬礼をする。
するとなぜかみんなも敬礼し始める。
そして周りのお客さんの視線を集める恥ずかしい事態となった。
遊園地の中へ入場し、一旦広場にむかう。
そこの休憩スペースのテラス席にみんなで座る。
ここで今日の予定を話すことにした。
「でもまさか巫女ちゃんまで来てるなんてね~」
隣同士で座っているミントさんがハノちゃんに声をかける。
それに対してハノちゃんが珍しく得意げな顔をして一言。
「当然です、私はかなでさんのお嫁さんですから!」
「ぶっ」
またも一撃をかましてくれました。
ミントさんが笑顔を私の方にむけて、グッと親指を立てている。
「かなでちゃんは一体何人嫁と妹がいるのかな?」
「さ、さぁ……、何人でしょうね~……」
ミントさんの笑顔から視線をそらす。
すぐ後ろにある席にいたユウキから「否定しないのかよ……」とつぶやきような声が聞こえた。
だって本当だったら嬉しいもんね。
「かなでさん、私に結婚してって言いましたよね?」
「え? 言ってないと思うんだけど……、あれ? 言ったっけ?」
「おいおいかなで、それはまずいぞ……」
ユウキが耳元でツッコむ。
やばいです、記憶が曖昧です。
なんか言ったような気がするし、でもよくそんな妄想してるからそっちかもしれないし……。
うがぁ~! 妄想と現実が交差する~!
「かなでさん、私の事、好きじゃないんですか……?」
「好きです、大好きです!」
「なら、結婚してもいいですよね!」
「……」
「なぜそこで黙る!」
またもユウキにツッコまれる。
いや~、好きと結婚は違うよね~!
「かなでさん?」
「う、うう……」
「……?」
私が言葉に詰まっていると、ハノちゃんがかわいらしく首をかしげる。
これはもう……。
「うわ~ん!」
私は泣きながらその場から走り去った。
「おい、逃げたよあいつ!」
「え~……」
ユウキが驚き、ミントさんが引いたような声を出した。
私はそのまま海沿いの広場の方まで走っていった。
そしてそこの柵をつかんで、思いっきり海にむかって叫んだ。
「みんなまとめて結婚してくださ~い!!」
はっはっは~!
これが私の想いだ~!
息を整えてから、みんなのところに戻ろうとして振り返る。
するとすっかりとみなさんの注目の的になっていた。
あまりの恥ずかしさに、顔を両手で隠してその場にしゃがみこんだ。
近くにいた二人のお姉さんが近づいてきて、私の頭をなでてくれた。
一人のお姉さんは「そういうこともあるよ」と言ってくれた。
もう一人のお姉さんは「私もやったよ~」と言った。
それでも恥ずかしいことに変わりはない。
私の黒歴史が一つ誕生した。




