まったく、朝から何イチャイチャしてるのかしら……
いよいよ明日に遊園地を控えた土曜日の朝。
ミントさんも参加するなら、他にも呼んじゃおう。
そう思って、私は異世界の方にやってきている。
私が得た知識によれば、この世界の者がわたしたちの世界に来ることには何も問題はない。
お姉ちゃんに関しては、別の問題で難しいかもしれないけど。
ダメ元でも誘ってみようと思う。
みんな一緒に遊園地で遊んでみたい。
同じ時間を同じ気持ちで過ごしてみたい。
私は、私の周りの人たちだけでも2つの世界の距離を縮めたい。
「はぁ~、ハノちゃんの淹れるお茶は落ち着くねぇ……」
「かなでさん、お疲れですか?」
お茶を出してくれた後、机をはさんで私の対面に座るハノちゃん。
私のお茶を飲む姿を見ながら、まるで天使のように微笑んでくれる。
癒されるなぁ~……。
「かなでさん、なんか少し雰囲気が変わった気がします」
「そう?」
「はい、少しですけど」
まぁ、いろいろあったからねぇ。
ブルームーンストーンの件で確かに変わったかもしれない。
記憶や知識が一気に増えたからね。
「ハノちゃんも変わったんじゃない?」
「え? そうですか?」
「うん、ますますかわいくなったよ」
あ、赤くなった。
かわいい~!
「それより今日は何かご用ですか?」
「用がないと来ちゃダメかな?」
あ、もっと赤くなった。
かわいいなぁ~……。
癒やされるなぁ……。
「ハノちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど」
「あ、はい、なんでしょうか」
「ちょっとだけ、ギュってしていい?」
「ふぇえ!?」
すごい声出たなぁ……。
「お願い!」
「ど、どうぞ……」
ハノちゃんはなぜか両手を前に突き出して目をギュッと閉じている。
私はハノちゃんの前まで移動し、抱きしめながら床に倒れ込んだ。
ハノちゃんはとてもふわふわしていて、温かかった。
私の目から涙が流れる。
それに気づいたのか、ハノちゃんが私を抱き寄せてくれる。
「やっぱり何かあったんですね……」
「うん、ごめん……」
「しばらくこうしてていいですよ」
ハノちゃんが私の頭をやさしくなでる。
これじゃお姉ちゃん失格だね……。
……。
あれ、もしかして寝ちゃってた?
私の隣でハノちゃんも寝息を立てている。
この毛布はハノちゃんが掛けてくれたのかな?
時間を確認すると8時半くらいだ。
大体30分位寝てたのかな。
ハノちゃんを起こそうとほっぺをプニプニしてみる。
「うう……にゅ」
起きない。
よし、ほっぺにキスしてみよう。
「チュッ」
「ふにゃ!?」
ハノちゃんが変な声とともに目を覚ます。
「おはよう、ハノちゃん」
「あ、かなでさん……、私寝ちゃってましたか……」
「あはは、私もさっきまで寝てたよ」
二人で顔を見合わせ、笑う。
「まったく、朝から何イチャイチャしてるのかしら……」
「きゃー!?」
「ぴゃー!?」
突然声がかかり悲鳴をあげる。
そこには壁にもたれかかりコーヒーを飲むモカさんの姿が。
「も、モカさん、何でいるんですか!?」
「勝手にわたしの部屋に入らないでください!!」
驚く私と、私の後ろに隠れて珍しく怒っているハノちゃん。
いや、そりゃ怒るよね、普通に。
「あなたたち、そういう行為はお布団の中でしなさい」
「な、何もしてないですよ!?」
ほんと、何もしてないからね!
本当だよ?
「ね、ハノちゃん」
「はい、私はかなでさんに抱かれただけです」
「ブッ」
ハノちゃん、なんて言い方を……。
モカさん吹いちゃったよ。
「も、モカさん、私ほんとに何も……」
「げほっ、わかってる、わかってるから泣かないでかなでさん」
泣きそうになる私を必死になだめるモカさん。
からかいのつもりだったんだろう。
まさかのハノちゃんの一撃。
「ただ、ちゃんと寝る前に毛布くらいは掛けなさい」
「あ、これモカさんが掛けてくれたんですか?」
「そうよ、部屋に侵入してみれば、二人仲良く床に転がってるから」
今、侵入って言ったよこの人……。
「あのモカさん、毛布のことはありがとうございます」
「いいのよ、二人が風邪をひかなければそれで」
「でも、勝手に部屋に入るのはちょっと……」
いくらなんでもプライバシーの問題が……。
「あら、ちゃんと私、ハノちゃんと約束してるわよ?」
「え?」
私はハノちゃんの方を見る。
すると「あっ」と声を漏らした。
私のせいで忘れてたのかな?
「二人とも仲いいんですね、よく会うんですか?」
私がモカさんに尋ねると、ちょっとだけニヤッとした笑顔を浮かべた。
「フフ」
「えへへ」
なんでモカさんもハノちゃんもそんな笑い方するの?
「フフフ」
「えへへへ」
なんでなの~!?




