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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
ブルームーンストーンの世界
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こちらの世界でも私が知らないような景色を見れるんですね

ステラの希望でゲームセンターまでやってきた。

今日は普段より人が少ないような気がする。

それでも他の場所よりは人の密度が高く、私はそれが苦手だ。


「ステラはこのガンシューティングがしたかったの?」

「いえ、特に何かしたいわけではないです」

「そうなの?」


単に気になったってだけか。

ステラはキョロキョロと興味深そうに店内を見回している。


ゲームセンターか。


私もゲームは好きだから気にはなってたけどね。

でも自分のプレイを後ろから見られたりとか、やっぱり嫌なんだよね……。

最近はスマホゲームのアーケード版とかあるから、やってはみたいんだけど。


あ、もしかして、島の商店街にあったりしないかな?

あそこにあったらきっと貸し切りに近い状態になるはず。

今度探してみようかな。


「あれは……」


ステラが何かを見つけてそちらの方に進んでいく。

その先はクレーンゲームのコーナーだった。


「かわいいです……」


ステラがじっと見つめる先には大きなクジラのぬいぐるみがあった。


「かわいいですね!」


後を追いかけてきたバニラも同じことを言う。

確かにかわいい。

欲しい。


しかしこれはクレーンゲームとしておかしいサイズじゃないかな?

アームでつかめると思えないんだけど……。


「お姉ちゃん!」

「お姉様!」

「え?」


何かな?

そんな期待するような目をむけられても困るよ……。

私クレーンゲーム得意じゃないし。


「チョコ、助けて!」

「私か!?」


私はチョコに助けを求めてみる。

いきなりで狼狽えるチョコ。

「う~ん」と唸ってからとんでもないことを言い出した。


「こっそり魔法で……」

「それはダメでしょ……」


チョコでも経験なしか。

くっ、なぜ君はクレーンゲームの景品なんだ……。


「ん?」


そこでチョコが何かを見つけた。


「あそこで普通に売ってるな」


そこはクレーンゲームの景品売り場だった。

あ、そういうのありなんだ。

私にとってはありがたいけどね。


「ふたり一個ずつ買っていく?」


私が尋ねるとふたりは顔を見合わせる。

そして先にバニラが口を開く。


「これはステラちゃんが持っててください」

「お姉さまはよろしいのですか?」

「家の中にあるなら一個で十分です」


部屋に置いておきたいわけではないのか。

というわけでステラの分だけ購入し、それを手渡した。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます……」


ステラが嬉しそうにぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。

髪の毛がぬいぐるみと同じ青系統なので、よく似合ってる。

こうして見ると、ステラも普通の女の子にしか見えないなぁ。




この後ゲームセンターを出て、近くのショッピングモールへ。

一階においしい洋菓子屋さんがあって、そこで売ってるプリンが私のお気に入り。

それをみんなの分もおみやげとして買って帰ることにした。


島に戻るのに、モノレールではなく海中トンネルを選んだ。

時間もまだ早いし、ステラにもこのきれいな海の中を見せたかったから。


「すごい場所ですね、海の中を歩いてるなんて……」


ステラの視線はずっと海の方にむいている。

私はステラが転ばないように手を繋いで歩く。

しばらくすると、ステラが海を見ていた視線をこちらにむける。


「こちらの世界でも私が知らないような景色を見れるんですね」

「うん、そうだね」


むこうの世界だけじゃない。

魔法がなくても、まだまだ私の知らないような世界がこちらにも存在する。

私が知ってるのなんて、こんな広い世界のほんの一部。


たくさんの国があって、そのうちの一つである日本に住んでいる。

そしてその日本ですら行ったことないところばかりだ。


そう考えると、同じ地球上のどこか遠い知らない土地よりもあの異世界のほうが身近かもしれない。

少なくとも、あの異世界で生活していけないなんてことはない。

言葉も通じるし、安全だし、快適だし。


うん?

何が言いたいんだろう私は……。


もしあの世界を特殊だと思わなければ。

私は普通の人だということにできる。

ハノちゃんたちと同じだから。


もしこちらの世界の遠い人たちよりも、異世界のほうが近い存在だと言えたら。

私は同じ人間だということにできる。

私がバニラたちをそう思っているように。


みんなは私のことを、人間だと認めてくれるのだろうか。


魔法で生み出された私のことを、人間だと認めてくれるのだろうか。


不安だった。

その時、チョコとバニラが私にすり寄ってきた。


「マスター、帰ったら4人でゲームしないか」

「いいですか? お姉ちゃん」

「私もゲームしてみたいです、お姉様」


いや、違うか。

世界が私をどう思うかはどうだっていい。

私は私が大事だと思う人たちに愛してもらえればそれでいいんだ。


「よし、帰ってゲームしようか」

「わ~い」


だってそれが私の幸せだから。

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