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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
少しずつ変わり始める日常
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くっ、湯気でよく見えない……

喫茶店を後にした私たちは、当初の予定であった買出しを

ショッピングモールで済ませ、帰路に就く。


帰りは上のモノレールを使うのがいつもの帰り方。

あまりスピードは出さないけど、それでも数分で着いてしまう。


「今日は楽しかったね~」


マロンちゃんがかばんを抱きかかえながら、かわいい笑顔で話す。


うん、ちょっと疲れたけど確かに楽しかった。

全員そろって本土まで出かけるのはひさしぶりだったから余計にかもしれないね。


そう思っていたのは私だけではなかったみたいで。


「ま、みんなで出かけるのは楽しいよな」


そうユウキが目を閉じながらつぶやく。

この子がそんなことを言うのはめずらしく、

いろはちゃんも少し驚いている。


「な、なんだよ、ボクだって楽しいことは素直にそう言うぞ!」


ユウキは少し赤くなりながら、かばんで顔を隠す。

ほほえま~な気持ちになりながらみんなで顔を合わせる。


「来週はもっと楽しいよね!」

「そうですね、今からすごく楽しみです!」


マロンちゃんもいろはちゃんも、

来週の遊園地に思いを巡らせる。


そんな話をしているとすぐに島に到着した。



家まで戻り、それぞれ自分の部屋へ。

買った物を片付けてから、

しばらくのんびりとひとりの時間を過ごす。

う~ん、さっきからなにか忘れている気がする。



着替えとタオルを持ち、お風呂に向かう。

そういえば、ここのお風呂って誰も掃除とかしてないのに、

きれいに維持管理されているんだよね。


マロンちゃんは「魔法だよ~」と言ってたけど。

やっぱりいろはちゃんの実家がらみかな?

知らないうちにお世話係の人が掃除してるとか。

まぁそれなら家中やりそうだけど。


それとも実はすごい最新の機械設備で維持されてるとか。

これはありそうだ。


脱衣所でバスタオル1枚になり、露天風呂へ。

ここはなぜか冬でも寒くないようになっている。

マロンちゃんは「魔法だよ~」と。


シャワールームが別にあったり、

ここだけ雰囲気が違うところを見ると、

後から増設してる感じがする。

だって入り口がね、もうね。


中に入り、私はお気に入りの場所へ。

お湯が出てくるところがスズランの形になっていて、

そこの前が私の好きな場所なのです。


しばらくお湯につかっていると誰かが入ってくる音がした。

入り口に目を向けると、そこには知らない女の子がいた。


肩までくらいのふわっとした髪と低めの身長。

あとは、くっ、湯気でよく見えない……じゃなくて誰!?


女の子は私を見つけるとにっこりと笑って、テテテと走ってくる。

あぶないよ、走らないで~。


そして私に真正面から抱きついてくる。

あ、当たってるよ、まな板同士が……。

判定AAA。


「お姉ちゃん、ひどいじゃないですか、お部屋に置いていくなんて」

「???」


え、何? 私のこと知ってる? 部屋に置いてきた?


「えっと、君はいったい……」

「いやだな、バニラですよ~、お姉ちゃん」

「バニラ?」

「え、ちょっと、お姉ちゃんがつけてくれたんですよ? この名前!」


私がつけた……バニラ? 


「モフモフ?」

「あ、そうか、この姿じゃわからないですね」


女の子はいったん私から離れる。

そして体が光ったかと思うと、白いモフモフに変身した。

そしてすぐ女の子の姿に戻る。


「ね、わかったでしょ?」

「バニラ……」


何が起きているのか、現実に起きていいことなのかこれは。

しかし意外とすんなり受け入れられている自分がいる。

今までも普通に考えておかしいことが身の回りにはたくさんあった。


マロンちゃんの言う『魔法』ということだろう。


「ねえねえ、お姉ちゃん、体洗ってほしいです~」


そう言いながら今度は腕に抱きついてくる。

あ、当たってる、まな板が……。


「おっと私も混ぜてもらおうか」


バニラと逆方向から腕をとられ、びくっとする。

このいろいろあれな状況を誰かにみられたのかと思ったら、

また知らない女の子だった。


腰より下までのびた黒髪の、またまた背の低い女の子。

もしかして……。


「あ、チョコもきたんですか~」


やっぱり。


「マスター、私の体も洗ってくれ」

「マスター? 私のこと?」

「ああ、私達はマスターと契約してこの世界に来ているからな」

「契約なんてしてないけど……」


うん、契約なんてしてないし、

このふたりはマロンちゃんが呼んだといっていたはず。


「まぁ、細かいことは後にしようじゃないか、

さあ体を洗ってくれマスター。ひとりで洗えないんだ」

「そうそう」


チョコに引っ張られ、バニラも離れない。

両腕に抱きつかれ、私は

(あ、チョコは程よいふくらみが……)

などと考えていた。

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