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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
ブルームーンストーンの世界
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なんか私、そういう存在みたいだね

「これが世界のコア? どういうこと?」


いきなり目の前のものが世界のコアとか言われてもね。


「ここから生み出される魔力などが、この世界を作り出しているんです」

「この世界っていうのは、異世界のことかな?」


なんだかよくわからなくなってきたので聞き返す。

指輪ちゃんも「あっ」と気づいて説明してくれる。


「お姉様からすると異世界になりますね」

「私たちの世界ではないんだね」

「はい、あとこの空間も異世界の一部です」


つまり、ここもハノちゃんたちのいる所も同じ世界ということか。

そしてこのコアは私たちの世界には関係がないと。


「さっき一部と言いましたが、正確に言うと違いますね」

「え?」

「このコアの力を使って、人工的に生み出されたのがあの異世界です」


じ、人工的!?

世界を作ったって言うの……?


「そんなことできる人がいるの?」


本当に人間なのかそれは……。


「さくらさんですよ」

「さくらさん?」


指輪ちゃんから出てきた名前はどこかで聞いたことあるものだった。

さくらって誰だっけ?

というか、さくらだけじゃいっぱいいるけどね……。


そう思っていたらチョコが理解したようにフルネームを出してきた。


「まさか神田さくらなのか」

「へ?」


いろはちゃんのお母さん?

まさかあの人が世界を一つ作ったっていうの?

チョコもバニラも驚きを隠せないといった表情だ。


え、ちょっと待って。

わけがわからなくなってきた……。


私が混乱していると指輪ちゃんが声をかけてきた。


「お姉様、とりあえずこのブルームーンストーンに触れてください」

「触れるの?」

「はい、それですべてがわかります」


なんか怖いんだけど……。

でもまぁ、やるしかないか。


「お姉ちゃん、気をつけてくださいね」

「うん、ありがとう」


バニラが心配そうにしている。

大丈夫だよね?

触った瞬間「ギャー!」とかならないよね?


恐る恐る手を伸ばし、コアに触れる。

すると私の体が青い光に包み込まれていく。

そして私の中に何かが流れ込んでくる。


「きゃあ!」

「お姉ちゃん!」

「マスター!」


私が悲鳴を上げると、バニラとチョコが駆けつけてくれる。

しかし、それを阻むように青い光がふたりを攻撃する。


「こ、これじゃ近づけないです!」

「だ、大丈夫なのか、マスター!」


心配そうなふたりを安心させてあげたい。

でもそんな余裕はない。


手を離しても私の中に流れ込んでくるものは止まらない。

これは魔力か。

あと世界の記録のようなものが頭に入ってくる。


まずい……。

溢れ出してしまう……。


「うわぁ~!!」


私の中で何かが弾けたような気がした。

地面に膝をついて息を切らす。

私を包み込んでいた光は散り、粒となって辺りを舞っている。


ようやくそばまで来れたチョコが、私を見て目を丸くする。


「マスター、その背中は……」


息も整ったので立ち上がると、背中を見ずとも状況がわかった。


なんか私の背中に羽が生えてる。

天使の羽のようなものが、淡い青い光をまとっている。


でも大丈夫だ。

制御方法も一緒に流れてきたから。

自分の中に取り込んでしまえばいいだけだ。


私はさっと羽を消した。


「お姉ちゃん、今のは……」


バニラが不安そうな顔をしている。

それに対して私は作り笑いのようなものを浮かべて答えた。


「なんか私、そういう存在みたいだね」

「マスター……」


チョコがなんとも言えないような苦しい表情を見せた。

どうやら私は普通の人間ではないらしい。

あと、いろはちゃんやお姉ちゃんのことも知ってしまった。


なんだか疲れたな……。

もう帰って寝てしまいたいくらいだ。


さっき流れてきた情報はそんなに悪いものばかりではない。

私が不安に感じていた部分に関しては、むしろ安心できるものだ。


忘れさせられていた記憶が蘇っただけなんだろう。

でもなんだろう。

自分が自分でなくなったような、そんな感覚がする。


少し時間がほしいな。


私自身の事や周りの人たち、異世界の事。

このあたりは今すぐ受け止められるようなものではない。


そっか……、私、人間じゃなかったんだ……。


なんとなく感じていたことではあるけど。

でも事実として突きつけられると、辛いなぁ……。


「マスター、もう今日は帰ろう」

「そうです、なんかボーッとしてますよ」

「うん、そうだね……」


ふたりが私の腕に抱きついてきた。

なんだかすごく安心できた。

さっきのが夢だったみたいに思えてくる。


今は考えるのはやめよう。

悩んだりするのは一人になった時にしよう。


私は整理のつかない気持ちをいったん胸の奥底に押し込んだ。


「さ、帰るよ」


私は指輪ちゃんに声をかける。

なぜだかキョトンとされる。


「一緒に行ってもいいのですか?」

「何言ってるの? 私の指輪だったんだから一緒に帰るんだよ」


私がそう言うと、少し遅れて嬉しそうに笑顔になった。


「ありがとうございます!」


指輪ちゃんが丁寧にお辞儀をしてくる。

いい子だなぁ。


「じゃあ、とりあえず帰ろう」


鏡の門にむかって歩き出した時だった。

バニラが「ん?」と、何かを拾った。


「ブラジャーです!」

「へ?」


バニラの方を見ると、その手には見覚えのあるブラが。

そ、それは……。


「あ、お姉ちゃんの甘い香りがします!」

「バニラ! 嗅がないで~!」


バニラからブラを取り上げる。

何? さっき弾けたのって、ブラだったの?


「お姉ちゃん、ブラジャーしてたんですね!」

「最近着けるようにしてるの~!」


べ、別にバストアップのためじゃないんだからね!

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