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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
ブルームーンストーンの世界
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ここに神様はいないぞ

モフモフ状態のチョコたちとおしゃべりしながら石階段を登っていく。

もし誰かがこの姿を見たら、ひとりでブツブツ言ってる危ない人だよ。

山の中だから誰も居ないけどね。


ようやく石階段を登りきると、そこには大きな神社があった。

遠くからこの山を見ても、こんなのがあるようには見えなかったけど。


これは隠れるような規模ではないと思う。

ということは、魔法か何かで見えなくしているということだろう。

つまりここには秘密があるということか。


隣でチョコたちが元の姿に戻っていた。

あれ、どっちが本当の姿だっけ?


そういえばこのふたりはどういう存在なんだろう。

マスターと私を呼ぶけど、むこうの世界には主従関係があるというのだろうか。

ハノちゃんあたりを見てると、そういうものが存在するようには思えなかったけど。


もしマスターと呼ばれるとしたら、それはお姉ちゃんの方じゃないか?

でもバニラは私をお姉ちゃんと言うし、チョコは好きでマスターと呼んでるのかもしれないな。


そんなことを考えながらふたりを見ていると、バニラが手をひらひらし始めた。


「バニラ、どうかした?」

「いえ、なんだかここ、魔力が大量に流れてるんですよ」

「え?」


魔力が流れてる? 家のお風呂場みたいにってこと?


「あとは、きれいすぎるな」


チョコがたまに見せる真面目な表情で言った。


「きれいすぎるって?」

「浄化されたみたいな感じで汚れがなさすぎるんだ」

「ほら、除菌スプレーをシュシュッとした後みたいな感じですよ」


バニラ、なんて嫌な例えをするんだこの子は……。

まぁでも、なんとなく言いたいことはわかる。

人が居ていい場所じゃない、そんな空気がするから。


まさかこんな場所がいままで過ごしてきた島にあったなんて。

商店街も本土の街も逆方向だからこっち側に来る理由がほとんどないからなぁ。

でも異世界じゃなく、私たちの世界の方にあるなんて。


「マスター、これは当たりかもしれないぞ」

「ええ……」


これ以上いらないことに巻き込まれたくないんだけどなぁ……。


そんな私の気持ちに気づいていないのか、チョコは楽しそうに奥へ進んでいく。

私とバニラはそれに遅れないように後を追った。


入り口の鳥居をくぐり、境内に入る。

そのまま大きな庭園をまっすぐ進み、巨大な門を通り抜ける。

すると長い道の向こうに本殿らしきものが見える。


「あそこ、ヤバイですよ」


バニラが立ち止まって、険しい表情でそう言った。


「あの中から大量に魔力が流れ出してるな」


さっきまで楽しそうだったチョコからも笑顔が消えている。

門を抜けた瞬間から、私にもわかるくらい周りの空気が変わった。

あそこに何かがあるんだろう。


ちょっと怖いけど、ここまで来て確かめないほうが気持ち悪い。

いっそのことはっきりさせてしまったほうが今後のためかもしれない。


「どうする? 行くか? マスター」

「……うん、行くよ」


私は覚悟を決めた。


本殿が近づいてくると、ますます空気が濃くなっていくような感じがする。

ただ、それとともに何かなつかしい感じもしてくる。

冷たさの中に、温かさが混じっていく感覚だ。


本殿の前まできて立ち止まる。


異世界に行った時は本殿の中につながっていたからあまり気にしなかったんだけど。

本来、本殿って入っちゃいけないところなんだよね。

外から来ちゃうと入るのをためらってしまう。


「入っちゃっていいのかな……」


私がそう漏らすと、チョコが軽く笑いながら扉に手をかける。


「いまさら何を言ってるんだマスター」

「だって神社の大事な場所だよ? 御神体とかあるんでしょ……?」

「大丈夫だって」


チョコは、不安がっている私に驚くようなことを言った。


「この神社、何も祀ってない」

「へ?」


何も祀ってない?

こんなに立派な神社で何も?


「ここに神様はいないぞ」

「何でそんなこと知ってるの?」

「分かるんだよ、そういうの」


チョコははっきりとそう言った。

そしてそれはバニラも同じらしい。


魔力はあふれてるし、辺りは浄化されている。

でも神様は祀っていない。

何か別のものがあるというんだろうか。


「とにかく、ここはただの建物だと思っていい」


そう言って、扉を開けようとする。

しかし扉は全く動かなかった。


「あれ? 鍵でもかかっているのか?」


チョコは不思議そうにして、扉を調べる。

しかし、私が見ても鍵なんて見当たらない。


するとバニラがあることに気付く。


「これ魔法で開かないようにしてますね」

「ええ!?」


こっちの世界で魔法の鍵?

そんなことできる人、限られてくるんじゃ……。


「これは面白いな、バニラ開けられるか?」

「楽勝ですよ♪」


バニラは扉に手をかざしたあと、普通に扉を開いた。


「開いちゃった……」


あまりにもあっさりと開いたので、ポカンとしてしまった。

バニラ、恐ろしい子……。


「さぁ、行こうか」


チョコが真っ先に中に入っていった。

私もそれに続いてついていく。


そして私たちの目に飛び込んできたものは、大きな大きな鏡だった。

まるで御神体のようにその鏡は存在した。


それを見て気付いたことがある。


私が異世界に行った時にくぐったあの鏡。

それをそのまま大きくしたような形をしていたのだ。


ああ、なんだか嫌な予感がするよ……。

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