このアニメ映画知らないんだけど
お昼になり、食の公園でみんなと合流し、昼食をとる。
私はおそばでいろはちゃんはうどん、
ユウキとマロンちゃんはラーメンを食べている。
「この後どうする? もう買い物して帰る?」
私はみんなに午後の予定を聞く。
するとユウキが急に立ち上がり、びしっとマロンちゃんの方を指さす。
「映画を見に行くぞ」
マロンちゃんがぽかんとしている。
ユウキが映画を見たいなんてめずらしい。
絶対寝るのに。
「ボクとしたことがあの映画が始まっていることに気付かなかったんだ……」
「え、まさか……あの映画が?」
ユウキが片手を顔にあて大げさに悔しがると、
マロンちゃんの顔が青ざめる。
「と、特典は? もう2週目のものに変わっちゃった?」
「明日までだ」
「チケットは?」
「なぜか持ってきている」
ふたりは頷くとこちらに振り返る。
「あ、うん、行っておいで。買い物はいろはちゃんと済ませておくから」
買い物をしてお茶でもしてたらいい時間になるだろう、そう考えていたんだけど、
ふたりはそれでは納得しなかった。
「ふたりにも来てほしいんだよ」
「ええ、なんで?」
チケットはふたり分しかないと思うんだけど。
そう思っているとユウキが答える。
「実はこの映画、入場特典があるんだけど
前売り券と当日券で特典が違うんだよ」
え?
「どうしても欲しいクリアファイルがもらえるの。
だからかなでといろはにも一緒に来て欲しいなって」
マロンちゃんが申し訳なさそうに指をもじもじさせている。
そして上目遣いになって、
「ダメ?」
グハ~、良いに決まってるよ~。
「いろはちゃんはいい?」
「はい」
「じゃあ映画見に行こうか」
いろはちゃんの了解をもらい、予定は映画に決まった。
映画館に着き、券売機に向かう。
見たい映画のタイトルを選び、次に空席から席を選ぶ。
4人並びできる席は……ってほとんど空いてるね。
このアニメ映画知らないんだけど、なんでだろう。
映画化するほどの人気作ならある程度情報が入ってくると思うんだけど。
完全新作なのかな。
入り口でお姉さんにチケットを渡し、特典をもらう。
ガラガラの場内に入り、指定の席へ。
左からユウキ、マロンちゃん、私、いろはちゃんの順で座る。
「かなで、いろは、ふたりともありがとね」
「いいよ、あ、これクリアファイル」
「マロンさん、私のもどうぞ」
「ありがとっ」
マロンちゃんが私といろはちゃんからクリアファイルを受け取ると、
ユウキからも前売り券分の特典を受け取る。
なんだユウキも付き合いだったのか、やさしいね。
しばらくすると、映画が始まる。
内容は、中学生の女の子が、毎日オタクでニートな未来をつかむため、
大学卒業までにお金を貯めきる手段として、アイドル活動を選び、
そのお金で資産運用をしていく、というもの。
……なんだこれ。
なんだこれと思ったけど、設定があれなのにストーリーはしっかりしていて面白い。
いろはちゃんもけっこうのめりこんで見ている。
資産運用とか経営の話がからむと私やいろはちゃんは興味を惹かれてしまうみたい。
そして2時間が経ち、映画が終わる。
意外と楽しめたなぁ。
私もニートになりたーい。
映画館を後にし、近くの喫茶店へ。
メイド喫茶じゃないよ? 今日は行かないよ?
「みんな本当にありがとね、おかげで全種類そろったよ」
グッズをかばんに片付けながら、マロンちゃんはみんなにお礼を言う。
「気にしないで、私も結構楽しかったし、
ところでそれ入る? こっちに入れようか?」
「ごめんね、ありがとう」
私のかばんにグッズを移し終えると、マロンちゃんがしれっと言う。
「来週もよろしくね」
「えっ!?」
そういえば特典が2週目にとか何とか言ってたね……。
同じ映画をまた見るのか。
コレクターは大変だなぁ。
「私はもう一回くらいなら見てもいいですよ」
いろはちゃんがいいなら私も付き合うか。
「しょうがないなマロンちゃんは。じゃあ来週も遊びに来ようか」
「ありがとう、みんな」
「あ、ボクはちょっと……」
ユウキが少し嫌がるが、それは想定内。
「来週は朝に映画見てから遊園地行こうか、今イベントやってるみたいだし」
「わーい」
「来週が楽しみです」
私の提案にふたりが賛成する。
そしてユウキも。
「ま、まぁ行ってならないこともないな、うん」
ツンデレさんだね。