どうか私の物語が幸せなものでありますように……
いろはちゃんとおしゃべりを続けながら、夜も遅くなってきたのでお休みモードへ。
もちろんお布団は一つ。
いろはちゃんと一緒だよ、キャー!
「なんだか懐かしいです」
「そうだね」
ユウキもいろはちゃんも、昔はもっとべったりしてたものだけどね。
気付けばふたりとも一緒に寝たりしなくなっていた。
まぁ、実はユウキはたまに来てたりするんだけどね。
あれでけっこう甘えん坊だからなぁ。
でもいろはちゃんはほとんど来なくなっていた。
ちょっと距離を感じたりもしていたくらいだった。
最近になって、また甘えてくれたりするようになったけど。
それはまわりで不思議な出来事が起こるようになったあたりからだ。
何か関係があるかわからないけど、何もないことはないと思う。
それでも私はいい変化ばかりを見るようにしてきた。
実際に悪いことは起きてはいない。
最初の変化はマロンちゃんがやってきたことかな。
外国から来たというのは結局嘘だったわけだけど。
マロンちゃんはすぐにユウキと仲良くなった。
趣味が同じこともあって、ふたりはよく話をしていた。
いろはちゃんもお世話のためにその輪に加わることが多くなった。
そしてマロンちゃんは私によく甘えてきた。
なぜかはよくわからないけど、頻繁に抱きついてきたりした。
もしかしたら、それがいろはちゃんたちを変えた原因かもしれない。
今思えばそのころから、またユウキが一緒に寝に来るようになった。
いろはちゃんも甘えるように近くに寄ってくることが増えた。
しばらくしてチョコとバニラがやってきて、またにぎやかになった。
そしてモカさんと出会い、さらにお姉ちゃんと再会できた。
異世界ではハノちゃんというお嫁さん候補を見つけた。フフ。
あとミントさんもだね。
なぜかずっと名前を知らなかったけど、ずっといろんなところで支えてくれていた。
これだけの変化がこの短期間で起きていて、いいことばかりのはずはないと思う。
何かが動き出したと考えるのが普通だろう。
それとも私がアニメの見すぎかな?
異世界にまで行っておいて、しかも魔法まで使って、非現実的とか言えないよね。
でも、このままいいことばかりが続くことを祈りたい。
どうか私の物語が幸せなものでありますように……。
「かなでさん、寝ちゃいましたか?」
「え? あ、起きてるよ」
どうやら目を閉じて考え事してたから寝ちゃったと思ったみたいだ。
「ごめんね、電気消すね?」
私はスマートフォンから操作して部屋の明かりを消した。
この部屋、ユウキたちがいろいろ新しいものと交換していくんだよね……。
なぜ私の部屋だけなんだろうか、けっこう便利だからみんなも使えばいいのに。
真っ暗の部屋でいろはちゃんと同じ布団の中か。
その割に冷静な私。
いつものハイテンションな自分はなぜか出てこなかった。
いろはちゃんが私の方に少し寄ってくる。
向き合うようにして私はいろはちゃんの体を引き寄せた。
私よりも少し小さいその体はとても温かかった。
私はどうなんだろうか。
温かいのだろうか。
それが怖かった。
私は本当に普通の女の子なんだろうか。
なんでこんなことを考えてしまうのか。
それは心当たりがありすぎるからだ。
なんで私は魔法が使えるのか。
しかも異世界の人でも使えないレベルのものまで使えてしまう。
自分の存在がよくわからなくなってきていた。
怖い気持ちがぐるぐると頭を回り始めていた。
でもそれを止めてくれたのはいろはちゃんの温もりだった。
いつの間にか眠りについているいろはちゃんの寝顔を見ていると、やさしい気持ちが湧いてくる。
普段の私が言うようなおバカな気持ちではなく、これは私の本当の気持ち。
一生をかけてこの子を守りたい。
やっぱり私たちは家族なんだと思う。
血のつながりはない。
それでもいろはちゃんとユウキは他の人とは違う特別な存在だ。
とてもとても大切な人たちなんだ……。




