なんかね、すごいパンケーキを見つけたんだ~
食事を終えた私たちはファミレスを後にし家にむかって歩いていた。
その間さっきの続きで週末の話をしている。
ミントさんも来るし、いつもとは違った時間を過ごせそうだ。
もしかしてモカさんもいたりして……。
ハノちゃんやお姉ちゃんも一緒に遊べる日がくるといいなぁ。
お姉ちゃん、戻ってこれないのかなぁ。
そういえばお風呂場のむこうの世界への門は私しか使えないんだよね。
ということはマロンちゃんと行くときはちゃんとした門を開ける必要があるのかな?
マロンちゃんたちはそもそもどこからこっちに来たんだろう。
チョコが門を開けられるみたいだけど、それも露天風呂らしいから私と同じものかもしれない。
あとミントさんもずっと前からこっちに来てるし、お姉ちゃんはむこうにいる。
いろはちゃんのお母さんたちもむこうに行ったことあるみたいな話だったよね。
他に出入り口があるのか、それとも自由に行き来する方法があるのか。
謎はまだまだ多い。
というか、ずっと詳しい人がいるのに隠されてる気がする。
それでもお姉ちゃんが私を呼んだのは理由があるはず。
島を渡すだけなんて嘘だろう。
自分がこっちに来れないから私を呼んで結婚したかったって?
まさかそれも違うだろう。
本当のことは今はわからないけど、まだ平和なわけだしね。
どうせ時が来れば巻き込まれるだろう。
それなら今はあまり気にしないでおこうか。
私はただ女の子に囲まれて楽しい時間を過ごしたいだけなんだから。
「お~いかなで~、どこ行くの~!」
後ろからマロンちゃんの私を呼ぶ声がする。
気が付くと私は家を通り過ぎてしまっていた。
おやおや、考え事をしすぎていたか……。
ちょっぴり照れながらみんなの元に戻る。
「ボ~っとしてたようですけど大丈夫ですか?」
いろはちゃんがカギを開けながら声をかけてくれる。
心配かけちゃったか。
「大丈夫だよ、ちょっと考え事してただけだから」
「そうですか? ならいいんですけど……」
いろはちゃんはやさしいなぁ。
さすが私の妹であり、私の嫁だよ~。
家の中に入るとみんなリビングにむかい、ソファや椅子に座ってくつろぎ始める。
以前に比べてみんな自室よりもこっちにいることが多くなった。
人数も増えてにぎやかになったからなぁ。
あ、そうだ! お土産のこと、また忘れてたよ。
私は一度自室に戻り、例のパンケーキを取って来る。
「みんな~、実はお土産渡すの忘れてたよ~」
「お、何だ? 食べ物か?」
お土産という単語に勢いよくくらいつくチョコ。
チョコたちは知ってるのかな、このパンケーキ。
「なんかね、すごいパンケーキを見つけたんだ~」
私は袋からクジラのパンケーキを取りだしテーブルに置いた。
その瞬間、みんなが不思議そうな顔をした。
「これ? 置物じゃないの?」
「すごいでしょ? これ、特殊な小麦粉で作ってるんだって」
マロンちゃんが興味津々でのぞき込んでくる。
どうやらみんなこれを初めて見るようだ。
「これ食べれるのか? おいしいのか?」
「それを今から試すんじゃない」
少々警戒しているユウキに対し、マロンちゃんはすでに食べる気満々だ。
さっき晩御飯を済ませたばかりなのにまだ食べるんだ……。
しかもデザートもしっかり食べてたような……。
「じゃあマロンさん、一番に頂いちゃってください♪」
「ふふん、任せてよ」
バニラに勧められ、マロンちゃんがパンケーキを一口食べる。
「うん? ふつうのパンケーキだね」
「嘘だろ……」
マロンちゃんの感想にユウキが目を丸くしている。
この見た目で味は変わらないのか、すごい。
「かなで、これどこで見つけたの?」
「実はミントさんのお店がむこうにあって、そこで売ってたんだよ」
「ミントさんが?」
私が答えると、少し驚くマロンちゃん。
世の中って狭いよね、異世界まで行ってるのに知り合いとか……。
「じゃあこれみんなの分ね、ひとつずつあるから」
私はパンケーキの入った箱を他のみんなにも渡していく。
マロンちゃんにも改めて渡す。
「あれ、いいの?」
「うん、あれは試食用にひとつ多めに買ったんだ~」
「そうなんだ、ありがと、かなで」
満面の笑顔で受け取ってくれるマロンちゃん。
こんな不思議なものでも案外みんな喜んでくれるんだなぁ。
警戒してたユウキも嬉しそうにしてたし。
私はみんながおしゃべりに夢中になっている間にテーブルの上を片付ける。
自分の分のパンケーキの箱が残った袋に、試食用のパンケーキを片付けた箱を入れる。
さりげなさすぎて気付かれてないだろう。
ふふふ、マロンちゃんの食べかけ、ゲットォ!!




