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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
ブルームーンストーンの世界
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ほったらかしにした罰ですよ、お姉ちゃん

とりあえずいろはちゃんに起きてもらおうとほっぺたを軽くツンツンする。

意識のはっきりとしたいろはちゃんは恥ずかしそうに赤くなっていた。

そこに着替えを終えたユウキが降りてきた。


じゃあそろそろ晩御飯にしようかな。


「御飯どうする? なにか食べたいものある?」


冷蔵庫を確認しようとキッチンにむかいながらみんなに聞いた。


「あ、今日はみんなで外で食べようかって話してたんです」


いろはちゃんが私の後ろについてきてそう答える。

最近バタバタしてて外食が増えてるなぁ。

でもまぁ、外で食べるのも楽しいしね。


「本土までいく?」


時間はそんなに遅くないし、十分本土まで出かけられる余裕はある。

食の公園までいけばメニューの選択肢は格段に広がるけど……。

そのためだけにあそこまでいくのはちょっと遠いかな。


「別に島の商店街でいいんじゃないか?」

「そうだね、ちょっと本土まで行くのは面倒だよね」


ユウキとマロンちゃんも今日は近くで済ませたいみたいだ。


「いろはちゃんは?」

「みなさんと一緒ならどこでも」


あら、うれしいこと言ってくれますねぇ。


「じゃあ、商店街のファミレスでも行こうか」

「はいっ」


この島のファミレスはひさしぶりだなぁ。

大体家で食べるし、外食は本土で遊んでるときくらいだったからね。


そもそも住民が少なく観光客も来ないこの島でファミレスがあるのがすごいんじゃないだろうか。

ファミレス自体は1店舗しかないし、いつもすいている。

とても採算が取れているとは思えない。


やっぱり神田家の系列かな、詳しく聞いたことはないけど。

喫茶店とかも1店舗ずつきれいに用意されてるし、計画的なんだよね。

とりあえず各種用意しておいたみたいな。


いろはちゃんのお母さんならやってそう。


さてと、出かける準備しないとだね。

と言ってもさっきまで外にいたから着替えたりとかはしないけど。


「そういえばチョコとバニラは?」


さっきからふたりの姿が見えない。

ずっと起きてるときに会えてないからさみしいな。


「あのふたりなら近くの公園で遊んでるんじゃないか」

「そうですね、公園に行くって言ってましたよ」


ユウキといろはちゃんがそう答えてくれる。

公園か……。

ちゃんと子どもらしく遊んでるんだなぁ。


「ちょっとむかえに行ってくるよ」

「このまま出かけるときに拾っていけばいいんじゃないか?」


ユウキ……、扱いが雑だね。

まぁでもその方が早いか。


「じゃあ準備できたら出かけようか」

「は~い」



部屋に戻り、必要なものを持って家を出る。

みんなが揃ってから、ふたりがいるであろう公園にむかう。


ここの公園はけっこう昔からあって、ユウキやいろはちゃんとよく遊んだ場所だ。

桜が満開になるまでもう少しかな。

みんなでお花見するのもいいかもね。


その桜の木の近くのブランコにふたりはいた。

ゆっくりとブラブラしているチョコに対し、バニラはかなりの勢いでこいでいた。

バニラって意外と激しいことするんだよね。


「お~い、チョコ~、バニラ~」


ふたりにむかって手を振りながら声をかける。

すぐにこちらを振り向くとチョコが手を振り返してくる。

そしてブランコを降りてこちらにかけよってくる。


「マスター! なんかひさしぶり~」

「ごめんね、なかなか起きてるときに一緒にいられなくて」


チョコの頭をなでながら謝る。


「お姉ちゃ~ん!」


その時、なぜか上の方からバニラの声がした。

嫌な予感がしてすぐに見上げると、バニラがこちらにむかって飛んできていた。

慌ててその体をキャッチする。


「えへへ~」

「もう、あぶないでしょ~」

「だって~」


頬をスリスリしてくるバニラ。

至高のモフモフがここにある。

ああ、いやされる~。


「チョコ、バニラ、今日の晩御飯は外で食べるよ」

「お出かけですか~?」

「うん、島の中だけどね」


バニラを降ろすとすぐに右腕に絡まってきた。

それを見てチョコも私の左手をとった。


「なあマスター、明日一緒に遊びたいぞ」

「ほったらかしにした罰ですよ、お姉ちゃん」

「あはは、ごめんねぇ」


一日昼間いなかっただけなんだけどなぁ……。

まぁそれだけ好いてくれてるというのはうれしいことだけどね。


「じゃあ、明日は一緒に遊ぼうね」

「約束ですよ」

「うん、わかった」


バニラが指切りをしようと小指を出してくる。


その時、ハノちゃんとの指切りが頭に浮かんだ。

そしてお姉ちゃんとのあのやりとりも。


『かなで、お姉ちゃんと結婚しよう!』

『私はかなでのために生きてるんだよ』


『私がかなでを好きな気持ちはずっと昔から永遠に変わらないから……』


思い出すとまた顔が熱くなる。


「お姉ちゃん? どうしたんですか?」

「マスター、具合悪いのか? 顔が赤いぞ?」

「あ、ううん、大丈夫だよ」


声をかけてくれたふたりのおかげで、心の中のぐるぐるを収めることができた。

バニラと指切りをすると、手をつないで歩き出す。

今はみんなとの時間を大切にしたい。


みんなは私の大切な家族だから……。

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