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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
かなでが新しく手に入れたもの
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私はかなでのために生きてるんだよ

私たちは謎のパンケーキを購入し、ミントさんのお店を後にした。

いろいろ聞きたいこともあったけど、長くなりそうだしまた今度にしよう。

今はまだ島めぐりの途中だしね。


そういえばミントさんにもらったゲーム、ほったらかしになってるね。

帰ったら遊んでみないとだね。


この後は港の方に寄ってみることにした。

今は何の船もないけど、大型の船も泊まったりするらしい。

その船で他の島と、人や物が行き来するんだね。


他にも個人が使う小型の船を泊めるところもある。

普段はこちらがメインで使われているみたいだ。


基本的に海の世界なので、移動は船が中心になっているらしい。

他の島との定期船が出入りするところもあり、一般の人はここから島を行き来する。


他の島か。

一体どんな世界が広がっているんだろう。


自分たちの世界だと、大きな世界のほんの一部で生活しているわけで。

それでも海外に行きたいとかあまり思ったことはなかった。

でもこの世界はいろんなところを回ってみたいと思う。


あちこち回って、いろいろ見てみたいなぁ。

空もいいけど、島に生きてきた私としてはやっぱり海が好きだなぁ。

そんなことを思いながらぼんやりと海のむこうをながめていた。


その時、大型の船がこちらに向かってくるのが見えた。

え、まさか軍艦とかじゃないよね。

襲撃イベントとかじゃないよね……。


「ねぇお姉ちゃん、あの船は何?」


不安そうにお姉ちゃんの方を見る。

お姉ちゃんは私の言葉に海のむこうを確認する。

するとハッと驚いたような表情をした。


「そんな、なんで……」


そうつぶやくとお姉ちゃんは私をそっと抱きしめる。

え、何々、まさかが的中?


お姉ちゃんにされるがままモフモフされ、甘い香りに包まれる。

不安な気持ちと幸せな気持ちが入り混じり、複雑な気分。


「あの船は、クルーズ客船ですね」

「……」


ハノちゃんの言葉に、私は冷静になる。

クルーズ客船だと……。

そしていまだに私をモフモフしているお姉ちゃんにジト目をむける。


「えへっ」


とりあえず離れなさい。


「でもクルーズ客船かぁ、この世界にもあるんだね」


しかもなかなか立派な船だ。

私たちの世界とはかなりデザインが違うけど。

なんか白い船のいろんなところに、赤や青などの水晶玉みたいなものがついているし。


私たちも今度乗ってみたいなぁ。

いろはちゃんたちも連れて船旅してみたいね。

やっぱり高いのかなぁ。


ハノちゃんの話では、クルーズ客船はこの島からは出ていないみたい。

他の島から出発して、ここにはお買い物で寄ると。

ということは、ここの市場は付近の島ではかなりいいお買い物場所ってことだよね。


船が泊まるのを見届けてから、私たちは港を後にする。

今日一日ゆっくりと遊んでいたため、ハノちゃんの家に戻るころにはすっかり日が暮れていた。


「もう暗くなっちゃったね~」

「お姉ちゃん、大丈夫? 送って行こうか?」

「いやいや大丈夫だよ、お姉ちゃんはもう大人だもん」


大人でも心配な雰囲気がするんだよね、この人は。


「二人とも晩御飯食べていきますか? すぐ用意しますけど」


ハノちゃんのとてもうれしいご厚意だけど、残念ながら今日はごちそうになるわけにはいかないのだ。


「ごめんハノちゃん、家を出る前にいろいろあって今日の晩御飯はむこうのみんなと食べたいんだ」

「そうですか……、ではまたの機会にぜひ」

「うん、絶対にね、約束ね!」


少し残念そうな顔をしたハノちゃんに、私は罪悪感を覚えた。

それを誤魔化したくて、ちょっぴり強引に指切りをした。


「指切りって懐かしいですね」

「確かにあまり普段しないよね」


でもちゃんと約束したって気になるんだ。


「かなで! 私とも指切りしようよ!」

「何の約束するの?」


なんか我が姉が対抗意識を燃やしているのか、指切りを迫ってくる。

こういうのはここぞというときにするべきなんだけどなぁ。

とりあえず形だけ指切りをする。


「かなで、お姉ちゃんと結婚しよう!」

「は?」

「む~!」


お姉ちゃんの突然の告白にうまく反応できなかった。

笑顔で何言ってるんだこの人、本気なのかな。

それと必死に指切りに加わろうとするハノちゃんがかわいいです。


「お姉ちゃん、あまり冗談でそういうこと言わない方がいいよ?」

「私は本気だよ、あとはかなでの答え次第」


いつもと変わらない笑顔を浮かべながらも、確かに本気が伝わってくる。

私は少し顔が赤くなるのを感じながら、突然すぎる展開に思考が追いつかず返事ができなかった。

それを見てお姉ちゃんが助け舟を出してくれる。


「まぁ答えをすぐ欲しいわけじゃないんだ、私のこの想いはずっと前から持っていたものだから」

「私と結婚したいって?」

「結婚は置いといても、私はかなでのために生きてるんだよ」


そう言うとお姉ちゃんは、私をそばにいたハノちゃんごとやさしく抱きしめた。


「私がかなでを好きな気持ちはずっと昔から永遠に変わらないから……」

「お姉ちゃん……」


私は何も言葉が出てこなくて、ただお姉ちゃんの甘い香りとやさしい温かさに包まれていた。

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