あ、竹パンだ!
虹の橋を渡り、お姉ちゃんの家のバルコニーまで戻ってきた私たち。
んん~、陸だよ~。
……さっき一回戻ってきてたけどね。
「ふぅ、なんか疲れた」
「そうだね」
私がもらしたつぶやきにお姉ちゃんが同意する。
戻ってきて落ち着いたからか、魔力切れ事件の疲労が出てきた。
「あ、そうだ、忘れないうちに一応渡しておくわね」
そう言ってお姉ちゃんは私にカードとペンダントをくれた。
虹の橋を出したときに使ったものだ。
「ペンダントに魔法が入ってて、カードが発動キーね」
「ありがとうお姉ちゃん」
「まぁ、かなでは転移魔法で飛んだ方が楽だろうけど」
確かに。
せっかくだけどあまり使わないかも。
さてとこれで用事は終わったわけだけど、これからどうしようかな。
「みんなはこの後どうする?」
私より先にお姉ちゃんがみんなに問いかける。
「私は少し島を見て回りたいかな」
「あ、私、案内しますよ」
「ごめんなさい、ちょっと用事があって……」
島の観光を希望する私に、案内役を買って出てくれるハノちゃん。
残念ながらモカさんは都合が悪いみたいだ。
ホントに残念だなぁ……。
「お姉ちゃんは?」
「私もかなでについていくわ」
「ホントに!?」
やっとお姉ちゃんとゆっくり過ごせるんだね。
「じゃあ私はこれで」
「あ、もう行っちゃうんですか」
「うん、早く終わらせておきたいから」
モカさんはフードをかぶり、小さく手を振ると目の前から消えてしまった。
自分も使うとわかるようになったけど、鮮やかな転移魔法だよ。
私も早く自由に使いこなしたいな。
「私たちも行きましょうか」
「うん」
私たちはお姉ちゃんについて外に出る。
今日のところはこの島の主要なところをいくつか回ることにした。
まずは、前から気になっていたレンガ造りの大きな建物。
なんかこの島の雰囲気からは浮いてるんだよね。
「ここは、今は図書館として使われています」
「図書館なんだ」
建物に着くと、ハノちゃんが説明をしてくれた。
見渡した感じ、この島で1・2の大きさの建物だ。
これだけあったら、かなりの本が集まってそうだね。
「ここ、元は魔法学校だったんだよね」
「魔法学校?」
お姉ちゃんの言うように、確かに私の中の魔法学校のイメージと合う。
モカさんみたいな服装の人が出てきそうだもん。
「生徒が集まらなくなってね、そのまま図書館だけ開放し続けてるんだよ」
「なんか悲しいね」
ということは、使われているのは一部だけってことか。
今度時間があるときに探検してみたいなぁ。
とりあえず今日は中に入らず、次に商店街へむかう。
この島では一番にぎわっている場所で、中世ヨーロッパ風の街だ。
屋台なんかも出ている。
それでもそこまで人は多くなく、お店の数も少ない。
閉じている建物が逆にさみしさを感じさせる。
昔はもっと人がいたということなんだろうなぁ。
ここにいるとさっきまでいた場所は本当に何もなかったなぁと思う。
同じ島とは思えない。
さっき小さな川があったけど、そこを境にまるで別の島みたいになってる。
そんなに離れてないのになぁ。
「この通りを進むと、港があるんですよ」
「ああそっか、島だもんねここ」
港を中心に街が栄えるのは普通だよね。
それにしてもハノちゃんもお姉ちゃんも、ずいぶんと離れたところに住んでるなぁ。
初めにこの世界に来た時、他に人がいないんじゃないかと思ったくらいだもん。
そこに比べたらこの通りはかなりひとが集まってる方だ。
そのまま港を目指して歩いていると、食べ物のいい匂いがしてくる。
「おいしそうなにおいがする」
「あれじゃないですか?」
ハノちゃんの指さす先には、パンの屋台が。
「あ、竹パンだ!」
その屋台では、竹にパンを巻き付けて焼く竹パンが売られていた。
「あら、食べたいの?」
「うん!」
お姉ちゃんにこどもっぽい返事をしてしまった。
あっちもそう思ったのか、私の頭をなでなでしてくる。
ちょっと恥ずかしくなってきた。
「お姉ちゃんが買ってきてあげる」
そう言うとお姉ちゃんは屋台までかけていく。
そして竹パンを三つ買って戻ってくる。
「はい、かなで、ハノちゃん」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
竹パンをうけとり、さっそく一口。
うん甘い、やさしいパンの甘さだ。
昔一度だけ食べた記憶がある。
あの時もお姉ちゃんが買ってくれた気がする。
あんまり覚えてないけど。
三人で竹パンを頬張りながら歩いていくと、先に広場が見えてきた。
そしてその先には港がある。
やはりここは人がたくさんいる。
それでも混雑とは程遠いけど。
うん、なんか楽しいことが起きそうな予感。
なんだかワクワクしてきたよ。




