そろそろいちごパンツは卒業した方が……
いよいよモカさんから転移魔法を教わる時が来た。
これさえ身につけてしまえば、私の人生はひときわ輝きだすだろう。
必ず習得して見せるぞ。
というわけで、ここに目印となる魔法石を置いていく。
そして一度モカさんとともにお姉ちゃんの家まで転移し、わたしが単独で戻ってくるというもの。
魔法石にむかって転移するので成功しやすいみたいだ。
でもこれ、失敗したらもうどこにいるかわからなくなるんじゃ……。
そんな不安な気持ちが顔にでも出ていたのか、モカさんがやさしい声をかけてくれる。
「かなでさん、どこへ飛んでしまっても必ず見つけ出すから安心して」
「ありがとうございます、モカさん」
でもそれは失敗する可能性高いってことですか?
怖い。
怖いのでとりあえず深呼吸を。
スーハー、スーハー……。
「それじゃあ行きましょうか、かなでさん」
「え、ちょっとまっ……」
私の返事も待たずに即転移魔法発動。
……していたらしく、気付けばお姉ちゃんの部屋にいた。
これが転移魔法ですか……。
何が起こったか把握する暇すらなかったよ。
瞬間移動だよ。
いきなり目の前の景色が変わったんだよ。
ほえ~。
なんかこう、なんか欲しいね。
光ったりとか魔法陣とか、わかりやすい何かが。
「さぁ、かなでさん、先に戻ってみて」
「え……、あの、どうすれば?」
「イメージよ!」
イメージすごいなぁ、何でもできちゃうなぁ。
え~っと、あの魔法石のところに移動するイメージでもすればいいかな。
目を閉じて、頭の中に転移魔法のイメージを作る。
アニメで見た似たような状況を思い描く。
その瞬間、体がふわっと浮いて、私を包み込むような風が吹く。
そしてパッと目の前の景色が変わる。
少し宙に浮いていたところから着地。
これが私の転移魔法のイメージだった。
なるほど、イメージで演出が変わるのか。
モカさんはシンプルだなぁ。
私の転移魔法は無事成功。
さっきまでいた天島に戻ってきていた。
「できたー!」
「すごいですよ、かなでさん!」
「ホント、何でもできちゃうね……」
帰ってきた私のもとに、ハノちゃんとお姉ちゃんがかけよってくる。
そのあとすぐにモカさんも帰ってきた。
「さすがかなでさんね、あんな説明でわかるなんて」
「ええ~!?」
適当だったの~!?
モカさんの言葉に驚きつつ、あることに気づく。
魔法のほとんどがイメージすれば使えていることに。
術式やら何やらが必要なはずの魔法を、私はイメージだけで発動している。
ならひとつ試してみたい魔法がある。
それを頭の中でイメージし、魔力を流す。
術式が頭に浮かんでくる。
発動だ!
次の瞬間、ものすごい強風が私の目の前から発生する。
そしてお姉ちゃんのスカートをめくりあげる。
「キャー!!」
「おお~!」
大成功!
「かなで~? いま魔法使ったでしょ?」
「えへへ、できるかなって思って」
「もう、恐ろしい子だわ……」
そう言ってハッと何かに気づいたような表情をするお姉ちゃん。
真面目な顔をしたと思ったら、変なポーズをしてこう言った。
「我々はとんでもない化け物を目覚めさせてしまったのかもしれない……」
「ええ……」
私、化け物か……。
とにかくこれで転移魔法と神風を習得したわけで。
ふふふ、いろいろ夢がふくらみますなぁ。
あと、虹の橋を使わずにこの島まで来ることができるようになったんだね。
もっと練習して魔法石という目印なしで移動できるようになりたいな。
「それじゃあそろそろ地上に戻りましょうか」
お姉ちゃんはそう言うと、虹の橋をかける。
モカさんなら複数人連れての転移もできるんだろうけど、使い過ぎはよくないもんね。
それに自動で進めばこの橋もすぐに渡れちゃうし。
それじゃあ帰るとしますか。
さっき帰ったとこだけど。
その前にお姉ちゃんにひとつ言っておきたいことがあるんだ。
「お姉ちゃん」
「なぁに?」
「そろそろいちごパンツは卒業した方が……」
「うるちゃい!」
ふふ、お姉ちゃんもかわいいなぁ。




