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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
少しずつ変わり始める日常
5/104

お姉ちゃんのこと思い出しちゃって……

ひとはしゃぎしたところで店員さんがレジを再開する。

他に人が並んでなくてよかったぁ。


「あれ、このゲーム、レジ通らないなぁ」

「?」


いろはちゃんに似ているキャラが載っている例のゲームの

バーコードを読み取ろうとしているけど反応しないみたいだ。


「よし、このゲームは私からのプレゼントだ、もって行くがいい」

「いいの!? 大丈夫?」

「いいのいいの、お姉さんはかなでちゃんの笑顔がみたいんだよ」

「ニコッ」

「可愛い~っ!!」


店員さんがまた騒ぎ始める。

この人大丈夫なのかな。


「じゃあ、ありがたくもらっていくよ」

「今度モフモフさせてね?」

「また今度ね」

「約束だよ? バイバイ」


この人に仮とか作ると、すぐモフモフされてしまうんだよね。

まぁいいんだけど。



レジを終えてみんなと合流するとユウキの姿がまだ見当たらない。


「ユウキならあっちのカードショップに行っちゃったよ?」


マロンちゃんの指さす方には小さなカードショップがあり、

中をのぞくと店員さんと話し込んでいるユウキの姿があった。

ユウキってカード集めてたかな?


「しばらくかかるから気にしないでって言ってましたよ」


いろはちゃんが私の背中に張り付きながら声をかけてくる。

あれ、そういえばチョコとバニラどこ行った?

軽すぎていなくなっても気付かない。

そしていろはちゃんがぎゅっとして離してくれない。


時間を見ると11時前だった。

もう後の予定はお昼からのほうがいいかな。


「みんなお昼まで自由に見てまわって、

お昼ごはんを食べてから次いこっか」

「うんわかった」

「はい」


みんなそれぞれ行きたい店に向かう。

私はこの並木道を散歩しようかな。



季節ごとに姿がかわる人工植物も、まだすべてが桜に変わっているわけではなく、

桜の花を咲かせる木と雪の花を散らしている木が混在している。


雪の花というのは雪の結晶のようなものをそう呼んでいて、

散りながらあたりを白く染めあげる。

クリスマスの時は雪が降らなくてもホワイトクリスマスを楽しめるとあって

このあたりは大勢の人であふれかえる。


今ぐらいの時期は桜と混ざって散るので、幻想世界へ言ったような景色が見れるのだ。


とりあえず私はこの並木道を一度抜けて戻ってこようと思い歩き始める。

その間に買い物をするお店を決めておく。

そうしてしばらくふらふらと歩いていると横から声がかかる。


「そこのあなた、ちょっといいかしら」

「ひゃっ」


振り向くとそこにはフードを深めにかぶった

まるで黒魔道士のような格好の女の人がいた。

中二病の人かな……。

たぶん年は近いと思う。


そしてもっとも注意を引かれたのは、ちらっと見えた赤い眼。

カラーコンタクトかな、虹彩の部分が赤い。

目が合った一瞬だけで意識を持っていかれる感覚がした。


「ごめんなさい。そんなに驚くなんて……」

「いえ、こちらこそすみません」


あ、けっこう優しい声だ。お姉ちゃんの声に似てる……。

懐かしくなって、涙が……。


「あれ……」

「えっ、何、ちょっと泣かないで……、よしよし」


頭をなでてもらった。やっぱりお姉ちゃんみたい。


「すみません、お姉ちゃんのこと思い出しちゃって……」

「そう……」

「そういえばなにかご用ですか?」


私が問いかけると、お姉さんはローブの中から

数枚のカードとケースを取り出し、差し出してくる。


「これをあなたに……」

「なんですか? このカード」


なんか高級感のあるカードをもらった。

タロットカードじゃないし何だろう?


「きっといつかあなたの助けになるから、

お守りだと思って持っていて欲しいの……」

「お守り……」


確かになんか守ってくれそうな、

魔法でもかかっていそうな雰囲気はある。

普通なら街で出会った知らない人からこんなものもらえないけど、

なぜかこのお姉さんは信用できると思った。


「じゃあいただいておきますね」

「うん、ありがとう……」

「いえ、お礼をいうのはこっちですよ」


カードをケースにいれ、かばんにしまう。


「あ、これからお昼ご飯一緒にどうですか?

もう少し時間あとですけど……」


言いながら顔を上げたときだった。

お姉さんの腕が私を抱き寄せると、おでこにキスをしてくれた。


「え、ええ?」


困惑する私に、お姉さんは少し悲しげな笑顔で微笑む。


「私と出会ったこと、それからそのカードのこと、

誰にも言わないでほしいの」

「は、はい……、わかりました」


私の返事を聞くと、お姉さんは体を離す。

そして私の後ろに視線をむける。


そっちに振り向くと、誰もおらず視線を戻すと

お姉さんはいなくなっていた。

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