かなでさんが転移魔法を使いこなしたら大変なことになりそうですよね……
とにかく島が落ちる前に魔力を補充しないと!
「お姉ちゃん、何すればいいの?」
「とりあえずそこの椅子に座って」
「椅子?」
椅子ってあれか。
あの真ん中の椅子。
「座ったよ~」
「ひじ掛けのところに小さな水晶があるでしょう」
水晶、水晶……、ああこれか。
こんなところにもついてたのか。
なんかいろんなところについてるけど、水晶に何かあるのかな。
「かなで、水晶に触れて魔力を流して!」
「簡単に言わないでよ! どうやるの~」
「イメージよ! 魔力を注入するイメージ!」
なんで魔法関係はイメージばっかりなんだろう……。
注入するイメージ?
とりあえず水晶に触れて、水を流すようなイメージをしてみる。
ん~? これでいいのかな。
「ねえ、何か目でわかるようなものないの?」
「見るのではなく感じるのよ!」
「何ですと~!?」
くぅ、また適当なことを。
あれ? でもなんか、この感覚は……。
「あ、なんか吸われてる感じが……」
「さすがかなで! きっと順調にたまっているわよ!」
「っていうか、お姉ちゃん何もしてないね!?」
さっきから台座の方の水晶玉とにらめっこしてるけど、何してるの?
「なにを言ってるの、ここに残量のメーターがあるのよ? これを見守ってるの」
「それ、もうちょっと後からでもよくないですか~?」
少しくらい手伝ってよね。
メーターこっちにもつけてくれないかな。
今どれくらいまでたまったのか分からないじゃない~。
「どう~? たまってる~?」
「もう90%くらいよ」
「え? ちょっと早すぎない?」
まさか容量が少なくて燃費が悪いとかそんなことないよね?
「よしっ、たまったわ~!」
「終わった~」
はぁ、何だろうこの疲労感。
実はけっこう吸われてたのかな……。
「いや~、かなではなんでもできちゃうね」
「ホント最後まで手伝ってくれなかったね」
「だってかなでの島になるんだから、一度はひとりでやっておかないとね」
確かにそうだけどさ。
あんなところにメーターがあったらひとりじゃわからないんだけど。
「そのメーターって魔法で表示してるよね?」
「え? まぁそうだけど……」
「だったら場所変えられるんじゃない?」
私はそう言うとメーターを映しだしている台座の前に移動する。
そしてスマートフォンを取り出し、イメージを作る。
すると何かの術式が頭の中に浮かぶ。
これはいけそうだ。
そう確信し、私は魔法を発動する。
「かなで? 一体何を……」
お姉ちゃんが不思議そうにのぞき込んでくる。
私がしたのはメーターをスマートフォンに移すこと。
それは見事に成功していた。
「できたー!」
「すごい……」
喜ぶ私に、驚くモカさん。
お姉ちゃんも目を丸くしていた。
「まさか、自分でオリジナルの魔法を作っちゃうなんて……」
「すごい?」
「すごいすごい、お姉ちゃん感動しちゃったよ」
お姉ちゃんがピョンピョン跳ねながら喜び、そのあと私の頭をなでてくれた。
えへへ、なんだか懐かしい感じがする。
もしかして覚えてないだけで、昔はこういうことがよくあったのかな?
お姉ちゃんが喜んでくれると私もすごくうれしい。
「これはもしかしたら、かなでさんならできるかもしれないわね」
「モカ?」
お姉ちゃんの隣に立ったモカさんにキョトンとするお姉ちゃん。
「今からかなでさんに転移魔法の初級を教えるわ」
「ええ!? 転移ってモカさん以外に使えるんですか?」
「むずかしいだけで実は使えるのよ」
うそ、私にも転移魔法が使えちゃうかもしれないの?
てことは、あの子やこの子の着替えやお風呂ものぞき放題……。
くくく、ふふははは。
「まぁ、初級だからこの魔法石を置いた場所にむかってしか転移できないけれど」
ははは、はぁ……。
「かなでさんが転移魔法を使いこなしたら大変なことになりそうですよね……」
ハノちゃんが自分の体を抱きしめながらそんなことを言った。
そんな……、ハノちゃんまで私を変態みたいに……。
こうなったら必ず転移魔法を最上級まで極めて見せるよ!
そしてハノちゃんもモカさんもお姉ちゃんものぞいて見せるから!
「モカさん、よろしくお願いします!」
「……何かよくないことを企んでそうだけど」
「そんなことありません! 私の目を見てください!」
私は真剣さを伝えるために、じっとモカさんを見つめる。
両手を組んだかわいいポーズを添えて。
「目がハートになってる!?」
「キュン」
「かわいい……」
お姉ちゃんにはなぜか効かなかったけど、あとの2人には効いたね。
これが私の魅了魔法だよ。
「コホン、じゃあまずはめがみさんの家まで行って、帰ってきましょうか」
「はいっ!」
よ~し、頑張るよ~!




