すごいすごい、本当に島が動いてるよ!
え~と、私は今、天島の建物の中にいます。
別に心が空っぽとか言われて、気にしてるわけではありません。
本当です。
ということで建物の内部だけど、外は家で中は遺跡……、なんてこともなく。
とにかく普通の家に見える。
普通の家といっても、私たちの世界でいう普通の家ではない。
ただ変わったところがないなという印象。
こんなところが制御部?
もっと機械みたいなところを想像していたので、ちょっと拍子抜けしてしまった。
「ここで天島を動かすの?」
私はお姉ちゃんに問いかける。
「ううん、ここは人の住むところよ」
「動かすのは上よ」
お姉ちゃんに続いてモカさんも答えてくれる。
上というのはどういうこと?
階段とか見当たらないし、一階建てのように見えるけど。
「上ってどこですか? 二階なんてないような……」
私がキョロキョロと階段を探しながら聞くと、
お姉ちゃんが指さしながら答えてくれる。
「外に出たらはしごがあるのよ、そこから屋上にのぼるの」
外にはしご……、ゲームみたいだ。
そんなところで動かさないといけないのか。
天気悪かったら乗れないじゃない。
しかも上から水流れてなかったっけ?
どうなってるんだろう。
「ちょっと行ってきていい?」
「いいわよ」
「私もついていくわ」
お姉ちゃんに了解をもらうと、モカさんもついてきてくれる。
そのあとハノちゃんも何も言わずついてくる。
「え? みんな行っちゃうの? 待ってよ~」
結局お姉ちゃんもついてくることに。
外に出るとすぐにはしごの場所はわかった。
さっそく私が昇り始め、モカさんが続く。
その間私を見上げる形となっているモカさんがつぶやいた。
「あれ? かなでさんが下着つけてる……」
「きゃあ! 何見てるんですかぁ、そりゃつけますよ下着くらい」
「そう残念ね……」
何がですか。
ふう、昨日じゃなくてよかった、ぎりぎりセーフ。
「まぁ、これはこれでいい眺めね」
アウトだった~!
あ、そうだもう一人、気を付けないといけない人物が。
「ハノちゃんは最後にのぼるんだよ~」
「え?」
「変態が下から覗くからね~」
しばらくお姉ちゃんは無反応だったが、ハノちゃんに順番を譲られて、はっと気づく。
「変態って私のことなの~!?」
他に誰がいるんだか……。
ハノちゃん、スパッツは履いてるはずだけど一応ね。
屋上にのぼると、ようやく水の源泉が姿を現す。
何と屋上の真ん中に椅子があって、その後ろから水が流れ出ているのだ。
……何の意味が!?
それからその水はどこから?
あとそんなとこに座って島を動かすの?
「どう? 素晴らしい眺めでしょう」
最後にあがってきたお姉ちゃんが、両手を広げて風を感じていらっしゃる。
でも景色なら、虹の橋を渡っているときからすでにきれいだった。
「ねえ、お姉ちゃん、今って動かせるの?」
「もちろんよ」
「ちょっと動かしてみてよ」
せっかくだし、ぜひ動いてるところを見てみたい。
私がこの島をもらうのならバッチリ操作できるようにしとかないと。
マロンちゃんも乗せていかないといけないしね。
「よし、お姉ちゃんがドライブに連れてってあげよう」
「わ~い、お姉ちゃん大好き~!」
「おお~! 私も大好きだよ~!」
お姉ちゃん、大喜びです。
そして椅子の前方にある、水晶玉のおいてある台座の前に移動した。
「この水晶玉に念じれば動くのよ」
「へぇ、意外と簡単そうだね」
「そうね、動かすだけならね」
というか、椅子関係ないのか。
島がゆっくりと移動を開始する。
おお……、あんまり動いてるのが分からない。
あ、でも確かに動いてる。
「すごいすごい、本当に島が動いてるよ!」
徐々に速くなっていくと、動いてるのが目でわかるようになってきた。
それと同時にだんだん怖くなってきた。
「お姉ちゃん、ちょっとつかんでていい……?」
「かなで、しっかり抱きついていなさい」
「うん、ありがと」
慣れるまでは素直に甘えておこう。
私の反応が意外だったのか、お姉ちゃんが目を丸くしている。
でも私が本気で怖がってるとわかったのか、キリッと姉の顔になった。
やっぱりこういうところはお姉ちゃんだなぁって思う。
ちょっとかっこいいな。
その時だった。
何か『ピーピー』という警告音のようなものが聞こえた。
「ねぇお姉ちゃん、何の音かな……」
「こ、これは……」
お姉ちゃんの私を抱く力が少し強くなる。
ハノちゃんはモカさんのところへ避難していた。
「大変、魔力が切れる、補充しないと!」
「このままだと落ちますね」
お姉ちゃんが少し焦ったように話す。
でもモカさんはなぜか冷静だった。
そうか、転移魔法があるからか。
「かなで! 魔力を補充するわよ!」
「え? 私も!?」
補充なんてどうやってやるの~!




