かわいそうに、きっとお姉ちゃんの心はぐちゃぐちゃなんだよ……
虹の橋を渡り始めて10分ほど経っただろうか。
最初はワクドキしていたこの橋もまだ半分程度となるとちょっと辛い。
というか、かなりつらい。
これ毎回歩くの?
あまりにも不便じゃないかな。
「お姉ちゃ~ん、歩くのしんどいよ~」
「え? そうなの? じゃあ自動にする?」
「へ? 自動?」
何それ、歩かなくていいの?
「そんなのあるなら早く言ってよ~」
「だって楽しそうにはしゃいでたから……」
う、確かに……。
かなりはしゃいでしまっていた。
でも今はそれより疲れた。
「お姉ちゃん、自動にしちゃってください♪」
「はいはい、じゃあみんな転ばないようにね」
こ、転ぶ?
一体どういう……。
「いっきまーす!」
お姉ちゃんが合図として指パッチンをする。
その瞬間、私たちはすさまじいスピードで運ばれていく。
一瞬で天島まで到着してしまった。
なるほど、こういう移動が仕様で、歩いていたのがおかしいんだね。
あと、半分まで来てたと思ってた場所は多分4分の1も進んでなかったと思う。
……まぁ、こういうこともあるよね。
というわけで無事に着いたわけだけど。
これはまた、なんときれいな場所なんだろう。
完全な自然というわけではなく、半分は人が手を入れている。
島というより空中庭園といった感じ。
あと中心には制御部と思われる建物がある。
私は遺跡みたいなものがあると思ってたんだけど、それは人が住むような家だった。
その家の屋根から水が流れていて、周りには人口の水路がある。
水路の水はなぜか島の外へと流れて行っている。
どうなってるんだろう……。
いや魔法だ魔法、そう魔法。
でもきれいな水だなぁ。
すごく透明度が高くて、底がはっきりと見えている。
近づいて手を入れると、かなり冷たい水だった。
あぁ~、気持ちいい~。
ちょっと手ですくって飲んでみる。
うん、ただの水!
「あ~あ、飲んじゃった……」
「え、何? 何かあるのお姉ちゃん」
「……いえ、きっと大丈夫だから……」
どういうこと!?
「あはは、冗談だから大丈夫」
固まっていた私に、お姉ちゃんが笑いかける。
おのれ……、妹で遊びおってからに。
「この水は味で心を表すと聞いたことがあるけど」
そういうとモカさんが近づいてきて、水路の水を口に含む。
「う~ん、メロンかしら?」
ほほ~、メロンですか、なるほど。
確かにモカさんは立派なメロンをお持ちですが。
でもそれは心の話ではない。
「モカさんは高級で上品ということですよ」
「喜んでいいのかしら……」
モカさんが微妙な反応をしている。
そして今度はハノちゃんが水を飲む。
「どう? 何味?」
「えっと……、桃でしょうか?」
桃、ピーチ……。
そんな事件もありましたねぇ。
でも心と関係ない。
「きっとハノちゃんは、かわいくて甘いってことだよ」
「甘い……?」
そして最後はお姉ちゃん。
今まで飲んだことないのかな……。
「うん? フルーツミックスジュースと同じ味がする……」
「かわいそうに、きっとお姉ちゃんの心はぐちゃぐちゃなんだよ……」
「ひどっ!?」
私の一言に、お姉ちゃんは目をぐりぐりにして振り向く。
モカさんがちょっと噴き出して笑っている。
「きっと私の心はなんでも受け入れる広さってことだよ」
「そうかもしれないね」
「あれ、素直に褒めてくれるの?」
「うん」
だって本当にそう思ったから。
「かなでって私に対してツンデレなのかな?」
「やだなぁ、私はいつもデレデレだよ~」
「ツンツンの自覚なし!?」
ツンデレとかユウキじゃあるまいし。
私はそんなこどもじゃないよ~。
「で? かなでは何味だったの?」
「え?」
お姉ちゃんに聞かれて、あれっとなる。
そういえば味したかな?
もう一度確かめるため水を飲んでみる。
「……味がしない」
どういうこと?
ただの水だよ……。
「かなでの心は空っぽなんだね……」
「え~!?」
そんなはずはない。
私の心はこんなにもピンク色なのに~!




