海、きれいだなぁ
緑茶の魔法を振り払い、お姉ちゃんの家にやってきた。
朝の光に照らされた世界は、夜に来た時とはまた違いキラキラと輝いていた。
緑の大自然と青い海。
あの時お姉ちゃんが見せてくれた夢の時とほとんど同じだ。
「海、きれいだなぁ」
お姉ちゃんと再会を果たしたバルコニーから辺りの景色を見渡す。
私たちの住む島も海はきれいだけど、こちらの世界の海も負けてない。
あちこちに島が見えるけど、もしかして落ちてきた島なのかな……。
もしそうなら連結すれば結構大きな島になるよ?
私のプライベートアイランド作れちゃうんじゃない?
あ、浮いてる島をはっけ~ん。
あれが天空の島かな?
「何か見つけた?」
いつの間にか隣にモカさんが立っていた。
怖い。
「あそこに浮いてる島があるんですよ」
「本当ね」
「あれが天空の島かなって」
「そう、あれが天空の島よ」
「そっか~」
あれがお姉ちゃんのくれる島だったりするのかな。
どうやってあそこまで行くんだろう。
「そういえば、天空の島って言いにくくないですか」
「そう?」
「なんか略したりしないんですか?」
「天と島をくっつけて、そらじまと呼ぶ人が多いけど」
天と島で天島か。
空じゃないのか。
「名前を付けてもいいんじゃないかしら」
「島に名前ですか」
なかなかかわいいことを考えますね。
う~ん、名前を付けるとしたらどんなのがいいかな。
なんて考えてたらモカさんがとんでもない名前を出してきた。
「クイーン・モカモカ号、なんてどうかしら」
「……」
え?
どうしよう……。
反応に困って何も言えずにいると、モカさんが少し顔を赤くしながら小さな声を出す。
「ツッコんでくれないとつらいわ……」
「あ、ああ、すみません」
冗談だったのか……。
あ、でもこの感じは出会った頃のモカさんだ。
やっぱり日の出てる間はクールなんだね。
そうだ、ハノちゃんはどうしたんだろう。
そう思い振り返って部屋の中を見ると、湯のみでお茶を飲んでいた。
「ハノちゃん、お茶飲んでますね」
「ああ、あれアイスココアよ」
「え、湯のみでココア飲んでるんですか……」
まあ、現代ではおかしくないか……?
それよりあの様子ではお姉ちゃんは起きてこないみたいだね。
「お姉ちゃんいつまで寝てるんだろう」
「ほら、いつも忙しい人は一日2時間しか寝てなかったりするのにニートは10時間寝てたりする、あれ」
「睡眠の不思議ですよね~」
とはいえ、せっかく早く来たのにいつまでも寝ていられては困る。
スマートフォンで時間を確認すると、もう9時を回っているし。
かわいそうだけどそろそろ起きてもらおうかな。
「ちょっとお姉ちゃんを起こしてきますね」
「私も行くわ」
お姉ちゃんの部屋に戻りベッドのそばへ。
我が姉ながらかわいい寝顔をしていると思う。
「お姉ちゃ~ん、そろそろ起きてよ~」
とりあえず普通にゆすってみる。
しかし全く反応はない。
「そんなんじゃ起きないわよ、この人」
「モカさん」
「これぐらいしないと」
そういうとモカさんの手にビリビリと電気のようなものが発生する。
これは初めて見る魔法だ。
なんでもできるんだなぁ、モカさんは。
って、ちょっとまって!
何する気なの!?
「ていっ」
モカさんはかわいらしい声とともに、お姉ちゃんの手の爪先に電気を当てた。
「イッターい!!」
うわ、痛そう……。
「モカー! その起こし方やめなさいって言ってるでしょ~」
一気に目覚めたお姉ちゃんがモカさんに抗議する。
しかしモカさんは全く動じない。
「なら、さっさと起きてください」
「む~」
ベッドの上でふくれるお姉ちゃん。
さらにモカさんがクールに攻める。
「それともこういう方がいいですか?」
モカさんの手のひらに冷気が集まる。
氷系の魔法だ。
「それ永遠に目覚めなくなっちゃうよね!?」
お姉ちゃんが布団を抱きしめながら震えている。
そんなやりとりを見てるとなんだか楽しい。
仲いいんだなぁ、この2人。




