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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
ついに異世界へ
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これからゆっくりと姉妹に戻っていきたいなって思うんだ

「お姉ちゃん、とりあえずひとつ島はもらっておくよ」

「そう、ありがとね」


まぁ、お姉ちゃんのためというよりは、モカさんとハノちゃんとの幸せな未来計画のためだけど。


早いうちに魔力を補充してしまえば、あとは動かす時だけ魔力がいるんだよね。

なら、大丈夫じゃないかな。


「かなでにあげる島まで、案内したいんだけど……」


そう言ってお姉ちゃんは窓の外を見る。

もう夜も遅いから、当然辺りは暗い。

空も暗い。


そういえばこの世界の月って、私たちの世界より明るい気がする。

いや、もしかしたら、すこし近いのかな?


ん? なにか空に浮かんでる?

まさかあれが……。


「今日はもう遅いし、また明日にしましょうか」


お姉ちゃんは私たちの方に振り返って言った。


「確かに、そろそろ帰らないとみんなが心配してるかも……」

「え?」

「え……」


私の帰るという言葉に、お姉ちゃんとハノちゃんが反応する。


「かなで、泊まっていかないの?」

「え、うん、だって近いし……」


さすがに泊まっていったらまずいよ。

突然いなくなったらかなり心配される……はず。


「そっか、せっかく会えたのに、残念」

「明日は朝早くから来るから」


お泊りの機会なんて、これからいくらでも作れるだろうから。

それにいきなりべたべた甘えられるほどには、

私の中のお姉ちゃんの記憶が少なすぎる。


だから、これからゆっくりと姉妹に戻っていきたいなって思うんだ。


「じゃあ今日はもう帰るね」

「送っていこうか?」

「大丈夫、モカさんもいるし」


お姉ちゃんは一瞬ムッとしたけど、

すぐにやわらかい笑顔を浮かべて、手を振ってくれる。


「じゃ、また明日ね」

「うん、バイバイ、お姉ちゃん」


こうして私たちはお姉ちゃんの家を後にする。

……どうせまたすぐに会える。

このとき私は、そう信じて疑わなかった。


……なんて。

そんな物語みたいなこと、この平和そうな世界で起きるはずないよね。


……起きないよね?




私たちはハノちゃんの家まで戻ってくると、

明日のことを確認する。


「ふたりの明日の予定は?」

「もちろん一緒についていくわ」


モカさん即答。

でも頼もしい。

最近一緒にいられる時間が多くて、なんかうれしい。


「ハノちゃんは?」

「……」


あれ、なんかボーっとしてる?


「ハノちゃん? 大丈夫?」

「え、あ、大丈夫です」


「そう? 遠慮しないで頼ってね?」

「あ、はいっ」


私が頭をなでてあげると、嬉しそうに笑ってくれる。

うん、かわいい。


「かなでさん、ハノちゃん、私そろそろ行くわね」

「あ、モカさん、家はどの辺ですか、一緒に……」

「大丈夫よ」


私の言葉をさえぎるモカさん。

フードをいつものように深めにかぶなおす。


「私とのお別れはいつも突然でしょう?」

「モカさん……」

「じゃあ、また明日ね」


そう言って、モカさんは目の前から姿を消した。


初めて目の前で見たけど、こういうことだったのか。

一瞬でいなくなってしまった。

空間転移魔法か何かかな?


「モカお姉ちゃん、すごいですね」

「あれって、やっぱりすごい魔法なの?」

「魔法もすごいですけど……」


そこでハノちゃんは言葉を切って、私の方に振り向く。


「堂々とかなでさんのタオル持っていきましたよ」

「えぇー!?」


ちょっと何しちゃってるのモカさん!

それ、私の服代わりなのに。


「あはは……、私の服、そのまま使ってください」

「うう、ありがと、ハノちゃん」


まぁ、部屋に戻れば同じのあるけどね。

じゃあ帰りますか。


「かなでさん、行けるところまで一緒に行っていいですか」

「あ、うん、いいよ」


ハノちゃんの家の中だけどね、あそこ。


私は一旦家に戻るため、あの鏡のところにむかう。

ハノちゃんの家の露天風呂から洞窟へ入り、

鳥居の並ぶ道を進む。


しばらくすると、本殿が見えてくる。

こっちから見ると、中に入るのが少し怖い外観をしてるなぁ。


扉を開き、鏡の前まで進む。


「ここからこっちの世界にきたんですか?」

「うん、そうだよ」


私は鏡の中に手を入れて見せる。

それを見て、ハノちゃんは目を丸くする。


「じゃあ、今日は帰るね、また明日くるから」

「はい、待ってます」


「帰りはひとりで大丈夫?」

「私の家の中ですから」

「それもそっか」


そうだった。

ハノちゃんの家の敷地内だった。


「じゃあ、ハノちゃん、バイバイ」

「はい、また明日、です」


ハノちゃんに手を振って、私は鏡を通り抜けた。

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