すべての可愛い女の子は私の妹だよ!!
海中トンネルを抜け、地上へでる。
そこに広がる海沿いの都会の街。
きれいな海を楽しめるように整備されている。
海沿いに進むと大きな娯楽施設がある。
海水浴場に大型プール、遊園地まで一緒になった人気のテーマパーク。
ここらではデートスポットとしても有名だ。
あたりにはホテルや大型ショッピングモールもある。
街中には、飲食店や移動屋台の集まった『食の広園』という広場があり、
食事をしたり、ちょっと寄り道してスイーツを食べたりできる。
まず私たちが目指すのはアニメショップなどが並ぶ、
「萌えの並木道」と呼ばれている歩行者専用通り。
並んでいる木が、春に桜、秋は紅葉、冬には雪の花を散らす人工植物で、
それぞれの季節ごとに景観も楽しめるようになっている。
並木道の入り口までくるとマロンちゃんとユウキが
うきうきした様子で話し始める。
「あ~なんか久しぶりにこれたよ~。今日はいっぱい買っちゃおうかな~」
「マロンは今期アニメ、なにがおすすめ?」
「そうだね~……」
この二人、アニメとかの話になると意気投合するんだよね。
前を進む二人に遅れないように私といろはちゃんも続く。
「かなでさんは何か買うんですか?」
「欲しいものがあったら買うかな。特に決めてないよ~」
「かなでさんてあまり物を持たないですよね」
「うん、本は大体電子書籍だし、ゲームとか音楽はダウンロードで買ってるよ」
話しながら歩いているとすぐにお店が見えてくる。
するとマロンちゃんがさっと前に駆け出し、振り返りながら呼びかけてくる。
「ユウキー、はやくいこー!」
「やめろって恥ずかしい……」
と言いつつ走っていくユウキ。
目立つからやめてよ……、他人のフリをしよう。
「二人ともまだまだこどもですね、ふふっ」
まるで二人の保護者のように微笑むいろはちゃん。
「……いろはちゃんってホントに10歳?」
見た目は幼いけど、この落ち着きはこどもっぽくない。
むしろ精神年齢は一番高いかも。
「私はまだまだお兄ちゃんに甘えたいこどもですよ?」
「トゥンク……」
唇に人差し指を当てながら首をかしげるいろはちゃんに、
ときめく私の心。
いつの間にこんなあざとい技術を……。
ドキッとしました。
でも私はお兄ちゃんではなくお姉ちゃんです!
先に行った二人はもう見えなくなったけど私達もお店に入る。
まずは新刊コーナーを見て、電子書籍ででていない本をチェックする。
そして私はゲームのコーナーへ。
そこである恋愛ADVゲームを見つけた。
いろはちゃんにそっくりなキャラがヒロインにいる。
見たことないゲームだなぁ。
私が知らないなんて、情報収集が甘くなってるかな。
よし、買って帰ろう。
ゲームを持って、レジに向かう。
その間にあるグッズコーナーを通ると、
マロンちゃんが大量のグッズをあさっていた。
クリア系のグッズが大好きで、部屋の壁一面がクリアポスターでうまっている。
普通の紙ポスターは見たことない。
本人がいうには「この透けてるのがいいんだよ~」とのこと。
レジに着くと前にいた人が振り返り、そして微笑む。
それはまるで人形のように愛らしいお姫様……
じゃなくて、いろはちゃんだった。
かごにはおそらく百合ものであろう雑誌や単行本に同人誌まで。
この短時間にこれほど集めるとは……。
「あの、あまり見ないでください……。恥ずかしいです……」
「トゥンク……」
トゥンク……。
顔を赤らめながら、両手で顔を隠そうとする
いろはちゃんの姿に思わずときめいてしまった。
着ているカーディガンの袖が長く、指先しか見えないのもまたいい。
萌え袖というものだ。
ちなみに「トゥンク……」と声を漏らしたのは
私ではなくレジの女性店員さんである。
とある事情で私とは知り合いだったりする。
レジを済ませたいろはちゃんは
マロンちゃんのところまで逃げていく。
その様子をほんのりと頬を染めながらみつめる店員さん。
そしてそれをジト目でみつめる私。
はっと我に返り、レジを再開する。
そしてニヤニヤした表情で私に話しかけてくる。
「ねえねえ、かなでちゃん、あの子私に紹介してよ」
「紹介するだけなら」
「いや、私はあの子を嫁にする」
「ダメだよ、いろはちゃんは私のものだから」
「え~ずるい~」
頬を膨らませる店員さんに私はさらに続けて宣言する。
「すべての可愛い女の子は私の妹だよ!!」
「おぉ~」
店員さんが拍手をくれました。