新しいプロポーズですか?
「天空の島?」
「そう、天空の島」
この世界にはそんなものが存在するのか。
島が空を飛んでるってことだよね。
それを私にくれるってこと?
そもそも所有者とかあるの?
いろいろわからないことだらけだけど。
そう思っているとお姉ちゃんが少しずつ説明してくれる。
「天空の島って言っても、そんなに高いところを飛んでるわけじゃないんだけどね」
「雲の上とかじゃないの?」
「昔は飛んでたみたいだけど、今は高くても、人の乗る気球くらいかな」
あ~、それでもけっこう高いなぁ。
「で、その天空の島なんだけど、
動かすのに魔力とか使うから、説明をしようと思って」
へぇ。
それ、私にできるのかな。
「その島って魔力で浮かんでるの?」
「そうよ」
「無くならないの? その魔力は」
「ギクッ」
ん?
何かなぁ、今の。
「かなで、島を持ってるといいことあるわよ」
「どんな?」
「女の子に『私の島で空をドライブしない?』って誘えばモテモテよ」
ホントかなぁ。
確認の意味でモカさんとハノちゃんに視線を向ける。
「そんなことされたら私……」
「ドン引きです」
「……」
どういうことかなぁ。
私はジト目をお姉ちゃんにむける。
即視線をそらすお姉ちゃん。
「お姉ちゃん、なんでそんなに私に島を押し付けようとしてるの?」
「うぅ、だって~」
「みんな私に島を押し付けていくんだもん~!」
「え~!?」
どうなってるんだろう。
そんなにいらないのかな。
私の疑問にモカさんが答えてくれる。
「今はみんな生活に必要な魔力しか持ってない人が多いから」
「そうなんですか?」
「私やめがみさん、かなでさんもだけど、このレベルで魔力を持っている人はかなり減ってきてるの」
モカさんの話では、争いのない平和な世界では、
魔力を鍛える必要がほとんどないらしい。
それに加えて、前までは天空の島に蓄えられていた魔力が、徐々に底をついてきている。
そこで新たに魔力をためる必要があると。
でも、それをできる人がかなり少ないそうだ。
「私のデータによると、現在の天空の島の所持者の7割がめがみさんね」
「そ、そんなに」
それはかわいそうだね……。
お姉ちゃんが涙を流しながら話し始める。
「チョコとバニラに一つ渡したんだけど、すぐに放置して墜落させるし」
「え? それ大丈夫なの?」
チョコ、バニラ、なにやっちゃってんの!?
「まぁ、この世界はほとんど海だし、人が住む島には一応結界が残ってるから天空の島くらいは、ペンってはじかれるわ」
ペンって……。
そこでモカさんが昔を懐かしむような表情でこう言った。
「私もマロンも昔、地上にむかって落っことしたことあったわね」
「え」
「ふふ、懐かしいわ……」
この世界って、そんなポンポン島が落ちてくるの!?
怖すぎるんだけど……。
「かなで、欲しくなったでしょ?」
「今の話で欲しくなる人いると思う!?」
お姉ちゃんはかわいそうだけど、欲しくならないよ……。
しかし、モカさんがようやくメリットになる話をしてくれる。
「あ、でもかなでさん、ドライブは引くけど、島の所有者ともなればステータスにはなるわよ」
「そうなんですか?」
「それだけ強い魔力を持ってるってことの証明だから」
あ~、まぁそうなるか。
「私も持ってるのよ、維持できれば空を飛んでいられるからきれいだし」
モカさん持ってるんだ……。
落っことしたやつかな。
「それにそこら辺の島も、もとは落ちてきたものだったりもしますし、制御部から再浮上したり、変形とか結合もできますよ」
ハノちゃんまで詳しいなぁ。
あれ、もしかして持っていらっしゃる?
というか、制御部って何?
「いつか、私の島とかなでさんの島を結合して、空に浮かぶふたりの空間を作りませんか?」
え、なにこれ。
新しいプロポーズですか?
「あっ、私ったら大胆なことを……」
ハノちゃんが急に真っ赤になった。
「ハノちゃん、抜け駆け禁止よ」
するとモカさんが参戦してくる。
「私の島もくっつけるわ」
「ずっと私たち一緒ですね」
幸せそうにほほえむふたり。
なんだかよくわからないけど、急に島がいいものに思えてきちゃったよ。
これはゲットしちゃってもいいんじゃないですか?




