お姉ちゃん、私、きたよ
「も~、なんで帰ろうとするかな~」
お姉ちゃんの放った冗談を無視して帰ろうとした私たち。
すぐに止められ、この状態。
怒ってるとは思えないかわいさだった。
「お姉ちゃん、私、きたよ」
「かなで……」
この前、夢みたいなところで会ったけど、
直接会うのは8年ぶりだ。
「お姉ちゃーん!」
「かなで~!」
お姉ちゃんにダイブする私。
ああ、生身のお姉ちゃんだ……。
やさしい香りがする。
そしてやわらか……。
んん?
「あ、モカさんの方がフカフカ~」
「かなでさんったら、もう♪」
「モカ~!!」
モカさん、とてもうれしそうだ。
「まぁいいわ……」
お姉ちゃんは一度、私から離れる。
「ハノも一緒に来たのね」
「はい」
私とモカさんのほかに、
ハノちゃんを見つけて話しかけてくる。
そういえば、知り合いだったね。
「お姉ちゃんとハノちゃんはどういう?」
「お友達よ? ね~♪」
「?」
「えぇ~!?」
お姉ちゃん、ハノちゃんが首をかしげてるよ……。
これ傷つくんだよね……。
「で、でも、仲良しよね~」
「はい、仲は良いです」
「ほっ」
お姉ちゃん、必死だね……。
『めがみさま』なんて呼ばれてるから、
お友達って感覚ではないんだろうね。
そんなお姉ちゃんを見て、モカさんが勝ち誇ったような顔をしている。
「めがみさん、私はもう二人のお姉ちゃんですよ」
「え?」
モカさんはそう言うと、私を抱き寄せる。
「あ、メロン……」
「モ、モカー!」
やわらかい……。
何もかもを忘れてしまいそうなやわらかさだよ~。
「うう、私の妹たちが……」
あ、お姉ちゃんのLPが0になりそう。
そんな気がした。
なので私は、お姉ちゃんに回復魔法を使ってみる。
「お姉ちゃん、モフモフして~」
「はうっ、いくらでもしてあげるわ~」
一瞬でLPが全快した。
……ような気がする。
「さ、こんなところで話をするのもなんだし、私の部屋に入りましょうか」
お姉ちゃんについて、部屋の中に移動する。
そういえば、大事な話があるんだった。
全く急いでなかったなぁ。
ハノちゃんとモカさんがソファに座り、
お姉ちゃんは自分のベッドに腰掛ける。
私はお姉ちゃんに手招きされたけど、
マカロンの形の大きなクッションを見つけたので、
これに座ることにした。
そういえばマカロンって食べたことないなぁ。
どこで売ってるんだろう?
探しても見つからないんだよね。
ん? お姉ちゃんがしょんぼりしてる……。
どうしたの?
「で、私を呼んだ理由って何?」
「え? 呼んだ理由? う~んと」
なぜ悩んでいる……。
「直接会いたくなって♪」
「いまさら!?」
8年経たないと会いたくならないのか……。
ひどいなぁ……。
私があの時どれほど悲しんだか……。
ユウキたちがいなかったら、
立ち直ってなかったかもしれないほどだったのに。
「ふふふ、冗談よ」
そう言って、にっこり笑うお姉ちゃん。
どの辺が冗談なんだろうか。
「つまりお姉ちゃんは私とは会いたくなかったってことだね」
「か、かなで、怒ってる……?」
「怒ってないです、ツ~ン」
そんな私を見て、モカさんたちが味方してくれる。
「やっぱり私の方がお姉ちゃんにふさわしいわね」
「かなでさん、かわいそう……」
みんながやさしいよ~。
お姉ちゃんが
「みんな私の扱いひどくない!?」
と、泣きそうになっている。
まぁ、別に怒ってないんだけどね。
「もう、とにかく! あなたを呼んだのはね」
「うん」
「あなたに天空の島をあげるためよ」
……。
へ?




