用がないと連絡しちゃダメですか?
私はスマートフォンを取り出し……。
って、しまった! 今バスタオル姿だった。
置いてきちゃった~。
と思ったらバスローブ化した
バスタオルのポケットに入っていた。
そういえばお風呂でアニメ見ようと思って
持ってきたんだった。
よかった。
いろはちゃんのことですっかり忘れてたよ。
よし、モカさんに連絡しよっ。
アプリを立ち上げ、『モカお姉ちゃん』をタップする。
そしてワンコールでつながる。
怖い。
『か、かなでさん!? まさか連絡をくれるなんて! 私感動で!』
プツッ。
あ、切れた。
今のは……モカさん?
いつものモカお姉ちゃんじゃない~。
あ、モカさんから着信だ。
「はい」
「こんばんは、かなでさん」
あ、いつものモカさんだ~。
「何かあったの?」
「用がないと連絡しちゃダメですか?」
「ふぇっ? いえ、ダメじゃないけど……」
うわ、かわいい声だ。
「あの、かなでさん、さっきのもう一回言って? 録音するから」
「え?」
「あと、『おはよう♪』と『おやすみ♪』もお願い」
「あ、あの……」
「あとあと、『モカお姉ちゃん、だ~いすき♪』もお願いします!
キャー! 言っちゃった♪」
誰この人……。
「え~と、今度会った時でいいですか?」
「生ボ!?」
生ボて……。
生ボイスって言いたいのかな……。
私はアイドルか。
「あの、それより用件いいですか?」
「あらごめんなさい、どうぞ」
「私のお姉ちゃんの名前ってなんでしたっけ?」
「……」
モカさんが沈黙してしまった。
やっぱり知らないのかな。
「かなでさん、自分の大好きなお姉ちゃんの名前を覚えてないの?」
「はい、ずっとお姉ちゃんって呼んでたので」
「くっ、あの人、なんてうらやましいことを……」
あの人……ってことは知り合いなのかな、お姉ちゃんと。
「モカさん?」
「あ、えっと、お姉さんの名前はめがみよ」
「あの、それじゃなくて、本名が知りたくて」
「姫百合めがみ」
「……」
「……」
「ええ~!?」
めがみって本名だったの~!?
あと、電話のむこうから私の声が聞こえた気が……。
「じゃあ、今からそっちへいくからね」
「え? 今からですか?」
そのとき、今まで後ろで放置状態だったハノちゃんが声をかけてくる。
「あの、かなでさん、お風呂の中にこっちにむかってくる人が……」
「まさか……」
あの見覚えのあるローブは……。
モカさん……だよね~。
「こんばんは、かなでさん」
「モカさん、こんばんは」
「さっきはごめんなさい」
「え?」
「私、電話だと変なテンションになってしまうみたいで」
「そうでしたか」
まぁ、いるよね、そういう人。
それよりもですよ。
「あの、モカさん?」
「どうかしたの?」
「そのローブを着たままお風呂に入ってたんですか?」
なんか、すんごい濡れてますけど……。
あと中に何も着てないみたいで、色っぽいです。
「まさか、さっき着たのよ、魔法で」
「わざわざお風呂の中で着たんですか? 魔法で」
「全裸がよかったの? 大胆……」
「そんなこと言ってませんよね!?」
一度お風呂からでて着たらいいと思ったんですよ。
まぁ、ちらっと見える赤くなってる顔がかわいいのでいいです。
というか、直接会っても変じゃないですか、モカさん……。
あのクールで優しいモカさんはどこへ……。




