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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
少しずつ変わり始める日常
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お前の胸はAAだろ ち、ちがいますぅ~、AAAですぅ~……

私たちの住むこの島から本土へ行く方法は一般的に2つあって、

ひとつは海上を走る懸垂式モノレール。

懸垂式モノレールっていうのはレールから吊り下がって走っているモノレールのこと。

これが島民は無料で使えるのである。

一般の人も100円で乗れるようになっているけど、

そもそもこの島にわざわざ来る人はほとんどいない。


もうひとつが海の中を通るトンネルで、こっちは徒歩になる。

私たちは行きだけこっちを使うことが多く、今日も海中トンネルで本土へむかっている。

なんでわざわざトンネルを使うかというと、

トンネルがガラス張りでできていて海の中を歩いて見れるからである。

急がないときはのんびりとここを歩いていくのが私は好きなのだ。


「あ~、疲れた~、歩くのだるいよ~」


早くもユウキがバテ始める。

ゆらゆら歩いて本当にしんどそうだ。


「ユウキって前は上で行ったじゃない、なんでこっちから来たの?」


私はちょっとだけ気になって聞いてみた。


「むこうに早く着きすぎて待つのがしんどい」


歩くより待つほうが嫌なのか……。

このさみしがり屋さんめ。


「あ、じゃあ、モノレールを往復し続けるのは?」


マロンちゃんが面白い提案をする。

いくら無料とはいえ、それも疲れるんじゃないかな。


「それはもうやった」

「やったんだ!?」


提案したマロンちゃんが驚く。

冗談のつもりだったんだろう。


「どうだった? 楽しかった?」

「楽しいわけあるか! ボクだけのために往復しているみたいで

罪悪感が半端ない……」


ユウキいいコだな……。


「おんぶしてあげようか?」

「いいよ恥ずかしい」


ほんの少し赤くなりながら断るユウキ。

誰も見てないのに。


「じゃあ、手をつなぐ?」

「いいって」

「あ、じゃあ私がつなぐー」


マロンちゃんが私の右手を握る。

そして左手を「私も」といろはちゃんが握る。

その光景に沈黙するユウキ。

私はにやける顔を抑えるのに必死だ。


そしてさみしくなったのか

「やっぱりおんぶ……」と漏らす。

その顔は真っ赤になっている。

可愛いなぁ。


ふたりと一旦手を離し、

おんぶするため背中をむけ、しゃがむ。

しかしなかなか乗ってこない。


そう、忘れていたけど私の背中には

モフモフがふたつ付いていたのだ。


「しょうがない。チョコ、バニラ、ちょっと離れて」


私が声をかけるとふわっと浮き上がる。

ユウキをおんぶし、二人と手を握りなおす。

わお、なんだこのハーレム状態は。


「みんな今回だけだよ?」

『はーい』


みんなが声をそろえて返事をする。

本当は何度あってもいいけどね。


再び歩き始めたところでモフモフが戻ってきて、

私の胸に引っ付いてきた。


「なっ、まだ私もさわったことないのに……」


いろはちゃんがかなりショックをうけた顔をしている。


「あ、みてみて。おっぱいがおおきくなったよ」


私が冗談っぽく言うと、

マロンちゃんが「左右の色が違う」と笑っている。


「お前の胸はAAだろ」

「ち、ちがいますぅ~」


ユウキに反論する私。


「AAAですぅ~……」

「えっ……」


ぼそっとつぶやくとあたりが沈黙する。

まるで時が止まったかのようだ。


そんな時を再び動かしたのはいろはちゃんだった。


「かなでさん、素敵です」

「OKでましたー」


マロンちゃんも続き、ユウキがモフモフをワシワシしはじめる。


「どうだどうだー」

「や、やめてー」


そして、じゃれあっていて気付かなかった。

前から人が近づいてきていたことに。


「あらあらまあまあ」

「若いわねー」

「私も学生の頃は……」


通り過ぎる方々を見送り、

それぞれ離れ始める。

残ったのは胸のモフモフ。


「後ろに戻ってくれる?」


モフモフを背中に戻し、私たちは再び歩き始める。


「は、恥ずかしい~」

「言うなよ……」

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