君達のモフモフはそれは最高のモフモフだろう
「う~ん、絶対お姉ちゃんだと思うんだけどな~」
次のアトラクションを目指し移動している時の事。
一番後ろを歩く私とマロンちゃんは、
さっきまでいたお姉さんについて話をしていた。
「マロンちゃんはお姉さんとあまりうまくいってないの?」
「うん……。けんかしてるわけじゃないんだけどね。
昔から、なんか避けれてるのかなって」
「そっか」
マロンちゃんもいろいろ抱えてる事があるんだね。
「でもね、困ってたら助けてくれるし、本当は優しいんだよ?」
うん、知ってるよ。
優しい声をしてるし、何より優しい雰囲気がする。
「私がまだむこうにいた時、夜遅くに帰ってきて、
私の頭をなでてくれたりするんだ。寝てるって思ってたんだろうね」
「へぇ」
仲が悪いどころか、大切に思ってるんだろう。
でも、じゃあ何で直接は会わないんだろう。
「あ、そういえばあのお姉さん、モカさんっていうみたいだよ」
「え、じゃあやっぱりお姉ちゃんだよ!」
モカさんがマロンちゃんのお姉さんか。
本当にモカさんはマロンちゃんを避けてるのかな。
大切に思っている妹と会わない理由か……。
一度ちゃんと話を聞きたい気がするけど。
姉妹間の問題だし、あまり首を突っ込むのも気が引けるし……。
今度モカさんに会ったら少しだけ聞いてみようかな。
あ、そうだ。私のこと見守ってるって言ってたということは、
私とずっと一緒にいればいつかモカさんに会える。
イコール、マロンちゃんが私とずっと一緒にいる理由になるよ。
私天才! さっそく提案してみよう。
「そういえばモカさん、私のことずっと見守ってるっていってたよ」
「え、なにそれ、ずるいよかなで!」
ちょっと怒られた。作戦失敗か。
「お姉ちゃん、やっぱり私のことなんかもうどうでもいいんだ……」
きゃ~、泣かないで~!
「マロンちゃんはモカさんと仲良しになりたいんだよね」
「うん……」
だったらやることは決まってるよね。
「よし、私もできるだけがんばってみるよ」
「かなで?」
「とにかく二人が話をできるようにモカさんと話してみるよ」
「ありがとうかなで。私もがんばってみる」
そう言って笑顔を見せ、飛びついてくる。
ちっちゃくて可愛い~。温かい~。
「あ、ついてこないと思ったら、
二人でLoveしてますよ、いろはお姉ちゃん」
「あら、本当ですね~」
私達が抱き合ったまさにそのタイミングで、
バニラといろはちゃんに見つかってしまった。
ちょっとついていくのが遅れすぎたか。
「心配して戻ってきたらこれだもんな。
これだけ手を出してるなら大丈夫そうだね」
一緒に戻ってきたユウキからも一言。
心配して戻ってきてくれたのか。なのにごめんね~。
でも、最近私の印象おかしくない?
今のはマロンちゃんが抱きついてきたわけで、
私が手を出したわけではないよ。
目的地を目指し再び歩いていたら、
マロンちゃんが何かを見つけて足を止める。
「どうかしたのマロンちゃん」
「ねえねえ、これ入ってみない?」
マロンちゃんが少し弾んだ声を出すと、
前を歩いていたみんなも戻ってきた。
『モフモフ牧場VR』
なんか牧場の動物達をモデルにしたキャラクターをモフモフできるらしい。
「VRということは本物ではないわけか。試してやろうか」
「じゃあこれに入りましょうか」
ニヤニヤしてるユウキと、チョコとバニラに笑いかけるいろはちゃん。
しかしなぜかふくれるバニラ。
「モフモフなら私達がモフモフの姿になればいいじゃないですか~」
なぜそこに対抗意識を燃やしてるの?
モフモフにとって、モフモフを取られるのはそんなに大変なことなのか。
「違うぞバニラ、君達のモフモフはそれは最高のモフモフだろう。
それをバーチャルがどこまで近づいたかを試してやるんだ」
ユウキがバニラの髪をモフモフしながら、フォローを入れる。
あ、それ気持ちいいんだよね~。
「ふに~。まあそれならいいですけど……」
ふに~!? 私でもそんな声出させたことないのに!
ユウキはそんなにテクニシャンなのか、くっ。
建物に入るといくつか扉があって、そのうちのひとつを選ぶ。
中にはリラクゼーションチェアと
ヘッドマウントディスプレイのセットが並んでいた。
大きなモニターにナビゲーターキャラが表示され、
その指示通りに準備していく。
説明によるとこれはフルダイブシステムらしい。
こんなところに先端技術が使われているのか。
ユウキが言ってたように、
ここは先端技術の試験場のように思える。
それよりこれ、カッコイイ!
チェアの気持ちよさにとろけながら、
意識が何かと混ざっていく感覚がする。
夢の世界へ連れて行かれるかのようだ。
では、フルダイブシステム・スタート!




