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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
遊園地で遊ぼう
15/104

はぁ、モテる乙女はつらいよ

「や、マスター」


私たちが屋内の飲食コーナーへ着くと、

すでに人数分の席を確保したチョコにお出迎えされる。


「チョコ、席取っててくれたの? ありがとうっ!」

「ふふん、マスターのためだからな。これくらい当然だ」


そう言って立ち上がるとバニラのほうに駆け寄る。


「バニラー、ちょっと寂しかったぞ~」

「よしよし、チョコえら~いです」

「キスしていいか?」

「ダメです♪」

「ちぇ~」


おいおい、ラブラブかよ。


「ユウキちゃんたちはまだですか?」


いろはちゃんがチョコに他の二人のことを聞くと、


「あの二人なら先に注文しに行ってるぞ」


と、指さしながら答える。

もう来てたんだ。


しばらくして二人が戻ってくる。

トレーの上には焼きそば、ホットドッグ、

ハンバーガーにドーナツが大量に。

どんだけ買ってるのドーナツ。


「それ二人分?」

「ううん、ドーナツは違うよ? みんな食べるかなと思って」


マロンちゃんの言葉に安心する。

まさかと思ったよ。

最近この子たち食べすぎな感じがするから……。


「むこうで選んでるといろいろ食べたくなるんだよ。

Iloveジャンクフード」


ユウキはそんなに食べれないでしょ……。


「そんなのばっかり食べてると体に悪いよ?」

「大丈夫さ、サプリメント飲んでるから。

Iloveサプリメント」


好きで飲んでるの!?

私が何とかしないと。


「マスター、私たちも行こうか」

「そうだね。いろはちゃんとバニラは何食べたい?」

「はいっ、サンドイッチがいいです。ヘルシーなもので」

「あ、じゃあ私も同じもので」


二人ともサンドイッチか、ここにあるのかな……。

あ、あった。


「じゃあ行ってくるね」


私たちは手を振って席を離れる。


「バニラに最高のサンドイッチを届けてやるぞ!」


隣でチョコがやたらと張り切っている。

ここで最高のサンドイッチは難しいよ。

今度パン屋さんとか行こうね。



サンドイッチのコーナーに着く。

思っていた以上に種類が豊富だ。

タマゴ、ハムレタス、カツ、トマト。

おぉ、イチゴホイップ……。


いろいろあるなぁ、私もサンドイッチにしようかな。


「チョコは何にする?」

「カレーが食べたいな」

「カレーもいいね、私もカレーにしようかな」


「ピザもいいな、あ、ハンバーグも」

「……」


味覚がこどもだった。


「あ、これどう? ナン風サンドイッチ。

なんとなくカレーとピザを食べた気にならない?」


ならないな、うん。

自分で言っといてなんだけど。


「いいな、さすがマスターだ」


よし、勝った。


「ククク、今度来たときにハンバーグを食べるとしよう」

「ふふ、そうだね。また来ようね」

「ああ、レストランとか行ってみたいな」

「うん、そうしよう」


チョコとの約束だ。


チョコってもっと冷めてるというか、

本心では話さない子だと思ってたけど、

なんか無邪気なこどもっぽいな。


……どこまでが本心なんだろうか。


私のことを本当に信用してくれてるのかな。

バニラに対しても本当はどう思っているのかわからない。


そして私はなんでこんなことを考えてしまってるんだろう。



私たちはいろんな種類のサンドイッチを購入し、席に戻る。


私とチョコが椅子に座ると、

いろはちゃんのひざの上でなでなでされていたバニラが、

私の隣の席に移動してくる。

チョコとバニラに挟まれる形になった。


「マスター、食べさせてくれ」

「え?」

「はぁ?」


いきなりで驚く私と、

後ろでちょっと怖い声を出したバニラ。

やめて、私のために争わないで!


とりあえずチョコが口を開けて待っているので、

先ほど買ったナン風サンドを少しちぎって、口に運ぶ。


「あむ」


口の中に入るとき、少し指が唇にふれ、ドキッとした。

やわらかいなぁ。


そして後ろから視線を感じ、振り返ると、

バニラが「ム~」とジト目でこちらを見ていた。


「ム~」


それから私の胸に頭を押し付けてグリグリしてくる。

バニラのふわふわ髪の毛が気持ちいい。

そして可愛い。

ふへ~。


「ねぇ、こいつら何やってんの?」

「三角関係で大変なんですよ」

「私たちもいるから六角関係?」

「まぁ、それはもっと大変ですね」


他三人のコソコソ話が聞こえてきた。


はぁ、モテる乙女はつらいよ。……なんてね。

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