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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
新しい世界へ
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私って今すっごく幸せだよ

世界は一度滅びかけ、新しく生まれ変わった。

そのはずなのに、私のまわりは前と同じ見慣れた景色。

結局私はいつもの日常を選んだんだ。


でも変化したこともあった。


ハノちゃんの住む世界への扉が、お風呂場の鏡から私の部屋のある廊下の奥になった。

壁に大きな姿見があって、そこがハノちゃんの家の中の鏡とつながっている。

これのおかげで、今までより気軽にハノちゃんが遊びに来るようになった。


特にいろはちゃんと仲が良く、たまに私を置いてふたりで遊びに行っている。

ちょっと寂しい。


あと大きく変わったのは、前に滅んでいるといわれた街の外。

そこには新しい世界が広がっている。

みんなの中では前から存在したことになっているけど。


私以外は記憶の書き換えがあったみたいだ。

特にあの遊園地の夜以降はほぼなかったことになっている。

世界はずっと平和だったということだ。


今度、その新しい場所に遊びに行ってみようと思う。

私が望んで生まれた世界なんだから、きっと楽園のはず。

もしかしたら、またかわいい女の子と運命の出会いをしてしまったりして。


いやいや、私にはすでに大切な人が。


「どうしたんだかなで、朝からニヤついて」


妄想で頬が緩んでしまったのをユウキに見られてしまっていた。


「いや~、みんなかわいいなって思ってさ」

「……はあ、せめて朝ごはん食べ終わってからにしなよ」

「みんなの笑顔も朝ごはんだよ」


あ、無視された。




食事を終えて自室に戻り、おでかけの準備をする。

今日はいろはちゃんとハノちゃんのふたりと本土まで遊びに行くんだ。


そして明日はユウキとマロンちゃん。

明後日はチョコとバニラとステラで、そのあとは……。

ふう、忙しい。


でも毎日が楽しい。

よし、準備完了。

いつもながらやることが少ないもので……。


時間が余ったし、ちょっとでかけようかな。

私は意識を集中させ、転移魔法を使った。


むかった先は、あの山の上の神社。

その本殿の中にひとりの女の子が住んでいる。


「あ、かなで、また来てくれたんだね」

「ルナはぼっちだから、私が会いに来ないとね」

「ひどいな~」


私とルナのあいさつはいつもこんな感じ。

ふたりでひとりみたいな関係だからか、あんまり遠慮しない。


「かなで、ちゃんと楽しい?」

「うん、楽しいよ、ルナのおかげだね」

「そんなことないよ、かなでが頑張ったんだよ」


ルナは今、なぜか女神様をやっている。

何も祀っていなかったこの神社にも、ついに神様が現れたということだ。

みんなには青月神社と呼ばれていた。


青い月、ブルームーン。

ルナこそがブルームーンストーンだったんだと、この前聞かされた。


「ルナも私のところに遊びに来ればいいのに」

「女神様がちょこちょこ離れるわけにもいかないでしょ、それに……」

「それに?」


「かなでが会いに来てくれるから、それだけでうれしいし」


かわいいな。

同じ顔だけど。


「それじゃ、また来るからね」

「うん、バイバイ」


友達とお別れするようなあいさつをして、私は自分の部屋に戻った。




本土の商店街を歩く。

人工の並木道は、もう完全に桜の花に変化していた。

通りぬける風も心地よく、歩いたまま寝てしまいそうだ。


私の前には手をつなぎながら、楽しそうに会話をするいるはちゃんとハノちゃんがいる。

ふたりとも本当に仲良しだね。

その真ん中に私も入りたい。


「ふぁ……」


小さなあくびが出る。

平和だ。

幸せってこういうものだよね~。


「かなでさ~ん、早く~!」

「置いてっちゃいますよ~!」


いつの間にか大分先の方まで進んでいるふたり。

もしかして私、寝てたかな?


「すぐ行くよ~!」


ふたりに追いつくように駆け出す。


今日も明日も明後日も。

変わらず幸せで平穏な日常が続いていく。

かわいい女の子たちと楽しい毎日を過ごす。


それが私の夢見た世界。


私って今すっごく幸せだよ。

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