#087 parientes
設定が強そうな敵が出てきてもいいよね? ということを思ったりしました。なにせRPGだっていうのにぜんぜんビッグネーム(バハムートとかクエレブレとか)が出てこないですからね。いい加減に主人公がヘタレを卒業して、仲間をいっぱい作ってくれたらガンガン強いのにチャレンジできるのですが。
どうぞ。
もちろん無敵のわけはない。しかし長いこと俺は魔法属性には無縁だったのだ。ちょっとしたエンチャントくらいに心躍ってもばちは当たらないだろう。
ざっと見渡したところ、ゴーレムが12体、ドラゴンは2体、炎の精霊は3体で三ヶ日さんとミサはドラゴンにかかりっきりだ。だとしたら精霊をぶっ倒すべきだろう。
「〈トリプルシュート〉」
三体の炎の塊は水を帯びた小石に即座に反応し、両手を胸の前で合わせて祈るようなしぐさをする。小石は精霊を射抜きダメージを与えたが、ちっとも動きがない。どういうことかと思ったが、答えはすぐに現れた。
「召喚魔法……!?」
鳥のような炎が、地面に現れた真紅の魔法陣から噴き出た。一瞬で避けたのに、体力は一割かそのくらい減っている。
獄炎鳥
ソウル種 推奨人数:15人~
炎より生まれ出でた鳥の魂。ありとあらゆる炎を操り、人の世、森や山をひとつ焼き尽くし焦土へと変える伝説の魔鳥とされている。
設定はそんなものだ。もちろん苦手属性は倒したあとじゃないと分からないし、よしんば苦手属性が分かったとても俺は今このとき以外は魔法属性とはほとんど無縁だった。他の人に伝えることはできても、俺自身がそれを活かせる機会はないと思っていいだろう。
精霊は獄炎鳥に吸収され、燃え盛る鳥の炎の勢いはいっそう増した。
「うわお…… こいつぁまずいな」
エンチャントの効果時間は不明だが、俺の使う〈ポイズンアーム〉に似ているとするとまだまだ時間は残っているだろう。パーティーのみんなのHPゲージを確認したが、みんなまだ回復が必要なさそうだ。
とりあえず属性ダメージ重視で小石を投げて投げて投げまくった。確実にゆっくりとHPは削り取られていく。とはいえ物理ダメージはゼロらしいので、水魔法の使えるなすこさんの応援が欲しいところだ。まあ、あの人はゴーレムで手いっぱいのようなので、俺だけで何とかすべきだろうか。
火にかなり強い、しかも物理が通っていないので投げ回数が減らないといううまい状況を利用し、俺はザラルダイトの投げ武器を五本ずつ順番に投げた。もともと属性付加は魔法しか効かない相手に物理で立ち向かうため、属性ダメージ偏重になるようになっている。そういうわけでかなりのダメージが稼げた。
投げ武器にしては、だ。水属性魔法を強化するような剣があって、それにエンチャントしたらこれの三倍くらいのダメージがいっきに出てくれるだろうなあ、と思っただけで涙が出てきそうになる。ちょっとばかし悲しい。
獄炎鳥が翼を大きく左右に広げ、右二本、左三本の炎を固めた真紅の矢を作り出した。
「げっ、確か魔法って」
相殺できないんじゃ。
という推測をもろに突いてきたのか、矢は軌跡すら見えないほどの速度で迫る。解析スキルを使っているのに間に合わないのが、魔法の遠距離攻撃だ。追尾性能のない単純直線攻撃がいちばん痛い。手袋で守っている少し上の手首に、どず、と真っ赤な穴が開いた。
「っぐ、あ……」
すぐに〈ヒール〉で回復し、次の矢はなんとかかわすことができた。三本目の矢は脇腹をかすめて振り向いたところにあった岩を真っ赤に赤熱させる。四本目の矢と五本目の矢は、追尾性能のなさと限界まで集中したこともあって回避に成功した。
炎が風を吸い込む音なのか、それとも威嚇している声なのかは分からないが、ゴウゴウと燃え盛る鳥は轟音を発し続けている。こちらを睨むように、炎に埋もれた紅玉がぎろりと動いて、鳥は一声ゴウと鳴いた。
戦いの衝撃音があちこちで聞こえる。鋭い金属の音はもちろんミサと三ヶ日さんのものだろうし、どごん、ずんと地面を揺さぶるような響きは硬度7.8さんの土魔法だろう。俺も負けじと投げナイフとピックと鉄ではない鉄球を投げまくる。切断も打撃も、刺突も斬撃も効かないらしく大したダメージはないが、積み重ねこそが相手を倒すのだ。普段大事に取り扱っているソーピックが、今回ばかりは刺さって残る体がない相手なので無用の長物と化してしまっている。そうなればただ投げるだけだが。
にしても、一本だけ残っていた銀の投げナイフが一瞬でぐにゅぐにゅの「銀のくず」になってしまったので獄炎鳥の温度は1000度をはるかに超えているらしい。ここまで来るとどうしてフェニックスじゃなかったんだろうかとか言いたいところだが、不死鳥ともなると死なないからイベント限定になるのか。というかそんなレジェンドな敵はこれまで出てきていないようにも思える。
突進した炎を回避したが、やはり熱すぎて範囲ダメージが残るようだ。と思って通り過ぎた尻にどかどか投げ武器をぶち込むとそれなりに大きなダメージがあった。
回収に少しでも手間取ったらそれで負けだ。それはいつものことなのだが、今回は特にそれが大きい。炎だけの敵に対しては投げ回数は減りようがないので、投げ回数を気にせずに戦える。だが洞窟の壁に当たったら投げ回数は減るだろう。投げ回数が減るのは毎度のことだし何でもないことだが、修理が面倒なのは事実だ。おまけに一定以上のスペックがある金属じゃないと溶かされる。
「一体終わったよ!」
ミサの報告も、みんなを鼓舞している。ドラゴンをこの速さで倒すとはさすがだ。今度ちょっと禁句にも近いが防御関係のスキルをどれだけ持っているのか聞いてみたいところですらある。まず盾を持っているから盾スキル、それから体術は初期から持っているはずだ。あれのせいでキックが強力になっているのは明白だった。すると、移動がもっと楽になる「軽業」だとかも持っているのだろうか。何にせよ派生機能をかなり活用しているんだろう。未だ選んでいなかったりいまいち活用できていない俺とは大違いだ。
炎を避けながら、そう考えた。
解析スキルの派生機能にはいろいろなものがあり、いま持っている「視界マーカー」と「魔力視覚化」はそのうちでも特に役立ちそうなものだ。選択したものを視界の中に少し色を変えて表示できるものと、魔力の集まり具合からモンスターやプレイヤーのいる場所とその危険度を把握できる。
「……あ」
俺はけっこう重大なことを忘れていた。
投げ武器スキルの派生機能に「回転投げ」というものがある。あれは当たった場所にかなり強い切断属性のダメージが入るのだが、地味な特典としてわずかだけまとう属性の効力が上がるのだ。毒や麻痺なんかを入れるときにはお世話になっている。
セットでいつまでも飛び続けダメージを生み出し続ける〈ベイグラントスロウ〉のことも思い出したが、あれは広いとはいえでたらめな場所に飛んでいくので、あんまり使えない特技だった。あれはやめておこう。
フェニックスにも似た炎の塊には、いったいどういう状態異常が効くだろうか。
そう考える前に俺はとりあえずザラルダイトの投げナイフを回転投げした。ちょっぴり手首のスナップを利かせて投げればすぐに回転してくれる。おまけにダメージもわずかずつではあるが、累計としては格段に上がるのだ。そうこうしているうちにかなりのハイペースで相手の体力は減り、半分を切った。
ちょっとよそ見すると、だいぶ敵の数は減っている。俺が役に立てそうな相手はろくにいないのだが、どれも物理特化の俺には嫌な相手ばかりだということは間違いなかった。なにせ剣と魔法という世界観にけんかを売っているようなダンジョンなのだ。それに準じたダメージを与えることしかできないような俺がそこに放り出されたら、当然めたくそにひどい目に遭うに決まっている。
まあないものねだりをすることもない、みんなあるものできるものだけで頑張っているんだろう。もしくは打撃武器を持っている野良の星ががんがんレベルアップしているかもしれない。俺の知ったことじゃないが。
「お姉ちゃん、いける!?」
「大丈夫だ、ドラゴン頼む!」
どうやらドラゴンはすでに危険域に達し、倒せる寸前らしい。
俺も獄炎鳥にかかりっきりになっている場合ではない。あの腕は確実に「魔神の腕」でこののちに戦うことになるだろうからだ。柱に見えるが、あれが作動したらどれほど危険なものになるか想像もできない…… とも思ったが、大丈夫なんだろうか。
「ビュアアアアッ!!」
獄炎鳥が口を開け、耳をつんざく凄まじい怒号を放つ。そして残った三割の体力を一割減らし、無数の炎の矢を生み出した。
「な、んだとっ、みんな避けろ!」
即座に反応した全員が、しっかりと炎の矢を見て回避する。盾の表面に弾けるかと思われた矢は、爆発したように激しく燃え上がり、ミサに少しのダメージを与えた。なすこさんが水魔法をぶっ放し、俺もそろそろ効果が切れかけの〈ウォーターアーム〉をフルに活用して投げて回収するスピードを上げられるだけ上げる。
ミサの〈アビスフォール〉が炸裂した瞬間、炎は大爆発した。
「くそっ、こんなめちゃくちゃな敵が……」
回避の難しい攻撃に、死ぬときの自爆。RPGではありがちだが、これがVRともなるとなかなかに悪質だ。そもそも体を動かして攻撃を避けるのだから、見えないとか予測できないものは格段に回避が難しい。
「お姉ちゃん、強敵引き受けてくれてありがとね。他はだいたい終わりかけ」
「やっぱ強敵なんだな、あれ」
強いと言えば強い。俺以外が戦ったらけっこう早く倒せるんじゃないかと思ったが、この布陣と人数だと水魔法使いを後衛に置いても前衛と中衛がガタガタになるな。ということは回避のうまい水属性使いがいたらかなり早く終わった可能性がある。
「あとはゴーレム二体とドラゴンの残り一体だよ」
素手のゴーレムと棍棒を握ったゴーレムがそれぞれいて、残り体力は半分より少し少ないくらいだ。ドラゴンは残り体力三割くらいではあるが、物理攻撃はあまり効いていないので魔法をぶつけるべきだろう。
ゴーレムはというとこちらには魔法があまり効かないらしい。
「コードさん、ゴーレム倒すの手伝います!」
「助かります。攻撃を止めてくれますか」
「分かりました」
棍棒はハンマー系の武器だ。ということはぜんぜん見たこともない特技がヴォンヴォンと連続で繰り出されることになる。単発の特技でもかなり怖い。
「来ます!」
燃えるような亀裂の入ったゴーレムは、ぎゅるり、と岩が砕けた形を利用したような形の棍棒を腹に押し当てるように振りかぶる。単発だろうと連撃だろうと、これが危険極まるものということは確かだ。
「〈ピアースシュート〉」
貫通するのは攻撃ではなく威力だ。ドウン、と太鼓をたたいたような音と共に威力が放射状に浸透し、俺の狙った腕の関節に中くらいのダメージを与えた。打撃属性はそれなりに有効だったらしく、相手は棍棒を取り落とす。
彼方へとぶっ飛ばそうというような拳を横へジャンプして避け、亀裂を狙って投げナイフをザクザクと突き込む。たまたま予想通りにそこは弱点だったようで、ついでになすこさんのみぞれ交じりの水弾がヒットして武器を持たない方のゴーレムは瀕死になった。ゴーレム種共通の弱点である紋章は見えないが、次点でダメージの大きい目に鉄球を投げつけてぶち割り、素手の方は倒れる。
「あの棍棒、振り回した瞬間に割れそうだよな……」
「何かにぶつかったら砕けるでしょうね」
基本的に土属性が得意なゴーレムは、硬度7.8さんとは相性が悪い。あの棍棒も岩なので広義の土そのものだ。赤い亀裂として火属性を含んでいるから水や氷に弱いのは分かっているが、なすこさんのMPはそろそろ危ないくらいに差し掛かっている。
「目は狙えますか、コードさん」
「ええ、土属性はわりに万能ですから」
ゴゴウ、と洞窟の土が一部だけ盛り上がり空中へと浮かび上がる。
「〈ロックシュート〉」
念動力のように岩が驚くべき速度で飛んでいき、ルビーのような敵の単眼に当たると同時に衝撃のあまり炸裂してしまった。相手の体力は、相性が悪そうに見えたのにもかかわらずかなり減る。
「〈アイアン・マッシャー〉!」
ビュオン、と正直微妙な威力しかないアリアル鉱石の鉄球がすっ飛んでいき、単眼を砕いた。部位破壊のダメージボーナスか、相手はくずおれて光へと変わり、倒れる。
どろどろどろと地面が鳴り、気温が上がる。支援魔法の〈クール・ダウン〉でも防ぎきれないほどの熱さで、俺たちの体力が着実に減っていく。
「お姉ちゃん、あれ!」
「あ、腕が……」
柱のように鎮座していた腕が、少しずつ岩のような色から、赤黒い色に炎のような色のラインが入った魔神らしいそれへと変わっていった。魔神の足が重油みたいな色で何を示すのか分かりにくいものだったのとは違い、これは明らかに「炎」の腕だ。全員のMPも減っているしHPも万全には程遠い状態になっている。
「くそ、これじゃ無理だぞ」
「あれ、向かってこないよ?」
見上げたら首の関節が外れそうなばかでかい腕は、空中に浮かんではいるが、こちらに向かうようなそぶりはない。そしてそのまま、瞬間移動したかのように消えてしまった。
ゲーム的に優しい世界。
どこかのレーベルにぶん投げるために書いた作品を、いまだに投稿できていません。ぼろくそになるのが怖くっていかん。私はまだまだ心が弱いようですね。
兄弟と話していて「電撃文庫に投稿される半分はゴミカスで残り四割が基本、一割が「売れるやつ」だろう」ということを言っていました。実際にそうなのかは不明としても「俺でも賞を取れる」といって黒歴史になるやつが半分の中に混じっていたり、売れるやつからガチで売れるものを探すのが一苦労だったりなんだろうなあ。知りませんが。




