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Aurum Online [Shooter]  作者: 亜空間会話(以下略)
第五章 Señorita
120/120

#120 Quédate con el resplandor

 今回はゲーム内での通知&特殊クエストをこなすと見られるイベントムービー、もしくはpvということになっています。つまり一話使った次回予告みたいなもの。


 亜空間なアタマをフル稼働した最終話、お楽しみください。

 ――きっと、世界は今日で終わるだろう。


 白くてつるつるした卵のようなものが、街を食んでいく……いや、もっと概念的なものを咀嚼している。ゴリ、ボリと音を立てて削れていくものは、認識をも含む空間そのものだ。


 最後に残ったこの街「エイルン」は、陥落した。


 今という今、この期に及んでまだ「絶望」という言葉を使えるものならば、ぜひともそうしたいところだった。


 ファリアーには力がなかった。イニエクスは内輪揉めに腐心して隙を作った。ベルティベルクは戦いから逃げた。アリア・ルマは術式を制御しきれず自滅し、イリジオスは自らの命を捨て去った。


 そして、ダルムディオとテ・ルォーマは――「あれ」自身の手で滅ぼされた。


 ありとあらゆる希望は摘まれ、潰され、踏みにじられた。なお「あれ」に立ち向かおうとするのは、折れない者たち……否、折れられない者たち。


「貴様の魂に覚えがある。貴様がこの我の前に立つのは、これが二度目だ」


 数十人に同時に話しかけているようでもあり、誰も見ていないようでもある。彼らが構えを取っても、それはけだるげかつ鷹揚に、とくに脅威を覚えるでもなく浮遊していた。


「折れたと思っていたのだがな。生まれ変わってまでこの我の前に現れるとは、なかなかの気概――何度でも来るがいい、ちょうどいい暇つぶしにもなる」


 それ(・・)は神殿のように見えた。


「貴様らの力はただの残りかす……力という力はここに集めてある。どれだけ集め、育てようとも貴様らは有限。その命も、力も。幾度この我の前に立とうとも、魂の一片まで砕き散らしてくれようぞ」


 戦いの行く末は見えている。しかし、それでも立ち止まるものはいない。


「避け得ぬ死に踏み込みながら、まだそのような目をしているのか。――貴様らはいずれまたこの我の前に現れよう。湧いた情も、こうしつこければ覚めようというもの。次に現れたときこそ、その魂を生まれ変わりもせぬよう消滅させてやろう」


 声は笑っていた。そして――




 砕かれた大地と古城、無数の木々と結晶体、止まった魔法や傷付いた武具の数々――それらが浮かぶ茫洋とした空間は、何よりも雄弁に敗北を語っている。錆びに覆われた巨大なゴーレムの掌に、青く輝く球体が設置されていた。


「転移の術……残したところで意味があろうとは思われぬがな」


 高さにして四十メートルはあろうかというゴーレムは、その核となって戦っていた魂を破壊されて死んだ。死屍累々という言葉すら生ぬるい暴虐の痕は、世界の法則に従って死を光の粒に変えていく。


「楽しみに待つとしよう……この我が再び力を振るうそのときを」


 空間がくるりと丸く反転して、閉じる。


 そこには――城のない街があった。






 地図をはしる光の線、それは奇跡。


 ふたつの国を治めた、もっとも凄まじき龍王の居城であった「レスティオ城」。警備と研究が並行して行われた「セルベート要塞」。もっとも恐るべきものを封印した「無限監獄」。五本の大樹を祀る国を擁く「セレティシアの深き森」。


 光は地図を突き抜け、反転した地図の中に輝きを見つけ出す。


 いたるところから鉱石が突き出し、気にもせずに家から水晶が生える街「真晶都ドブル・ベルグ」。濃霧に覆われた、怪虫の跋扈する「夢毒ヴェルネミオン」。地下水の湖に、水草と灯り石を水中に浮かべて作られた町「ゼ=イルナ」。海に生きるものに広く門戸を開く「エムロバルト大海宮」。


 光は唐突に消滅――否、空間を跳躍する。


 空に浮かぶ風魚の城塞「ペロートニクス」、その上部に雲に紛れて張り巡らされた糸の世界「エリクティロ・クレトケティア」。武を尊ぶ山間の村々「フゼ=トユ山脈」。墜落した人工天体を解体した「機形跡フォルデンクリス」。


 そして――無明の空間に死屍累々を浮かべる「永久の無空ゼクル=リスタ」。その空間が閉じたそのとき、そこにあるのは「城のない街」……プレイヤーならば誰もが知っている場所、エイルンだった。


「運命は導く……貴様らは再びこの我の前に立つであろうな。滅ぼした姿か、砕き散らした姿か、あるいは新たなる姿か――いずれにせよ魂は同じ、見ればわかること」


 虚空から、城のない街に低く重い声が響く。


「貴様らは焦りすぎたのだ。我が砕いた力を集めることもせずに、その身のみを信じてやってきた……それにしては楽しめたがな」


 フフフフ……、と重い声は消え、空は明るく広がる。


 世界は平和を取り戻している、そのようにも見える。それは違う――眠るもの、隠れるもの、喰らうもの、そこにあるもの、備えるもの。彼ら「名もなき者」は、導かれしものの来るときを待っている。


 空は青い。


 しかし、空が暗雲に覆われ、赤く染まる日は近付いていた。



 ◇



 アウルムオンライン・大型アップデートのお知らせ


 日頃のご愛顧をいただき、誠にありがとうございます。AOGの運営する「アウルムオンライン」が、8月31日をもって運営方針の大きな切り替えをさせていただきますことをここにお知らせいたします。具体的事項については、下記に箇条書きしてございますので、そちらをご覧ください。

 なお、運営方針が変わってもキャラクターデータに変更点はありません。引き続きゲームをお楽しみください。



・内部時間・現実時間比の十倍化


・モンスター種族の実装


・新拠点・新エネミーの実装


・隠しステータスの一部可視化


・キャラクターデータ枠の増加




※新しいキャラクターデータを作成し、モンスター種族に設定した場合、初期拠点は種族ごとのものになります。ご了承ください。


※モンスター種族を選択する場合は、ナビゲートキャラクターの注意をよく聞き、ヘルプサービスを必ず受けてください。


※キャラクターデータを統合する際、イベントが発生することがあります(イベントを受諾するかどうかは選択できます)。

 投稿開始が2015年、そんで一年のブランクあり。こんな作品を読んでいただいて、本当にありがとうございました。一番人気の作品を一年ほっとくとか狂っとるわ……ちょっとしたスランプみたいなものかなと思いきやほかの作品は元気だったりして、擁護しようがない。長くお付き合いいただきましたこと、頭のおかしい(とくに四章)作品をこうして読んでいただけたこと、感謝しようにも伝える言葉が思いつきません。


 とか言ってるけど、完結したんじゃなくて路線変更するからタグ付け替えのために作品を新しく作るだけです、終わってなくてすいません。機械娘とか人外とかいっぱい出すために作品内のセリフをこじつけてみたりアップデートとかやってみたり……自分勝手にしか作品を書けないのはさておき、中学生だった頃の卒業文集に書いた「僕は先の見通しができないらしい」という性格は変わってませんね。作品のプロットは全部できていて、人外要素入れてもとくに揺るぎもしないところは自画自賛していいんでしょうけど……手が遅いッ!! こちらをサボって書いてたグレイブもまだ半分くらいですし。


 あとがきの次回予告は……まあ、次の話を投稿したときにあらすじがあるから、そっちでいいか。アウルムは人をもぐもぐしたりやべーボスが湧いたりしない普通のゲームなので、真面目に攻略していくだけ&ちょっくらラブコメしたりサイコホラーしたりするだけのお話になりそうです。五十話から百話連続投稿したいので、この完結から数か月または数年投稿できないと思います……いつものコイツだと思って、なろうスコップしたりしながらお待ちいただければ幸いです。


 それではまた、次の機会に命があればお会いしましょう。

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