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Aurum Online [Shooter]  作者: 亜空間会話(以下略)
第五章 Señorita
115/120

#115 Trabajo colaborativo

 あの「電脳戦姫エンジェルフォース」2巻が発売されてたァ! 出たらすぐ読むって決めてたんですが、ここしばらく本屋に行けなくて死んでたんで……。嬉しかったんですが、第一部完って言われるとちょっと「あっ(察し)」な感じが。でもやっぱ、作者の趣味全開っていいですよね、全開すぎてもはや面白かった。レンカちゃん髪型変わった……?


 グレイブをがんばってみたり、セロノを諦め気味だったりと執筆過剰な毎日を過ごしつつ、仮面ライダーの視聴は欠かさず。ダブル見なきゃ……あ、どうぞ。

 とてもいい食事が終わって、俺たちは部屋に行くことになった。


「おいしかったですね、とても」

「ええ。絶品でした」


 だいたい野菜と魚介で作ってあったので、ボリュームもそこそこあるのに胃もたれしない優秀な料理たちだった。魚介類があんまり流通してないのはヘルシー志向の上流階級が全部食ってるからじゃないかってくらい、魚介率が高い。


 あ、そこの貴族のお嬢様、「はわわわ……!」みたいな目で見るのやめて、何もしないから! などと心の中でコメントしているが、セーフティがあるんだからやりようがない。どっちの心のセーフティが先に壊れるか勝負なんてこともしない……しない、絶対。


 手を引かれるでもないのに、ぴったりと同じ距離を保っている。お互いに緊張しすぎて、そういうふうになっているのかもしれなかった。王宮の私室のような場所についても、なんだか距離が離れたままだ。


「ここです」

「ええ……」


 演技が剥がれない――緊張しすぎているせいだろうか。


「あなたの好みはあまりよく分かりませんでしたから、オーソドックスな部屋にしておきました。どうです、ここは」

「とてもいいですわ。寝間着に着替えましょう?」


 白い寝間着をさっと装備して、ベッドに座る。リセイが固まっているので、手招きして横に座らせ……来ないな。


「どうかしたんですの?」

「いえ、あの……綺麗ですよ」


 わりと我慢の限界だったのか、俺の横に座ったはいいが動かなくなってしまった。


「演技って大変です……」

「落ち着くまで座っていましょう。ね?」


 とりあえず落ち着かせるのが先決だろう。何かするつもりだったのかもしれないしそれ以外かもしれないが、隣にいるとそれだけで落ち着く気がする。落ち着いてくれるかどうかは運任せというか、ちょっと難しそうな気はするが。


「演技は疲れますけれど……ほかに原因があるのではなくて?」

「う、実はそうなんです」


 ひざまくらでもしましょうかと言うと「お言葉に甘えて」とか言い出した。本気で大丈夫かこいつ。こいつはもうちょっと幻惑とか誘惑とかするタイプで、俺を好き勝手に翻弄するキャラのはずだ……こいつらしくない。


「寂しかったんですよ?」

「あら、それは――」


「学校じゃいつも一緒なのに、いざゲームに入ったらどこにいるかもわからないし。もっといちゃいちゃする予定があったのに、総崩れじゃないですか」

「そのぶん、ここで一緒にいるじゃありませんか」


 まあ、言いたいことは分かる。


 かなり強いリセイがいっしょにいたらクエスト攻略が楽だったとか思いもするし、ミサとの確執が起こるにしても、俺はリセイと一緒にいたかったと思う。むしろそういうトラブルがごちゃごちゃしてこその俺たちなんじゃないかな、なんて思ったりもした。


「食事もして、一緒に寝て。これ以上何を望むことがありますの?」

「……それは、そうですけど」


 猫の手でほおをなでながら、反対の手で肩を持って姿勢を起こさせる。しなだれかかってみると、リセイは腰に手を回す。


「こうしているだけでも、幸せではありませんこと?」

「も、もう……。あれこれ思ってても、いざやるとなると緊張しちゃうし……男同士だったりしたらどうしようって思うじゃないですか」


「……それは困りますけど。うまい具合になりましたわね」

「そうですね、このままあなたを抱いても――」


 レーティング警告が無慈悲に鳴った。うん、知ってる。


「こほん。では抱き枕になってもらいましょう」

「わ、分かりましたわ」


 ミサも同じことをしていたが……交際している男女が抱き合って寝るっていうのは実際のところどうなんでしょうか、不埒じゃありませんかね……なんて思考が一瞬だけ脳裡にひらめくが、俺はそれを殴り飛ばして封印した。


 リセイも楽そうな寝間着に着替えて、ややぎごちなく、ころんと寝転がる。かなり緊張しつつも、俺もそのすぐ横に座った。わざわざ女の子座りなんてやったのは、もう少しは演技を続けようという宣言だ。


「こうして寝るのは初めてかしら」

「誰かと一緒に寝るのは、小さいころ以来ですね」


 まあ、俺もミサの介入がなければそうだったんだと思う。いやなことを思い出してもいないのに夜泣きする俺たちに、母さんは読み聞かせをしたり優しくなでたり、いっしょにいてくれた。児童虐待なんて言葉を知った今なら、捨てられたなりに親の責任だったんだと思うこともできる。ただ、あのころは本当に漠然とした不安が終わらなくて、どうして怖いのかと考えることもできなかった。


「いつかこうやって寝るんでしょう? 予行演習のようなものですわ」

「かわいい冗談を言っても笑いませんよ、もう」


 冗談……まあ冗談なのだが、実現しかねないのでもうちょっと聞いてくれると思っていた。一緒にいるという言葉がどのくらい続くべきなのか、学生の俺にはさっぱりだが――少なくとも、簡単に裏切ることはできない。俺はそういう人間だし、リセイだって軽くあることを許されない。


「ほら、こっちに来てください。抱き枕ですよ」

「ええ、分かってますわ」


 にじり寄って、上にどすんと乗る。ぶぎゅぃ、みたいな声を出したがご愛敬……聞かなかったことにしておこう。


「うーん、やわらかいです……」

「万感を込めて――みたいなコメントがそれですか」


 うん、やわらかいからしょうがない。


 背中に手を回されて、胸がぷにゃんと潰れていて……おなかの下あたりとか、耳あたりがちょっとだけくっついている。足をからませてみたが、とくに抵抗とかはなかった。


「あったかい……」

「どうしたんですか、ゼルムさん」


 自分から手を回して、お互い横になってから抱き締めあって、そのあたたかさに気付いた。自分でもよく分からないが、この瞬間がとてもあたたかかった。どうしてもどうにもならないことが、いまようやく埋まったような――。


「このまま、寝てしまうまで抱き締めていてくれますか?」

「とってもヒロインらしいセリフなので、オッケーです」


 何を感じているのか、いまこの状況がどういうものなのかという現状認識までゆるやかに溶けていく。ふんわりとあたたかい、抱き締めている手のやさしさに溺れて、俺はそのままくったりと眠ってしまった。




 夢を見た――もっとも、それを夢と呼ぶべきだったのかどうかは分からない。ふたりで寄り添って楽しく語らっている夢は……ただの日常、あるいは未来にも思えた。それを本当にしたいと思いながら肩を寄せ合った瞬間に――意識がふんわりと起きる。


「んぇう……」


 あたたかい――そう思って、素直に抱きつく。優しく抱き返してくれる腕が肩をなでて、二の腕をぽんぽんと弱めに叩く。


「朝ですよ、ゼルムさん」

「にぇい……」


 聞き覚えのある声だなぁ……というおぼろげな思考が、目をわずかながら開かせる。


「寝ぼけ方はかわいいんですけどね……」

「あ、すまん」


 起きましたね、とリセイは苦笑した。


「俺ってあのあとなんかやったっけ?」

「それはもう暑い夜を過ごしましたよ」


「いや嘘だろ?」

「ぎゅっとしてるのがちょっと暑かったです」


 そういう意味かよ。


「気温はそこまででもなかったんですけど……好きな人をぎゅっとして寝るの、すごくいいですねー……もう一度、こんなふうに寝てみたいです」

「もう七日目だ、午後で時間合わせが入って終わるんだろ?」


「うぁああ……もっと早く合流していればぁ……」


 こいつがこんなにムキになるのはなかなか珍しい気がする。まあ「女子の本気」なんて言葉を聞いたことがあるから、どうしても譲れないこともあるんだろうけど。


「まあなんだ……それまで存分に、な?」

「そうですね! そうしましょう」


 こいつちょろいなと思いつつ、デートらしいデートもできそうにないのを思い出した。イベント最終日ということもあってだいたいのデートコースは昨日から人で埋まっているし、狩りに行こうにも投げ武器はかなり損耗してしまっている。


「なあ、リセイ……いっしょに生産しようとか言ったら怒るか?」

「いえいえ。構いませんよ……むしろ大歓迎です」


 そういやこいつ、俺が何か作ってるときも楽しそうに見ていた気がする。いっしょにいるというところで嬉しそうにしているんだと思っていたが、作っているところを見るのが好き、なんてこともあるのかもしれない。


「じゃ、ホール行こうぜ」




 時間レンタルで生産し放題、だいたいの生産ギルドみたいに「場所はあるけど、作ったもののうちギルドに収めるものは決めといて」みたいな決まりもないのが貸し金床だ。


 戦闘ギルドとかパーティーが「○○みたいなものが欲しい」という注文とか要望を出して、仕事を受けたギルドがやれる人にノルマとして出したり、やりたい人がやったりというのが通常の仕事らしい。個人からの依頼のつなぎにしたり、露店時代からの関係の持越しもけっこうある。……無所属だと売りっぱなし買いっぱなしだが。


「最近、あの着彩ってどうなんだ」

「付与できる効果も増えてきましたよ。扱える色のランクも上がりました」


 あまり聞かない「着彩」スキルを使っている人はリセイしか知らない。効果を詳しく聞いたところで、スキルホルダーはあんまし開いていないので取らないが……聞いておいて損はしないし、どういう着彩をしてほしいとか相談するにも役に立つだろう。


「装備を作るなら、着彩しやすいのは小刀の鞘とかですかね」

「それはやりやすそうだな。ほかには?」


 いちおう「錬成」スキルを取って、武器にも絵の具をなじませることで何でもできるようになってはいるらしい。ただ、制限は多い――ということだった。


「スキルレベルによって、絵の具が占領しちゃえる面積には決まりがあるんです。試しながらやってたのでわりと上がってはいるんですけどね……」


 なるほど、いいことを聞いた。


「防具を着彩すると効果が薄く広がってしまったり、武器にも紋様にして入れると「紋様破壊」ができるようになったりなんです」

「デメリットはいいんだ。俺は投げ武器に着彩するってのができるかどうか知りたい」


「あれほど激しい使い方をするものに着彩するのは、お勧めできませんよ?」

「できるならやってほしいんだ。――「投げ槍」を完成させたい」


 投げ武器にもいろいろある。等級が一番低い投げナイフ、投げ針(ピック)や丸球なんてものを作るのはたやすいうえ、単一素材でも作れる。鋸歯蝕刃(ソーピック)になると要求素材が増えてきたり、ボーラなんかだと完全に別のものをくっつける必要がある。


 投げ槍を作る工程は、槍を作る工程と同じだった。投げる動きに特化し、貫通力だけを最大に高めた消費アイテムとしての槍――それが投げ槍だ。


「やろうぜ、リセイ。一度こういうのがやってみたかったんだ」

「ふっふっふ、いいでしょう。挑戦、承りました」


 なんか違う気がするが……まあ、いい。


「試作品を超える……俺だけじゃできないものを作るんだ」

 女の子が落とそうと迫ってきて「二人の初めての共同作業だね!」みたいなのをリアルに言われたことがあります。男の方が言うのはおかしいんですが「友達だと思ってたのに……」と心が濁るレベルのショックを受けて、友達以上にはならないと思うよ、というお断りをしてしまいました。明るい人だったから、相手くらいすぐに見つかるよね……。色白の人にはトラウマがあるから……ほんと、あのクソどもさえいなければ。


 アウルムの方針転換についての説明とか入れなきゃいけないんだよね……どうすっか。

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