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Aurum Online [Shooter]  作者: 亜空間会話(以下略)
第一章 ヴァーチャル事始め
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#001 阿喰居

(2019/03/31)

 ちょっと序盤のガバガバすぎるところを「ツッコミどころ満載やんけ」と言っていただける機会があったので、修正しました。そうだよね、一話から何やってんのこの作者って思うよね。あとワンステップ理解力がない感じでしたが、すごくいい感想をいただいて嬉しかったです。


 リニューアルして(原型はあるし話は変わってないが)お届けします、どうぞ。

 俺は伊吹俊御、十五歳だ。ただの中学三年生だが、十五だからってなめんな、というくらいの気概はある。まあまあ、ネット弁慶でいきがってはいるが、普通のオタクだと思ってほしい。


 機械が高すぎて金持ち中の金持ち、上流階級とか運の良かったやつにしか遊べないヴァーチャルリアリティーを駆使したVRMMOってジャンルのゲームが、一般に頒布されると聞いた時はそりゃ驚いたもんだし、ゲーム会社正気かと思ったものだ。


 うん、結論から言う、正気だ。


 そもそもヴァーチャルリアリティーのゲームを作ってるアウルムオンラインゲームスが尋常じゃないほどの作りこみをしていることは、前々からAOGのファンだった俺も良く知っていることだ。狂気的な作り込みを正気だと思うなら、ちっとも疑問じゃない。


 だが全身の感覚をカットアウトし、脳に擬似電気信号を流しこんで感覚の再現を行い、んで脳から発信された電気信号を脊髄じゃなくてゲーム機に送り、それでゲームの操作を行うなんてことを行うでっかい機械は、死ぬほど高かった。おかねもちなんて表現じゃ足りないくらいのアホかってほど金持ちのやつにしか買えない、維持できない金額だ。


 手入れにいる金もある、電気代も高い、そもそも使ってる部品がバカ高い、この三拍子が揃ってしまって、負けてもらっても一千万円ほどはするのだから、まあ買えない。電気代は、買ったやつのブログを見ると、先月の三倍に跳ね上がったとか言っていた。あと、そもそもは医療用だった、脳から発信された電気信号を解析し、それを機械の操作に役立てる装置が高価なんだそうだ。医療用だし、義肢の操作に需要ありまくりだから高騰しまくっている。


 だから俺は狂喜乱舞した。当時の発狂っぷりはドン引きしてた妹に聞いてくれたらよく分かるはずだ。 ……とか言って妹の分までゲーム機を買ってるのは内緒な。


 なんでも、大量に頒布することもできるようになったのは、あの値段ですら注文が相次ぎ、安くしても需要が減らないことが確信できたからだと言う。そりゃそうだ。今までそんなことも分かってなかった、ということではなくて、AOGは慎重だったんだろう。


 しかし高めのパソコン程度の十万にまで落とし込まれると、ガキまで入ってくるかもしれないな。いい子供だったらいいのだが、クソガキは手に余るし地雷だ。


 ……うん、ここに至るまでいろいろあったし、ああいう痛い経験をするのはごめんだ。オタクは体力があるなどというが、どこかへ行ったりほかを削ってまで金を出す力のことであって、ああいう意味じゃない。


 そっちは置いといて――肝心のVRIDを見てみよう。


 大きめのヘルメットみたいな感じで、寝て使うのが前提になっているせいか、後頭部の部分がかなりデカい。目を半分ほど隠す前の部分には目を閉じたことを確認するカメラがあるとか、後ろのデカい部分にはいちばん重要な部品が入っているものの、見える部分のほとんどは枕だとか、あれこれ言われている。横の部分には企業のロゴがいくつか入っていて、そのひとつに近未来的で電子基板みたいな「AOG」もあった。


 そしてけっこう重い。座って使える疑似VR機器とは違って、体の方の意識がまるでなくなるから、やっぱり寝ているのが前提になる。そのぶん「椅子に座って、首で支える」ということが想定されないので、重量化もある程度までなら許容されるようになっているのだろう。……まあ、ひどく重いわけではないが。


 説明書には各部の機能も書かれているが――目が滑るというか、あんまり興味ないジャンルだからか、説明されてもわからない感じだ。ちょっと読んで分かったのは、首の後ろの部分に意識接続装置があることと、横の固い部分は驚いたことにメモリだということだった。販売に関わっていた……んだったか、父さんなら詳しく教えてくれるだろうか。もしかしたら知らないかもしれないけど。




 そのうちに妹の美沙が来て「あれ、まだダイブ・インしてなかったの?」と言った。


「ちょっと目で楽しんでる段階だ」

「私のぶんまだ使ってないし、早く認証しようよ……というか、何があったの?」


 ちょこっと事情があって俺の手から離れていたVRIDがようやく戻ってきたから、こうやって眺めていた――というのがさっきの状態だ。


 治安の悪いところでもないのに、VRIDはクソみたいなのにひったくりみたいな形で取られてケガもした。たかがゲーム機のために何をやってるんだと言いたいところだが、初日に手に入ったうえに何か別の目的があるとかいう説もあったので、非合法でも欲しいやつがいたのかもしれない。


 ふたつ買ってきたデバイスはひとつしか残らなかったから、見栄を張って妹に渡したが……GPSがついているでもなく、個人認証を済ませているものでもいったいどうなったのか正確にはつかめない。俺のぶんが一体どうなったのかは数日間不明だった。よほど、父さんに買ってもらおうかと思ったくらいだ。


 ――が、なんだかよく分からないところから箱に入って戻ってきた。「なんだかよく分からない」というのはそのままで、店の名前も俺が知っている漢字がなかったし何をやっているのかもさっぱりだ。


 というところまで説明したが、美沙は毛ほども興味なさそうだった。なんかこういうところが冷淡なんだよな、こいつ。玉に瑕ってのはここだ。


「ふーん、お兄ちゃんも苦労するんだねー。んじゃ、認証しよ」

「してなかったのか?」


 さっきも言ったとは思うが、ほんとにしてないとは思わなかった。


「ん、帰ってくるならお兄ちゃんに一緒にしてもらうし、帰って来なかったら、お兄ちゃんがもともとやりたがってたから、渡すつもりだったよ」


 お、おお…… 何という優しい妹。


「いもうとよおおお!」

「うざい」


 即座に俺を撃沈し、楽な格好で部屋に向かった。おい、連れてくつもりか?


「きたねえ部屋だ……」

「そっちが殺風景すぎるんでしょ」


 実際汚いから。引くレベルだからな、妹よ。


「楽な格好で、だったよね?」

「おう。んじゃ横たわって」


 横になった妹がヘルメットの側面にぴったりと手のひらを当てる。これが指紋と掌紋の認証だ。一応体の状況のスキャン、脳波のスキャンもあり、これでヴァーチャルの環境に適応できない体だと分かれば警報が出る。


「あ、ダイブ・インできるって。お兄ちゃんは認証したんでしょ?」

「ああ、店でな」


「どうせアウルムオンラインやるんでしょ? お兄ちゃんはダウンロードかソフト購入かどっちなの?」

「確かダウンロードが無料になってたから、ダウンロードだな」


「んじゃ、最初にいるところで落ち合おうよ」

「いいな。んじゃ俺も部屋でインする」


 俺もトイレに行ってから部屋に戻ってヘルメットをかぶり、ダイブ・イン前の簡単な認証を一瞬でクリアしてから適当なアバター、焼き芋を選んで仮想空間に入る。


『ダウンロード、ダウンロード……』


 コンソールからダウンロードを選ぶと、あなたにはソフト一本を無料ダウンロードする権利があります、権利を行使しますか? なんて堅っ苦しい文章があったから、速攻でイエスを押す。


 もちろんダウンロードでアウルムオンライン。アウルムというのはラテン語で黄金だったと思うが、それとオンラインをくっつけるところ、どういうセンスなんだろうか。


 三分ほどのオープニングをたっぷり楽しむ。やっぱり神ゲー制作会社の異名を持つだけあって、AOGは映像から違うな。あれだけの金を取っときながらまだ接続料を取るところも、これだけ金のかかった映像を見せられると納得してしまう。


 タイトルロゴを感動と共に見送って、俺はキャラクター作成に移った。


 とはいってもやることはそんなに多くない。最初に使用する武器と、最初に持っているスキル五種類、あとは防具のデザインを選ぶだけだ。デザインが五種類、色は自在に調節できるところで俺はもう、涙しそうだった。


 名前は何にするか。んじゃかっこいい感じで…… Zelum、ゼルムにするか。中二病が治っていないとかあいつは言いそうだが、それも別に構わない。いってらっしゃい的な文章をすっ飛ばして、俺は街に転移した。


「おお…… さすがAOG」


 これはもう、サーバーどうやってるんだよってくらいデータ量が重いはずだ。いくつかのサーバーを経由しているのか。


 ここまですごいデータ量なのに、ラグも何もない。と思ったが、ああ、なるほどと俺はうなずいた。ここはゲーム、実際に「観測されない世界は存在しない」場所だ。まだまだスタート地点の街から出ていないプレイヤーもいればフィールドダンジョンに出たところのやつもいる。もしくはその先にいるやつもいるかもしれないが、それだけだ。


 それに見たところ、プレイヤー人口は多くないようだ。もしくは自分を非表示設定にできたりもするのかもしれない。ぼっちが真ぼっち化してしまうぞ。


「もしかしてお兄ちゃん? ちょこっとだけイケメンになってるね?」

「お、み…… いや美沙か?」


「そうだけど?」


 美少女ですね。妹はそもそも美少女だが、さらに綺麗になっていた。キャラクターネームは[Mizsa]となっている。ミツァなのかミッサなのかミサなのか、悩むところだ。もしかしたらさっきの質問は名前が読めなかったと勘違いしたのかもしれないな。


「お兄ちゃんの名前は…… ゼルム?」

「おう」


「まだか……」


 最後まで言わないところに優しさを感じるか、それとも嫌味に思うかは受け取り手次第だな。それはいいんだが。


「何をすればいいんだろうな? 洋ゲー風か?」

「ようげーって海外のやつ?」


 圧倒的な自由度、というのは、つまり広い世界に放り出されるということだ。たくさんやれることがあって、どれからやり始めてもいい。


「よし、俺は全部のステータスを平等に上げる」

「そんな宣言してもいいの?」


 敵の攻撃を主にダメージとして引き受けるタンクだとVITを上げて体力や防御力を上げるし、攻撃力至上主義ならSTRを上げて攻撃力を上げたり、AGIを上げて素早さや攻撃速度を上げてもいい。弓矢を扱うならDEXを上げると威力は上がるわクリティカルも出やすくなるわでウハウハだ。魔法職ならINTを上げれば魔法や回復の威力が上がる。LUKは上げるメリットがないと思われがちだが、どうしようもなくアイテムを集めることが難しいネトゲでは重要なステータスだ。


 ただ、すごく重いだろう鎧を装備するためにタンクにはSTRが要るし、一番最後まで生き残ってパーティーを壊滅の危機から救うべきヒーラーがVITを上げていないようでは耐久力が足りずに全滅の可能性が高まる。そもそも体力が低くて、だいたいの場合鎧が装備できない魔法職が敵から素早く逃げるには、やはりAGIが必要だろう。


 これだけ上げれば、ではなくてある程度のバランスが必要になってくる。


 そう考え込んでいる最中に、誰かがものすごい勢いでぶつかってきた。幸い噴水の前に座っていた俺は、水を噴き出すところに顔をぶつけただけで助かった。


「ごめんなさい、これをあずかってくれませんか?」

「お、おう」


「ではすみません、失礼します」


 俺は預かったものをろくに見もせずにインベントリにしまった。小さなアンプルだ。


「……本当にお兄ちゃんは苦労を背負い込むの、上手いね」


 別に背負いたくて背負ってるわけじゃないやい、とすねて見せると男どもが俺たちをずらっと取り囲んだ。


「おい兄ちゃん。あの女から何か預からなかったか」

 ある程度展開が落ち着くまでは毎日投稿ですね。


 書きため分は今のところ十話。あれ、どこかで聞いたような……。

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