08. たまには真面目に
ステップ8。
たまには真面目な話をすることで彼との距離を縮め、上手いこと有利な交渉に持っていきましょう。
【1】
「私は、この世界のあり方に不条理を感じる」
「壮大な話だね」
「どうして彼らは、小型製品にあれを付けたがるの……」
「あれ……?」
「どうして小型製品にLEDライトを内蔵したがるの……! ライトはライトで別売りしていれば十分なのにっ。こんな物おおおおおおっ!!」
「早まらないで沢井さん!」
【2】
「世界中の人間が、絆という紐で繋がればいいのに」
「詩的な表現だね」
「でも絆は目に見えないから……目に見える紐で繋げておこう。明治グミキャンディひもQで……」
「その繋がり全然詩的じゃない」
【3】
「世界中の人間が、絆という紐で繋がればいいのに」
「またそれ?」
「でも絆は目に見えないから……目に見える紐で繋げておこう。白いおうどんで……」
「香川県の人に怒られるよ!」
【4】
「人はみな原罪を抱えているの」
「アダムとイヴ?」
「胎児のときお母さんのお腹を蹴った傷害罪……」
「それは罪にカウントしちゃだめ!」
【5】
「偶像崇拝を禁止する人の気持ちはよくわかる。だって、偶像ってそれぞれ違いがあるでしょ? あれは納得できない方がいてもおかしくないよ」
「ああ、ちゃんと統一すべきってことか」
「そんな甘いこと言ってるわけじゃないの……」
「え?」
「あれは例えるなら、半目で写った写真をリビングに飾られてるようなもの……私だったら堪えられない。偶像は、最高の状態でいる本人をありのままに象らなきゃだめなの! 半目の写真も燃やさなきゃだめ!! というか撮ったタイミングが悪い!!」
「半目の写真にトラウマがあるのはわかったから、とにかく落ち着いて沢井さん!」
【6】
「一度犯した罪はずっと許されないのかな……」
「そんなことないよ沢井さん。きちんと反省したら許されるよ」
「そっか、そうだよね……じゃあ、ダイエット中の今、このシュークリームをお腹いっぱい食べても許されるんだね。反省したら許されるんだね……」
「それは褐色脂肪細胞でも許しがたい大罪だよ」
【7】
「嘘つきは泥棒の始まりって言うでしょ。私、昨晩ベッドの中でその理由を考えてたんだけど」
「うん」
「まず人が嘘をつく理由から探してみたの。きっとそれは自分を守るためだと思いついて、やがてそれは人を守るためのものに繋がるんじゃないかなって考えたんだ。その人のためにつく嘘が、好意を呼んで、いつしか恋になる。……つまり、心を奪うから泥棒。そんな風だったら世界は平和なのにって、思っちゃった」
「うん、間違いなくルパンだね」
【8】
「涙の数だけ人は強くなれる」
「いい言葉だよね」
「だから、私も春を迎えるごとに強くなってるんだと思う。スギのおかげで」
「花粉症……!」
【9】
「何かを始めるのに、遅すぎることなんてない。そうだよね?」
「うん、俺もそう思う」
「よーし、だったら決まり! 私たちも今から始めよう!」
「え、何を?」
「流しそうめん!!」
「今は冬だよ沢井さん!」