07. もしもの話
ステップ7。
質問が鬱陶しいと思っても、本心はお腹の中に押し込めましょう。
【1】
「俺が遠くに引っ越したらどうする?」
「時差を気にするかなあ」
「あ、いや国内で」
「特産品を気にするかなあ」
「ごめん、やっぱこの話はなしで」
【2】
「もし俺がギャル男になったらどうする?」
「そうだなあ。とりあえず、夏川くんがギャル男になった理由や心境を想像して……」
「想像して?」
「えへ、えへへへ……」
「なんか怖い……! やめて……!」
【3】
「俺が泣いているとき、沢井さんは何してくれる?」
「悲しみを分かち合いたいな」
「そっか。それもいいかもしれないけど……でも俺、辛いときには、隣にいる人には元気でいてほしい。笑ってくれればいいなと思うんだ」
「笑う?」
「うん。明るく笑ってほしい。そうしたら、俺もつられて笑うかもしれないし」
「そっか。じゃあ夏川くんが泣いているとき、私は笑ってるよ。腹をよじらせて、バンバン手を叩く」
「そういう意味の笑うじゃないんだ……!」
【4】
「俺が弱音吐いているとき、沢井さんは何してくれる?」
「優しく慰めるよ」
「そっか。沢井さんらしいね。でもそういうときこそ、叱咤してくれても構わないんだよ。べたべた無闇に甘やかす人より、厳しい言葉でビシバシ引っ張ってくれる人の方が信用できるから」
「わかった。じゃあ夏川くんが弱音を吐いているときは、厳しい言葉を吐きながら、ビシバシ鞭で叩いて、縄で引っ張るよ」
「そこまでの厳しさは必要としてないよ……!」
【5】
「俺が落ち込んでいるときには適度に明るくしてくれればいいんだ」
「わかった。じゃあ夏川くんが落ち込んでいるときは、隣で元気の出る曲を口ずさむよ」
「元気の出る曲?」
「テンテンテテン、テンテッテッテンテンッ、 テンテンテテン、テンテッテッテンテンッ」
「マリオがスター取った時に流れるBGM……!?」
「これで夏川くんも無敵に」
「ならないよ!」
【6】
「仮に俺が道を踏み外したとき、沢井さんはどう行動を取る?」
「……通報……かな」
「……そこまで踏み外すことはないよ」
「そっか……」
【7】
「事故か何かで、俺の顔がぐちゃぐちゃになったら、どうする?」
「形成外科に……連れて行く……!」
「そう」
「手術代は私が請け負う……!」
「俺の顔しか興味がないのかと聞くべきか、懐の大きさに感動すべきか、どっちが正しいんだろう」
【8】
「もしも……俺が死んだらどうする?」
「出家する」
「え?」
「出家する」
「…………」
「…………」
【9】
「俺のために死ねる?」
「まずそんな状況にはならないから安心して……」
「安心した……!」