表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

05. 付き合ったら

ステップ5。

お付き合いした場合のメリットを語り、素敵なセールストークをしましょう。



【1】


「どうして夏川くんは女の子と付き会えるチャンスをふいにするの」

「適当に彼女をつくる気はないんだ」

「人が何故、男と女に分かれたか。それは互いに足りないところを補うため。だからこそ男女はくっついていなければならないのに、夏川くんはその機会を無視して一人のまま」

「仕方ないよ」

「仕方なくなんかない。これじゃあ性別なんかある必要はないじゃない。ということは夏川くんは雌雄同体も同然。つまり」

「つまり?」

「夏川くんはミミズと同じ……夏川くんはミミズだよ!!」

「俺はカタツムリ派だ……!」






【2】


「彼女をつくらないということは、彼女を紹介する機会もつくれないということだよ。夏川くん」

「別に今はいいよ」

「だめ。今のうちだけだよ。これが俺のガールフレンド(仮)です、って言えるのは」

「(仮)って何……」


 検索してみよう。






【3】


「私と付き合ったら、夏川くんにもメリットがあるの」

「例えば?」

「掃除、料理、洗濯、戸締まり、更にはネクタイまで結んであげる」

「結婚する気?」





【4】


「夏川くん、私と付き合ったら……」

「付き合ったら?」

「世界の全てを 貴様にやろう」

「魔王……!?」





【5】


「夏川くんは時間を大切にする人だから、私はきちんとそれを優先しようと思うの」

「ほんと?」

「例えばデートも時短でサクサク進める。近場のデートスポットにまっすぐ行って、素早く目的を遂行し、帰宅。午前中に帰れるように心がけるよ!」

「そのデート、楽しくなさそう……」

「それは否定できない」





【6】


「夏川くんが肩を外したとき、他の女の子なら一緒に病院に行くだろうけど、私は行かない」

「冷たいなあ」

「私といたら病院になんて行かなくてもいいの。だって私は、関節の取り外しも行える女」

「それはすごいかも」

「どう? 私と付き合ったら、いつでも関節が外せるの。外し放題だよ」

「そんな特殊な状況に自ら陥る気はないから」






【7】


「お喋りしたいときには話しかければいいだけ! 楽しい会話ができます!」

「更に、偉人の名言吹き替え機能までついています! 落ち込んだとき、悩んだときに是非お使い下さい! 他にはアラーム、朗読、道案内など、便利な機能が盛り沢山!」

「でも、お高いんでしょう?」

「いえいえ、それが何とっ、無料なんです!」

「しかも今なら、特典として可愛い弟が!」

「どうぞこの沢井をお求め下さい!!」



「……売り込み方、間違ってると思う。沢井さん」







【8】


 動物好きな彼のために、ちょっと鳥を獲ってきた。

「私達が付き合えたら、記念として夏川くんにはこれをあげようと思うの」

 可愛い鳥を見た夏川くんは、ぽかんと口を開けた。そんなに驚かなくてもいいのに。


「沢井さん、これは……?」

「四神の一つ、朱雀。……考えておいてね、夏川くん。それじゃ」

「待って……! それどうやって手に入れたの……!?」








【9】



 あるところに身寄りのない兄弟がいたの。


 兄は真面目なしっかり者、弟は病弱な子だった。

 慎ましい生活を送っていたけど、ある日弟の体調が悪化して寝込んでしまった。日に日に具合が悪くなっていく弟を見て、彼の死を予感した兄は、なけなしのお金で医者に相談したけど、とても足りなかった。


 そうしたら医者は、兄の綺麗な目を見て、こう言ったの。あんたの目玉をくれたらただで弟を治してやると。

 実はその医者、腕はいいものの、人の身体を実験に使ったり、死体を弄くることから、気味が悪い医者として有名だった。


 兄は悩んだ末、それに承諾した。


 その日から、兄は光を失った。

 だけど弟が元気になってくれるならよかった。唯一の家族が、彼にとって何より大事だったから。


 ……治療を終えた弟に、兄はこう言った。

 ああよかった、お前が元気になってくれて、私は嬉しいよ。


 包帯を巻いた兄の顔を見ると、弟はひどく驚いた。

 兄は、弟が気に病んでしまってはいけないと思い、本当の事情を隠した。


 兄さん、目が見えなくなってしまったんだね、と寂しそうに呟く弟。

 兄は、気にしないでおくれ、それにお前が長生きしてくれさえすればこんなこと苦でもないさ、と優しい言葉をかけた。


 そんな彼に、弟は言った。

 ──目が見えないからそんなことが言えるのさ。だって僕の体は、あの狂った医者のせいで、もうこんなに……。




「…………」

「続きは、夏川くんが私の彼氏になった後にね」

「……気になるから今話して!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ