09. 甘えてみる
ステップ9。
大胆に、かつ慎重に、そして可愛らしく、彼の懐に入り込みましょう。
【1】
「昨日、夏川くんが学校休んだから寂しかった……。夏川くんのいない学校なんて、苺がないショートケーキみたいなものだよ……」
「ははは、大袈裟だなー」
「苺がないショートケーキなんて、パンダがいない上野動物園みたいなものだよ……」
「ははは、大袈裟だなー」
「パンダがいない上野動物園なんて、タモさんなしのいいともみたいものだよ……」
「俺らにはタモリが必要なんだ……!!」
【2】
「夏川くんはモテるから妬けちゃうな」
「…………」
「数々の女の子をちぎっては投げちぎっては投げ……」
「ちぎって輪投げ……!?」
【3】
「夏川くんの彼女ってスタイルいい子ばっかだって聞いた。やっぱり私じゃ敵わないなあ」
「から傘好きだった沢井さんには誰も勝てないよ」
「私、見る目ある!? 嬉しいっ」
「俺は複雑な気持ち……」
【4】
「ねえ、ちょっと恥ずかしいお願いがあるの」
「えっ、何?」
「出席番号2番、浅井くんの脇をつまんでみて……」
「恥ずかしがるのは浅井くん……!?」
【5】
「ねえ、ちょっと恥ずかしいお願いがあるの」
「えっ、また?」
「柔道部のエース、武田くんの上腕二頭筋をつまんでみて……」
「上腕二頭筋って、つまむようなものだったっけ……!?」
【6】
「私、ホラー映画って苦手なの」
「怖がりなんだー」
「うん。いつも途中で寝ちゃうから、起きた後の展開についていけなくて、怖いの……」
「沢井さんの無神経さが怖いよ」
【7】
「夏川くんにお菓子つくってきたの」
「本当? うわー、嬉しい。何作ってきてくれたの?」
「当ててみて。ヒントは生のやつだよ」
「生……? 生チョコ……とか? 生キャラメル? あ、もしかしてフルーツ使った物?」
「どれも違うよー」
「他に生の物って思いつかないんだけど。正解は?」
「生八つ橋」
「き、京都銘菓……! 職人……!?」
【8】
「どう? お口に合うかな?」
「うん、美味しい」
「よかったあ。私、夏川くんにそれ言われるためだけに作ったんだもん。頑張った甲斐あったな」
「立派な……職人魂だね……!」
「え?」
【9】
「……なんでしゃがんでるの? 沢井さん」
「上目遣いを意識してみた」
「どう頑張ってもクラウチングスタートにしか見えないよ」
【10】
「うわっ。……え、何、沢井さん。なんで袖引っ張ったの?」
「袖を引っ張る仕草に、男子はきゅんとくるって聞いたんだけど」
「驚かせないでよ。袖引き小僧かと思った……」
「私……妖怪?」