00. 告白は計画的に
今日、私は憧れの人夏川くんに告白をする。
学年一、いや学校一モテるクラスメイトの夏川くんは、本当にかっこいい。思わずぽーっとしてしまう。
この思い、外に出さなければ、愛で胃がもたれてしまう。というかもう、もたれている。
「夏川くん好きです……っ。付き合って下さい」
胃薬を飲んだ私は、彼に思いの丈をぶつけた。
けれど彼はあっさりと「ごめんね」なんて、わけのわからないことを口にし、私の気持ちを無下にした。
「わ、私じゃだめなの?」
彼女がいるの? それとも私がタイプじゃない?
「沢井さんの告り方、真面目すぎるよ」
真面目の何が悪いのか、さっぱりわからない。
確かに私は、自他共に認めるほど真面目だ。奥ゆかしいとも言える。品行方正という言葉が似合いすぎる私は、ちゃらちゃらした人を見ると、舌打ちして肩パンしたくなる。それほどに真面目だ。
でも勇気を振り絞って告白したのに、真面目だから、なんて理由で振られるなんて……。ああ、何だか胃が痛くなってきた。胃薬増やそうかな?
……だめだめ、そんなことは考えちゃいけない。
薬は用法用量を守らないと。だって私は、品行方正なんだから。
「私にチャンスをちょうだい」
このまま引き下がるわけにはいかない。いくら相手が万年モテ期のイケメンだからって、こんな振られ方は私の恥だ。
「悪いけど……」
「どうしてっ」
「こう見えて俺、告白されたり逆ナンされることは度々なんだ」
何が、こう見えて、なのか。
彼がモテることなど一目瞭然だ。
「だから、普通の告白や口説き文句じゃなびけないっていうか……」
「そんなにモテていたの……? もう、モテのゲシュタルト崩壊になりそうなモテ具合だね」
私も一度体験してみたい。
「じゃあ夏川くん、私がちゃんと口説いたら振り向いてくれる?」
「沢井さん……」
嫌とは言わせない。
「沢井さんにできるかな」
「できるよ。私は並々ならぬ努力で道を切り開いてきた女だから」
「かっこいい」
「私かっこいい」
こうして、かっこいい私は、夏川くんを振り向かせるため、魅惑的な口説き文句を考えることとなった。
それはもう、聞いただけで、目がハートになり腰が砕けて、しまいには興奮で過呼吸になるくらいの魅惑的な口説き文句を。
なんかもう、夏川くんより私がイケメンかもしれないなあ。